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2005年度の講義
今年度は今だかつてないほどたくさんの講義をやります.
良心的な講義を提供する限界に近づいてる感じです.
かといって,自由に講義をやらせてくれる非常勤先や,充実感があることが多い
集中講義は断りたくないところが難しいところ.
さてどうなりますことやら.
- 前期
きのう前期の試験の採点が終わった.合計261人の試験を採点した.
さすがに疲れた.前の学期と違って,一日三コマの日がないので,体力的には
余裕があったが, いろいろな学外のお世話を引き受けたこともあって,
時間にはあまり余裕がなかった. 準備が必要な科目
は大学院の科目だけだったが, それが自転車操業なのは当然としても, 他のクラ
スも講義前にノートを見直す暇がなくて, 余裕のない講義をしてしまったことも
あった. 私立なみの講義負担と半減する研究費で motivation の維持がなかなか
難しくなってきた.こうやって国立大は滅亡していくのかな?
- 線形代数学第一
線形代数は今年から新しい教科書を採用.はじめての年なので, なるべ
く教科書に沿った講義をやるようにした.行列式の定義で置換の計算を
させるのはあまり好きではないが他は標準的なもの.章末問題は(特
に夜間主に対しては)難しいことがある.
このクラスはよくできるクラスで教えやすかった.
- 線形代数学第一 (夜間主コース)
夜間主は演習中心.自分で事前にやってみないで,学生に教科書の演習問題を
やらせたら分数地獄になって, 非常にてこずったことがあった.計算の工夫の知
らない初学者にはそれに応じた問題を出すことが必要であることを再確認.
最初から口うるさく計算法を教えたせいか,計算法だけは覚えたようだ.
計算力は数年前からみると愕然とするほど落ちていると感じる。根気のいる計算
にくらいつく根気も薄れていっているようなきがする.
- 関数論 (夜間主コース)
一部のできる人をのぞいて関数論は夜間主の学生には難しすぎる科目になってき
たようだ.毎回,演習をして問題の解き方を教えても, どうしてもできない学生
が多数いる.複素数にそもそも全くなじんでいないのが問題.四則演算,有理化,
複素平面などの基礎の習得に時間をかけたほうが良いと思うが,そうするととて
もじゃないが留数定理まではいかない. 一番,教えづらいのはローラン展開.
これがわかる人は驚くほど少ない.
それにしても基礎の脆弱さは目を覆うばかり.
- 卒業研究
古賀健人君とシルヴァーマンの「はじめての数論」を読む。問題も解き
ながら読む。講義などには使いにくいかもしれないが,なかなかよい本である.特
に
実例計算から自然に理論的な説明に入っていくので,理論が空回りするのが少ない
ところが初学者の助けになるであろう.問題もよくねられていて, 解いていて
おもしろい。
- 現代代数学基礎論第一 (大学院修士)
斎藤秀司著「整数論」のAコースとよばれる内容を講義した.
内容は初等整数論から Hasse-Minkowski の定理まで.
このままでは予備知識が線形代数しかない学生にとってかなり苦しいので,
いろいろな例や計算問題を出しながら講義した. 初学者にとっての難所であるよ
うに思われる p 進数のところも p 進展開の計算などをおりこむことで切り抜けた.
大学院生はそれでもちゃんと講義を聞いて質問をしてくれるのでこちらもやりが
いがある.
- 情報科学 I (富山大学理学部集中講義 8/2-8/5)
木村さん の依頼により猛暑
の富山に出かける. 初日が37度あったとかで全国一の高温.
冷房のかかった教室とオフィス以外はどこに行っても暑かった.
「数論アルゴリズム入門」ということで
2002, 2003年の電通大大学院の講義をもとに,
いくつかの新しい話題と取り入れた内容.章だては
- 第一章 基本的なアルゴリズム
- 第二章 素数判定法
- 第三章 素因数分解
- 第四章 離散対数
計算機による実演も交えて,
初等的な群論と整数論を勉強しながら, それだけで理解できる内容を目指した.
計算問題の演習をやるのもいつもの通り.
計算を自分でやってみて
理論とぴったり合う喜びをあじわって欲しいというのが狙い.
理論的な部分は難しいと感じる人が多かったようだが,
計算を通してもう一度証明をじっくり追ったりということが出てくればよいと思っ
ている. 熱心に課題に取り組んでくれた学生が何人もいてやりがいのある集中講
義になった.疲れもそれほど感じなかった. 講義のあとで旧知といっしょに飲んだ美味しいビールのせいか?
- 後期
- 線形代数学第二
朝一限のクラス.寒くなって出席率が低下するとともにできない人が増えてくる
のは本当に悲しい.内容が難しくなるせいももちろんあるにしても...
新しい教科書はセクション5.3の周辺でもう少し工夫が必要.
来年は気分一新で微積をやることにする.
- 数学演習第二(2コマ)
二つのクラスとも雰囲気がよくてやりやすかった.でも,重変数の積分をはじめ
るときには一変数の積分を忘れてしまっている人がかなりいるの困ったものだ.
でも,このクラスの人たちはそれなりにできるようになったという感じがした。
- 現代数学入門 B
初等整数論.「数論への出発」の一章,ニ章の内容の中で一年生でもわかる部分
を話した.教科書は変ったが,内容は以前からのものとあまり変ったわけではな
い.来年は変える予定.
- 卒業研究
シルヴァーマンの本を39章までやったあと高木の「初等整数論講義」の第三章に
移った.卒論はペル方程式の解法の応用で三角平方数の定理の一般化をやった.
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現代数学特論第二 (大学院博士)
受講希望者がいなかったため開講されませんでした.
- 代数学III・代数学特論(学習院大学)
数論アルゴリズム入門.富山での講義にもうすこし理論的な考察を付け加えたも
の.少し擬素数に深入りしすぎて時間を取られてしまったのが反省点.
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