東京理科大学 基礎工学部 生物工学科
島田研究室(植物分子生物学研究室)

研究内容

当研究室では植物を扱った研究を行っており、この仕事の成果で世界中の人々が飢えることなく暮らせるようになることを夢としています。
 
誰でもすぐに溶け込めるfriendlyでat homeな雰囲気。
のほほんと、でも、とても面白い仕事ができる(はず)
自由闊達でのびのびと! かつ研究に情熱を・・で大きな成果へ。
質の高い研究ができる。あなたの修士論文もNatureやScienceに掲載される(かも)
 
しっかりと、かつ、じっくりと実験をしたい人を歓迎します。
植物が育てられる人、農作業の好きな人 、昼間に活動できる人が望ましいです。

植物機能の高度利用に関わる以下の研究をおこなっています

シンク機能とバイオマス生産性に関わる鍵因子の研究

  • 光合成産物の有効利用に関わる鍵因子の解明
  • シンク器官における貯蔵物質生産に関わる遺伝子の機能解明
  • 高バイオマス生産性をもたらす鍵となる遺伝子の解明
  • 種子形成期の細胞内情報伝達と遺伝子発現制御機構の解明

植物機能の解明と高度利用に関する研究

  • 非コードRNAによる翻訳促進機構の解析
  • タンパク質のリン酸化による活性制御機構の解明
  • 高温ストレス障害応答に関わる遺伝子の解析

分子育種・分子農業に関する研究

  • 植物にさまざまな有用物質を作らせるためのシステム構築
  • 翻訳エンハンサーを利用した物質生産系の構築
  • 抗菌ペプチドを生産する植物の作製
  • 環境ストレスに強い植物の育成

植物機能を最大限に利用するために

植物が生長するためには、根より吸収したさまざまな養分と葉において炭酸固定された炭水化物が必要である。植物には、これらの物質を体内の各組織に輸送し、分配するための組織間長距離輸送システムである維管束が発達している。光合成により固定された炭水化物などは、篩管を通ってさまざまな非光合成組織へ転流される。植物のバイオマス生産には、効率よく炭酸固定させること、生産された物質を効率よく転流させること、転流された物質をシンク器官において効率よく利用し、植物体の生長をもたらすこと、さらに、物質生産やエネルギー生産に効率よく供することなどが大きく関わっている。したがって、生産性向上のための分子育種には、これらを詳細に解析し、これらに関する知見を得ることが必要である。
 
そのためには、転流時の篩管への物質の積み込みや移送、シンク器官での積みおろし、およびこれらを統御するメカニズムを解明することが重要である。これらを強化することで植物機能を高度化が可能であり、このような植物は生産性の高い経済的に優れた作物となる可能性を秘めている。また、このような機能強化された植物は、後述する有用物質の生産システムの強力な宿主となると考えられる。
 
そこで、ソース器官からシンク器官への物質の流れ、すなわち「積み込み - 転流 - 積みおろし」の一連の過程がどのようなメカニズムで制御されているのかを明らかにしたいと考えている。また、シンク器官での物質代謝に関わる遺伝子の機能やシステム全体を統御する制御機構についての詳細な解析を行なっている。

持続的安定的な未来社会をめざして

今後、地球人口は増え続け、近い将来に深刻な食糧危機が訪れるものと予想されている。食糧危機を避けるためには持続的安定的な食糧生産を達成せねばならない。しかしながら、現在の食糧生産システムでは、作物本来が有する能力の半数近くが病害虫や乾燥・塩・低温などの環境ストレスによって失われている。もしも食糧生産の際に失われている部分の何割かを回収することができれば、かなりの食糧増産につながるものと思われる。そのためには、劣悪な条件でも高い生産性を得ることや、様々なストレスに対する抵抗性を付与することで植物が持っている能力を最大限に引き出す必要がある。
 
一方、大気中の二酸化炭素濃度の上昇が地球規模の温暖化現象を引き起こしつつある。これは無秩序な化石燃料の消費が原因の一つである。また、無節操な森林伐採なども大きな原因となっている。植物を増やすこと自体が大気中の二酸化炭素を減らすことに貢献するわけだが、この植物に付加価値を与えれば、より効率的な緑化を促す効果がある。そのためには、分子農業というシステム構築が効果的である。
 
分子農業は植物に様々な物質を生産するための遺伝子を導入し、組換え体植物等を用いて目的の物質を生産する手法である。外観的には従来の農業システムを利用するため、特別な施設を必要とせず、開発途上国などでも導入が容易である。また生産物を抽出した後の残渣は飼料や燃料などに用いることが可能であり、環境に対する負荷が少ない。これにより大気中の二酸化炭素と水を主原料とし、太陽光エネルギーを利用した物質生産システムを構築することが可能である。このシステムにより生分解性プラスチックや医薬品原料などの生産が試みられている。
 
ところで、最近、NBTと呼ばれる新しい植物育種技術が開発されている。これは従来の育種技術に、特異的変異導入技術やエピジェネティクス技術などを組み合わせ、目的とする形質をもった植物を迅速に育成する。この技術の1つに人工制限酵素を利用したゲノム編集があり、これにより特定の遺伝子を標的とした突然変異の誘導が可能になった。これまでの植物育種は偶然に生じた変異体を選抜することで行われてきたが、この技術を利用することで効率的な植物育種ができる。今後の地球規模での環境問題の解決や人口増加に対応する食糧増産、脱化石燃料の鍵となるバイオマス資源の生産性増強に大きく役立つものと期待される。

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