公募研究班

平成28年4月より,新たに19班の公募研究を加え,計画研究班とともに本新学術領 域を推進して参ります。


 
芦苅班 
環境変化によるイネ芒形質可塑性の
分子メカニズムの解明
有村班 
植物間コミュニケーションにおける
記憶制御システムの解析
打田班 
篩部から発信される茎成長シグナルの解析
金岡班
異質倍数体植物の表現型可塑性に着目した
水環境適応を担う分子機構の解明
川崎班
MAPキナーゼカスケードを介した
植物免疫記憶の制御機構
木羽班
維管束を介したサイトカイニン情報の
長距離伝播の仕組みと役割
木村班
環境刺激による葉の形態形成の制御機構の解明
西條班
ポリコーム群タンパク質が植物免疫の
誘導・記憶を正に制御する分子機構の解明
寿崎班 
窒素栄養環境に応じた全身的・根局所的な
情報処理による共生器官形成機構
関班
アンチセンスncRNAを介した
植物の環境ストレス認識・記憶システムの解析
高橋班
水分ストレスを根から地上部へ伝える
ペプチドによる長距離シグナル伝達機構の解明
竹澤班
コケ植物を用いたABA、低温および浸透圧応答の
統合的制御に関する基礎研究
永野班
変動する野外環境下における
植物環境記憶の定量方法の開発
野田口班
植物の長距離移行性RNA分子と
全身性環境応答に関する研究
Buzas Group
The DNA elements of vernalization insensitive 3 gene for quantitative and priming epigenetic memory of cold
藤井班
アブラナ科植物の受粉における
自己認識システムの解明
松下班
光環境情報に基づく
タンパク質細胞内局在パターンの制御と短期記憶
三浦班
ヒストンSUMO化による転写調節機構の解明
山口班
ヒストン脱メチル酵素JUMONJIによる
温度記憶の制御機構の解析

芦苅班 環境変化によるイネ芒形質可塑性の分子メカニズムの解明

  • 研究代表者 芦苅 基行 名古屋大学・生物機能開発利用研究センター・教授
    連携研究者 森 仁志 名古屋大学・生命農学研究科・教授
    連携研究者 東山 哲也 名古屋大学・トランスフォーマティブ生命分子研究所・教授
    芦苅 基行
    芦苅 基行
    イネの種子の先端に形成される突起状の構造は芒(のぎ)と呼ばれ、動物の体への付着による種子の伝播、鳥獣からの食害防除の役目を担っている。 野生イネは有芒なのに対して栽培イネは無芒であり、芒は栽培化の過程で除去された形質と考えられている。一般に栽培イネは芒を保持しないが、 環境によって芒を発生させるなど可塑性をもっている。そこで、本課題では、芒発生を誘導する環境条件を明らかにするとともに、芒形成遺伝子を同定し、 芒発生の可塑性の分子機能を明らかにする。また栽培化における芒消失を遺伝子レベルで解明する。

有村班 植物間コミュニケーションにおける記憶制御システムの解析

  • 研究代表者 有村 源一郎 東京理科大学基礎工学部生物工学科・准教授
    連携研究者 塩尻 かおり 龍谷大学農学部・講師
    有村 源一郎
    有村 源一郎
    植物から大気中に放出される香り成分は、近くの健全な植物の防衛能力を高めることができる。これを植物間コミュニケーションと言う。本研究では、多岐にわたる生物間相互作用活性をもつミントの香りをモデルケースとし、植物間コミュニケーションにおける防衛応答の記憶制御メカニズムの全貌を明らかにする。ミントの香りに曝された植物の防衛応答の持続性および次世代植物への情報の伝搬(記憶)システムの解明を試み、ミントの香りを事例として香気成分を利用した植物の安定栽培、ブランド化に向けた学術基盤を構築する。

打田班 篩部から発信される茎成長シグナルの解析

  • 研究代表者 打田 直行 名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所・特任准教授
    打田 直行
    打田 直行
    多細胞生物である高等植物が全身的に協調した成長を達成するための長距離シグナルの実体や作用メカニズムには不明な点が多い。 茎全体の協調的な伸長の制御では、茎の内皮細胞から分泌される機能冗長的な2つのペプチドホルモンEPFL4とEPFL6が、それらの受容体であるERECTAによって篩部伴細胞で受容されると、篩部伴細胞から茎全体の協調した伸長を導くさらなるシグナルが発生する。本研究では、この篩部伴細胞で生まれるシグナルの実体、ならびに、このシグナル作用が及ぶ範囲や作用先が受ける影響の解明を目指す。

金岡班 異質倍数体植物の表現型可塑性に着目した水環境適応を担う分子機構の解明

  • 研究代表者 金岡 雅浩 名古屋大学大学院理学研究科・講師
    連携研究者 清水 健太郎 チューリッヒ大学進化生物 環境学研究所・准教授
    連携研究者 荒木 希和子 立命館大学生物工学科・助教
    金岡 雅浩
    金岡 雅浩
    自力で移動できない植物は、環境変動に対しその情報を迅速に全身に伝え応答しなければならない。環境応答と発生とで共通する鍵遺伝子も報告されているが、両者の具体的な結びつきには未解明の点が多い。 本研究課題では、アブラナ科タネツケバナ属の異質倍数体植物Cardamine flexuosaが、水環境の変動に応答して気孔の表現型や遺伝子発現をダイナミックに変化させることに着目し、植物が環境変動をどのように感知し記憶して個体発生へと還元するかを明らかにする。

川崎班 MAPキナーゼカスケードを介した植物免疫記憶の制御機構

  • 研究代表者 川崎 努 近畿大学大学院農学研究科・教授
    連携研究者 山口 公志 近畿大学大学院農学研究科・助教
    	川崎 努
    川崎 努
    植物は、受容体を介して病原菌の構成成分(PAMP)を認識すると、感染部位でMAPKの活性化を伴う一過的な防御反応を誘導する。 この反応は、病原菌の二次感染に対して迅速な防御反応を活性化する「プライミング」状態を誘導する引き金となっている。このプライミング効果は、 病原菌の二次感染に備えた「植物免疫記憶」であり、エピジェネティクな変化との関連が示唆されている。 そこで、本研究では、MAPKカスケードを介したエピジェネティク制御を解析を行うことで、植物免疫記憶の分子基盤の解明を目指す。

木羽班 維管束を介したサイトカイニン情報の長距離伝播の仕組みと役割

  • 研究代表者 木羽 隆敏 理化学研究所 環境資源科学研究センター・研究員
    連携研究者 大薄 麻未 名古屋大学 生命農学研究科・研究員
    連携研究者 榊原 均 名古屋大学 生命農学研究科/理化学研究所 環境資源科学研究センター・グループディレクター
    木羽 隆敏
    木羽 隆敏
    サイトカイニンは植物の成長・発達の様々な段階で不可欠な働きを担う植物ホルモンであり、 局所シグナルとして作用するだけでなく、維管束を介して長距離輸送されて器官間(長距離)シグナルとしても重要な役割をもつ。 本研究では(1)サイトカイニンの維管束への積み込みの分子メカニズムと(2)サイトカイニン長距離輸送の制御と その生理的役割を明らかにすることにより、維管束を介した植物ホルモン情報の長距離伝搬による個体統御機構の解明を目指す。 特に根から地上部への、道管を介した長距離輸送に注目する。

木村班 環境刺激による葉の形態形成の制御機構の解明

  • 研究代表者 木村 成介 京都産業大学 総合生命科学部 生命資源環境学科・准教授
    連携研究者 諸橋 賢吾 東京理科大学理工学部応用生物科学科・准教授
    連携研究者 坂本 智昭 京都産業大学 総合生命科学部 生命資源環境学科・研究助教
    連携研究者 市橋泰範 理化学研究所 環境資源科学研究センター・研究員
    連携研究者 中山北斗 カリフォルニア大学デービス校・研究員
    木村 成介
    木村 成介
    北米原産の半水生植物Rorippa aquaticaは、葉の形態に大きな表現型可塑性を示し、水没すると葉身が針状になった羽状複葉を発生する一方、陸上では生育環境に依存して単葉から複葉まで様々な形の葉を発生します。このような葉形の変化は、水の抵抗を軽減したり、効率良く光合成を行なうために役立っていると考えられ、植物と環境の相互作用を理解するため興味深い現象です。本研究では、葉の形態の制御において、エピジェネティックな遺伝子発現制御機構やフィトクロムによる光受容機構が果たす役割を解明します。

西條班 ポリコーム群タンパク質が植物免疫の誘導・記憶を正に制御する
分子機構の解明

  • 研究代表者 西條 雄介 奈良先端科学技術大学院大学・准教授
    連携研究者 田島 由理 奈良先端科学技術大学院大学・特任助教
    西條 雄介
    西條 雄介
    植物は病原体の認識部位で免疫応答を誘導するとともに、長距離移行シグナルによって全身で免疫を活性化させる。 その際、免疫応答の記憶化により、次の免疫応答をスムーズに誘導できる状態を生み出す(プライミング)。 転写促進型のヒストン修飾に加えて、転写抑制型のヒストン修飾(H3K27me3)がプライミングに必要であることを見出した。 そこで、H3K27me3修飾を仲介するポリコーム群タンパク質複合体の作用機序並びに異なるヒストン修飾が協調的に働く仕組みの解明を進めて、植物免疫関連遺伝子の発現制御機構や免疫記憶の成立機構に迫る。

寿崎班 窒素栄養環境に応じた全身的・根局所的な情報処理による共生器官形成機構

  • 研究代表者 寿崎 拓哉 筑波大学生命環境系・准教授
    連携研究者 川口 正代司 基礎生物学研究所・教授
    寿崎 拓哉
    寿崎 拓哉
    マメ科植物は、土壌中の窒素栄養環境に応じて根粒菌との共生器官である根粒の形成を調節する。窒素栄養の欠乏時では根粒形成を促進させ、必要十分量存在する時は根粒形成を抑制する。 窒素栄養による根粒形成の抑制は、全身的および根局所的な情報処理機構を介して根粒形成の各過程に多面的に作用することが示唆されている。 本研究では、マメ科のモデル植物ミヤコグサを用いて、これらの制御系で機能する因子の解析を通して、窒素栄養に応答した可塑的な共生器官形成機構を包括的に解明することを目指す。

関班 アンチセンスncRNAを介した植物の環境ストレス認識・記憶システムの解析

  • 研究代表者 関 原明 理化学研究所 環境資源科学研究センター 植物ゲノム発現研究チーム・チームリーダー
    連携研究者 松井 章浩 理化学研究所 環境資源科学研究センター 植物ゲノム発現研究チーム・研究員
    関 原明
    関 原明
    本申請代表者らは、アンチセンス鎖に存在する非翻訳型RNA(アンチセンスncRNA)がセンスRNAの分解産物を鋳型として 新規な経路でRNA依存性RNAポリメラーゼ (RDR)1/2/6により生成する事を見出すとともに、アンチセンスncRNAが環境ストレス適応・記憶に関与する事を示唆するデータも最近得ている。本課題では、環境ストレス誘導性のアンチセンスncRNAに着目し、生成に関わる新規な因子を同定し、アンチセンスncRNAを介した植物の環境ストレス適応・記憶システムの解明を目指す。

高橋班 水分ストレスを根から地上部へ伝えるペプチドによる長距離シグナル
伝達機構の解明

  • 研究代表者 高橋 史憲 理化学研究所 環境資源科学研究センター バイオマス研究基盤チーム・研究員
    連携研究者 篠崎 一雄 理化学研究所 環境資源科学研究センター バイオマス研究基盤チーム・チームリーダー
    高橋 史憲
    高橋 史憲
    水分ストレス応答は、乾燥などの環境ストレスに対する初期応答として重要な、ストレス感知メカニズムである。水分ストレスシグナルは、根から地上部に素早く伝達され、葉において植物ホルモン「アブシジン酸(ABA)」の合成を促すと考えられるが、そのメカニズムは全く明らかになっていない。 本研究では、水分ストレス応答に重要な根と地上部をつなぐ情報伝達機構、とくにABA合成を制御する移動性のペプチドによる、根から葉への水分ストレス情報の伝達、および葉でのペプチドシグナルの受容メカニズムを解明する。

竹澤班 コケ植物を用いたABA、低温および浸透圧応答の統合的制御に関する
基礎研究

  • 研究代表者 竹澤 大輔 埼玉大学大学院理工学研究科・准教授
    竹澤 大輔
    竹澤 大輔
    植物における乾燥や高浸透圧、低温などの環境変化への応答過程では、ストレスホルモンアブシジン酸(ABA)が細胞の耐性獲得に寄与していると考えられる。 しかし、異なる環境シグナルの感知システムや、それらとABAシグナルを統合して制御する因子、およびその作用機作についての理解は進んでいない。 本研究では、セン類ヒメツリガネゴケを用い、ABAや低温、乾燥、高浸透圧応答に欠損を持つ変異株の解析や、既知シグナル因子との相互作用解析から、ストレスシグナルの統合的制御に関わる因子の同定を行う。

永野班 変動する野外環境下における植物環境記憶の定量方法の開発

  • 研究代表者 永野 惇 龍谷大学農学部・講師
    永野 惇
    永野 惇
    複雑に変動する野外環境の中で植物はどれだけの長さの過去の情報を用いて環境変動に応答しているのだろうか。 これは言いかえれば、植物はどれだけの長さの記憶を保持し利用しているのか、ということになる。野外研究、実験室研究に関わらず、実際に記憶の長さを研究対象として取り扱っていくためには、それを定量するための手法が必要となる。そこで本研究では、気温など環境時系列データと遺伝子発現など植物の応答時系列データをもとに、記憶の長さ・強度を定量する解析手法を開発する。

野田口班 植物の長距離移行性RNA分子と全身性環境応答に関する研究

  • 研究代表者 野田口 理孝 名古屋大学大学院理学研究科・研究員
    野田口 理孝
    野田口 理孝
    本研究では、篩管中を長距離移行するRNA分子に着目し、それらの生理機能を明らかにすることを目的に、第一に環境要因得意的な長距離移行性RNA分子の同定を行う。同定は、マイクログラフティング法により接木した植物体を対象にRNA-Seq解析法を適用し、ゲノムワイドに行う。主要栄養素である窒素、リン、カリウムに関して調べる。 第二に、RNA可視化技術を確立し、長距離移行性RNA分子が個体レベルでどのような経路で移行するか動態解析を行う。

Buzas Group The DNA elements of vernalization insensitive 3 gene for quantitative and priming epigenetic memory of cold

  • 研究代表者 Diana Buzas 筑波大学生命環境系・准教授
    連携研究者 工藤 洋 京都大学 生態学研究センター・教授
    Diana Buzas
    Diana Buzas
    Some gene expression programs may persist even after their originating signals fade away; such stability is often attributed to epigenetic mechanisms. A number of key integrator genes responsive to cold follow such pattern to promote flowering in favorable spring conditions after the prolonged cold in winter (vernalization). How signal perception and epigenetic memory converge at these genes is not understood. In case of the Vernalization INsensitive 3 (VIN3) gene, a long period of cold is mirrored by increasing gene expression and high VIN3 expression is reached faster during a second exposure to cold. This study will dissect cis acting elements mediating distinct types of epigenetic memory and their responsiveness to temperature.

藤井班 アブラナ科植物の受粉における自己認識システムの解明

  • 研究代表者 藤井 壮太 東京大学・農学生命科学研究科・助教
    連携研究者 高山 誠司 奈良先端科学技術大学院大学・教授
    藤井 壮太
    藤井 壮太
    植物の半数以上は自己と非自己の花粉を識別する「自家不和合性」と呼ばれる仕組みを持っています。 この仕組みによって自家受精を避け、他家受精を促進することで集団内の遺伝的多様性が保たれています。 本研究ではアブラナ科植物の自家不和合性システムをモデルに、自己花粉の情報を細胞内で統合する仕組みの解析を進めます。 特に細胞内のカルシウムイオンの動態に注目することで、雌蕊の細胞が自己花粉の位置情報を感知するメカニズムと、非自己の花粉を選択的に受け入れる仕組みの解明を目指します。

松下班 光環境情報に基づくタンパク質細胞内局在パターンの制御と短期記憶

  • 研究代表者 松下 智直 九州大学大学院農学研究院・准教授
    松下 智直
    松下 智直
    植物の主要な光受容体フィトクロムは、PIFと呼ばれる転写因子群を介した転写制御により光シグナルを伝達すると考えられている。 しかしながら我々は最近、フィトクロムが転写制御に加えて、遺伝子発現のその他の過程も制御し、mRNAの量だけではなく質も制御することで、植物の光応答を引き起こすことを発見した。 そこで本研究では、フィトクロムによる新奇遺伝子発現制御の分子機構解明を目的とする。 また、この機構により植物が光環境情報に基づいてタンパク質の細胞内局在パターンを短期記憶する可能性を検証する。

三浦班 ヒストンSUMO化による転写調節機構の解明

  • 研究代表者 三浦 謙治 筑波大学生命環境系・准教授
    連携研究者 多田 安臣 名古屋大学・生命農学研究科・教授
    三浦 謙治
    三浦 謙治
    翻訳後修飾因子であるSUMO化は環境ストレス応答に関わること、サリチル酸蓄積に関わっていることが明らかになってきた。 ただ、このSUMO化がどのように環境ストレス応答、サリチル酸蓄積を調節しているかの包括的な理解は進んでいない。本研究では以下の2点を中心に研究を行う。
    1、SUMO E3リガーゼSIZ1によるメチル化ヒストンH3K4の調節機構を明らかにする。
    2、SUMO化ヒストンがどのような遺伝子発現調節を行うかを包括的に明らかにする。特に、サリチル酸蓄積と低温などの環境ストレス応答にヒストンSUMO化がどのように関わるかを明らかにする。

山口班 ヒストン脱メチル酵素JUMONJIによる温度記憶の制御機構の解析

  • 研究代表者 山口 暢俊 奈良先端科学技術大学院大学・助教
    山口 暢俊
    山口 暢俊
    植物は脳のような情報を集積するシステムを持たず、環境から得た情報をすぐに感知し、 応答することが重要であると予想されてきた。しかし、エピジェネティクス研究の進展より、 遺伝子発現の変化をヒストンの修飾の違いとして記憶し、長期的な応答を制御できることがわかってきた。 申請者らはヒストン脱メチル化酵素であるJUMONJIが温度の経験を記憶するために必要であることを発見した。 そこで、植物が高温に対する適応能力を発揮する記憶の分子基盤を明らかにし、“植物の記憶力を向上する”方法を確立する。