2002年
12月25日:
先週末(21日から22日まで)は、福岡市内に宿(KKR博多)を取り、師走の都会の空気を吸ってきた。おかげで、新しい靴を買うことも出来た。佐賀の町はだんだんと先細りなので、時々こうやって空気の入れ替えをしないとやりきれない。
冬休み前のセミナーは今日で終了。セミナー後、5時から卒研生の有志と大学の近くの寿司屋(丸茂寿司:以前に半田先生に薦めていただいたところ)で会食。車で来ている学生がいることもあり、酒類はなし。その分、食事が良くなった。今日は、クリスマスのようだが、参加できる学生がいたことは大変頼もしい(?)。
5次元以上の球面に埋め込まれた曲面の同相写像に関する事柄の論文の手書きの草稿(絵が大半)が出来たが、実際に書くのは休み明けにするしかない(向き付け不可能の話はお休み中)。休みの間に、妙なことを書いていないか良く見てみようと思う。
12月28日に妻の実家(神戸)に行き、1月3日中に佐賀に戻ってくる予定。
今年の日記はこれで終了。良いお年を。
12月18日:
ここ2週間、出張が続いたため、このページは更新しなかった。出張の日程は次のとおりであった。
12月2日〜12月6日 京大数理件へ。神谷先生の企画による研究集会「双曲空間に関連する研究とその展望」に出席・発表。私が、何か展望を示せたかは、不明。
12月9日〜12月12日 東大数理へ。R. Hain 氏が来日するので、研究打ち合わせのため。火曜日に、4次元球面内の曲面の写像類群の話を聞いていただいた。
冬休み前の講義は、今日で終わり。
今週の初めからは、Francis の「A Topological
Picturebook」の中のある絵にはまっている。なかなか良い感じで、大判のコピーまで取ってしまった。ただし、説明文は読んでもさっぱりわからない。
11月27日:
先週の金曜日に加藤先生の還暦記念研究集会と式典があった。ここで、矢野先生や以前佐賀大にいらっしゃった亀谷さんなど、普段お目にかからない人々と会うことが出来楽しかった。研究集会のとある超幾何関数の大家の先生の講演でのこと。この先生は、近年になって日本人の漢籍に関する素養が薄れてしまったためか、数学における新しい概念の日本語訳を作ることを疎かにしていることは、嘆かわしいとおっしゃり、トポロジーに関する言葉の翻訳をいくらかされた。例えば、orbifold
=帯折 topology=徒歩路地 homology =表路地
cohomology =裏路地。中でも、 topology の翻訳は、常に新しい道具を手作りする(あるいは、しなければならない)というこの幾何学の本質をするどく捉えられていると感じた。(ただし、私自身がこの翻訳を使うかどうかは別物だが。後日記:この翻訳はある方面からは、好ましく思われていないようである。)
土曜日には、佐賀大学のオープンキャンパスというものがあり、私は数理科学科の実行委員だった。妻のアイディアを基に、数学を始めた動機と始めた頃の思い出のエッセイを学科の先生方に書いていただき、また研究室訪問をしてもらうことにした。大盛況というわけではないが、ぼつぼつ人が来て、来た人には満足していただけたのではと思う。大きな花火を打ち上げるよりは、地道に外部の人と膝を突いて話をする機会を持つほうが有意義だと感じた。
昨日(26日)、田村先生の「微分位相幾何学」の第一分冊にある、埋め込みのイソトピーに関する定理を見て驚いた。どう驚いたかは秘密だが、これを知らないために、世の中に恥をさらしていたことに気づいた。
11月20日:
先週の金曜日の九大のセミナーで、4次元球面に自明に埋め込まれた有向閉曲面の写像類群の話をした。今回の話は、加藤十吉(みつよし)先生の還暦祝いの話なので、数学において、原点(あるいはふるさと)に戻ることの効用というテーマで話をした。
土曜日は、今度のオープンキャンパスで研究室訪問をしてもらうということもあり、妻とともに久しぶりに研究室の掃除をした。だいぶごみが出たが、これでもまだまだいらないものが残っている。
今週の火曜日から、妻は薬剤師のパートを再開した。前の薬局と別のところなので、いろいろと勝手が違うとは思うけど、元気に通いましょう。薬局名については、妻に聞いてください。
11月13日:
12月のはじめの週に、数理研での発表があり、ハンドル体群のホモロジー的なアナロジーの話を初めてするので、そろそろその準備をしなければならない。はじめ、絵を書くので
OHP でと思ったけれども、それだと50分もかからなくなりそうだし、また、数理研の黒板は大きくて使いやすいので、久しぶりに黒板を使うことにした。おそらく、このネタで話をするのは、これが最初で最後であろう。この金曜日の九大での発表は、途中に出てくる図が中々複雑なので、ここでは初めて
OHP を使うつもりである。
例の問題については、種数4の場合について考えている。Birman-Chillingworth
の論文に現れる Y-homeo. は確かに拡張できるのに先週末に気づいたが、
その共役として現れる Y-homeo. が拡張できるかが目下の問題である。
11月6日:
この週末は連休で、私の両親が佐賀にきた。バルーンフェスタと、唐津くんちを見にきたのだが、今年のバルーンフェスタは天気に恵まれず、あまりバルーンを見ることは出来なかったし、唐津くんちは宵山の日(11月2日)の昼間に行ったようで見れない山もあった様子だ。それでも満足した様子で、よかった。
今回のバルーンフェスタは、とんでもない事故があり、これでますます佐賀は有名になりそうだ。
数学の方は、先週の日記に書いた本の、Scharlemann
による Heegaard 分解のサーベイと格闘しているところで、進展なし。木曜日(10月31日)は一体何をしていたのだと考えてみると、論文の校正をしていたのだった。なかなか、一日数学に集中した日というのはないものだ。結局、数学をするにはうまく空き時間を利用するしかないようだ。
10月30日:
1ヶ月近くかかって、 Handbook of Geometric
Topology (North-Holland) と言う本が届く。タイトルは
Handbook であるが、あまり handy とはいえない代物である。聞いたところによると、整数論や代数幾何関係の本で、Basic
とか Fundamental と銘打っている本がとんでもなく難解であることが多々あるそうで、そう考えると、もっともなネーミングかもしれない。以前、出版前に、Ivanov
先生の書かれた写像類群に関する章を読んで論文が一つ書けたので、他の章を読んでも何かネタが転がっているのではと期待している。が、それは多分期待しすぎなのだろう。(断続的)早朝勉強で、いくつかの章を読むつもりなので家に持って帰ろうと試みているが、かばんの底が抜けるかも。
本といえば、今日届いた学会誌「数学」を見ると、大鹿先生による
Kapovich の本「Hyperbolic manifold and Discrete
Groups」の書評が載っていた。となると、先生はこの本を読まれたのだろう。恐るべきことです。
このごろは、4次元球面内に自明に埋め込まれた向き付け不可能閉曲面の写像類群を考えていて、種数が2(クラインの壷)の場合、種数が3で
normal Euler number が +−2の時に、向き付け可能のときと同様の結果を得たのだが、まだまだ一般種数の場合、normal
Euler number の条件を除いた場合はわからない。
10月23日: こんなに長くあいていると、日記とは名ばかりであるが、とりあえず久しぶりに書くことにする。
この3ヶ月間であったこと:
1.沖縄(琉球大)でのトポロジーシンポジュームに出席。
2.西安(中国)での Geometric Topology にかんする
ICM 北京の Satellite Conference に出席。
(1.2ともに、妻と一緒に行った。特に、2については妻のページに行状記がある。妻のページがどこにあるかは、探してみてください)
3.1と2の合間とその後に、ひどい風邪を引いて、さらに他に雑用もあったので、8月は露と消えてしまった)
4.駒場(東京大)での河澄さんの集会に参加。
5.佐賀大学のバスハイクで九重へ行き、すがもり越えからの下りで「近道」にはいり、あやうく遭難しかけた。
6.梅田(大阪市大)での森元先生の研究集会に参加。
問題が見つかったかどうかは秘密。
後期は、水曜日の1校時に「専門周辺科目」という、1校時というしんどい時間に来るのに、何のためにあり、なにをすべきかわからない科目がある。また、オープンキャンパス実行委員という、ありがたい委員の仕事もある。
7月10日: 前回の日記で数学関連2にある結果の証明に初等的だが致命的な間違いがあって,結局,「射影平面内の非特異代数曲線の写像類群はどのようなものになるか」という問題は振り出しに戻った(始め,前回の日記を書き直そうかと思ったが,それはやめた).なかなか美味しい話は無いものだ.今回は,ファイバー結び目に付いて,若干まじめに勉強したのが収穫といったところか...また,再び問題を探してさまよわなければならない.
7月8日: このページは,とあるソフトを使って作っているのですが,起動するのが面倒でついつい,日記を書くのを怠り,今日の良き日(?)を迎えてしまいました.
前回の日記以降にやったことをまとめると...(あまりに昔のことは忘れている)
数学関連:(論文はなかなか出版できない.Level
2 写像類群の話は沙汰止み)
1.トーラス結び目の4次元版をまとめた.
2.複素射影平面内の非特異3次曲線上の同相写像が全て複素射影平面上に拡張することができることを示した.(現在4次以上でもできるかと考えているのだが,次数が偶数のときは曲線が
characteristic にならないので Rochlin quadratic
form が定義でき無いことに今日気づいた.となると,次数が偶数の場合を考えるのだが,この場合種数が10以上となり,一気に気分がなえてしまった.)
講義関連:
1.数理文書作成(学部2年生向け)で TeX の実習をしたが,学生間の実力の差がはなはだしく,実習課題を終えてしまった学生達のために,ホームページの作り方と,Java
の使い方のさわりの部分を紹介するページを作ったところが,時間ばかりかかって,おまけに全く反響が無かった.
2.位相幾何学特論(修士の学生向け)で,位相空間論の復習に時間をかけて,その後,閉曲面の分類をやった.ホモロジー群の導入のしかたは,ユニークだったのではと自分では思っているのだが,あまりに直感的過ぎて,計算しづらいと言う印象をもたせただけに終わった危惧もある.
趣味,その他:
1.今年も,有田陶器市へ行った.
2.今年も,由布岳に登った.ただし,体力に自信が無かったので,登った後に由布院に一泊した.
3.35になってしまったので,大学の健康診断として血液検査があった.昔から,(物体も,人間も)とがったものが苦手なので,採血されているときは,採られているのを見ないようにした.これは,「返事が無いのはいい返事」という検査で,異常が無ければ本人には結果が知らされないものだそうだ.痛い思いをして何か損をしたような気がするが,ただで検査してくれるのはありがたいと思わなければ.次の検査は40になってからだそうである.
4.日本国内の銀行で,米国の小切手を現金化(「取り立て」というそうだ.余りいい語感ではない)したら,結構手数料がかかり,5ドルとか1ドル以下の物は記念に置いて置くことにした.
忘れたことが多々あるのだが,結局,たいしたことはしていない.
4月5日: 3月27日に日本に帰国しました。東京(私の親の家)と、神戸(妻の親の家)に寄り、4月3日から佐賀大学に戻りました。米国に行っている間、数理科学科の皆さんのお世話になり有難うございます。
あちらでは、初めハンドル体の写像類群(ハンドル体群)の表示を考えていましたが、9月11日ごろに気が変わり、出国前に格闘し始めていたスピン写像類群と格闘することにして、見事勝利を収めました。その後は、ハンドル体群のホモロジカルなアナロジーや、トーラス結び目の4次元版を考えました。
毎週、月曜日と水曜日の夕方に近くの教会でやっている
ESL (English as Second Language) というものにも、無料ということもあり参加しました。ただし、英語の実力が伸びたかどうかは?です。妻は、同じ
ESL の午前バージョンに毎日通って、沢山の友達が出来たようです。
きりが無いので、米国滞在中のことは、後日、別のページに書くことにします。
今日は、今年のゼミの打ち合わせをしました。今年のゼミの参加者は、礎君、宮坂君、柴田君、縄田君の4名です。なかなか個性的そうな学生達で、今年は楽しいセミナーになりそうです。
今朝、「数学のたのしみ」にある深谷先生の文章を読んで、自分の卑小さを改めて痛感しました。もっとも、初めから比較の対象になるものではないので、今は、とにかく出来る事からやるしかないでしょう。まずは、トーラス結び目の4次元版をまとめて、level
2 写像類群の生成系を求めることが当面できることでしょう(深谷先生の名前を挙げた後で本当に卑小なものですが)。
それと関連するようなしないようなことですが、小倉先生と話していて、勉強と研究の配分をどうするかは難しいという話になりました。僕の問題はまさにそれで、勉強ばかりでしばらく研究がお留守になっていたため、My
Work を見てお分かりの情けない状態になってしまいました(とはいえ、勉強が実ってくれたわけでもない(;-;))。数年前から、研究の方を重点にするべく心がけてようやく論文が少しだけ書けましたが、すぐにネタ切れになりそうで心細いものです。他の人たちはどうなのでしょうか?