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2006年度の講義
今年は学期中は細切れの時間ばかりしかつくれなくて、
すっかり研究ができなくなってしまった。
出張に出かけて、ホテルで細々と研究を続けた。
前期は、東北、ソウル、ベルリン、スペインとめぐってやっとひとつ結果が出た。
でも論文にまとめるまでにはいたらなかった。来年はひさびさに出版論文が
なくなるかも。
こういう出張を経済的に支えてくれた人達にはいくら感謝してもしたりない。
講義をマンネリにしないためにも、教科書を変えたり、新しく講義ノートを用意
したりするのが必要なのだが、これには時間がかかる。一年にひとつの科目を
用意するのが限度だろう。
新たな気持ちで仕事ができる環境を来年は整えたいものだ。
仕事も少し整理したいのだが、うまくいきますかどうか。
- 前期
- 微分積分学第一
- 微分積分学第一 (夜間主コース)
- 代数と幾何学
テンソル代数と外積代数を志賀浩ニ「ベクトル解析30講」に基づいて
ゆっくり話した。受講生30人ほど。
- セミナー
高木「初等整数論講議」を終えた後、小野孝「数論序説」の2章から読み
はじめた。
- 情報基礎数理学特選 (東北大学大学院情報科学研究科集中講義
5/29-6/2)
「クンマー理論の拡張とその応用」の題目で集中講義をした. 受講生は大学院生
で20名ほど. そのなか最後まで通しで聞いてくれたのは5人くらい.
その他に 宗政先生
,
田谷さん ,
佐藤篤さん
などが講義に出て下さった.素人も玄人も満足させるのはなかなか難しい
ので, 前半は大学院生にいまから数学を本格的に研究していくため
の予備知識を身につけてもらうための講義, 後半はある程度予備
知識がある人向けに自分の結果の証明の骨子を話した.目次は
- 第一章 ガロア・コホモロジー
- 第二章 古典的なクンマー理論
- 第三章 代数的トーラス
- 第四章 クンマー理論の拡張
であった.準備はたいへんだったが, 緑がきれいで,風のさわやかな,よい季節に
仙台に滞在できたのは非常によかった.滞在中お世話になったみなさまどうもあ
りがとうございました.
- 後期
- 微分積分学第二 (2コマ)
後期は、毎回のように小テストをした。もっとも、自分達で交換しあっ
て採点しあうので、テストとはいえないかもしれないが。
内容は前回の復習だが、小テストをわざわざ作ってくるのが嫌になる
ほど、できが悪い。できの悪いのはしかたがないかもしれないが、まっ
たくやる気のないのがたくさんいて、なんと、何も書かない人が半分く
らいいる。テスト中に
「先週のノートは自宅で見直したか?」とか「演習問題やってみた?」とか聞くのだ
が、それが全然プレッシャーにならないらしい。こういう人に教えるの
は本当に辛い。(それが15週も続くのだ!)
どれだけ教わっても、自分でやらない限り絶対にできるようにならないのに、
それを実感してくれる人がなんと少ないことか。
こちらの方から宿題が毎週出せればよいのにと思うことしきりである。
TA のつけられる大きい大学が羨ましい。
また、できない人には不可を出すべきなのだが、いろいろな事情から
なかなかそういうわけにもいかないのも困ったところだ。
体積を計算して平気で負の答えを出す人達が
作る日本の工業の未来は相当に暗いと思う。もうすでにその兆候は
いろいろな事件になって表れているようにも思う。
ところで、
いま使っている教科書はコンパクトでよくできていると思うが、もう何
年も使ってきて、さすがに飽きてしまった。講議のマンネリ化にもつな
がりかねない。教科書を変えてみたいものだ。
- 現代数学入門 B
今年も初等整数論。執筆中の教科書から話題を選んで話す。
原始根の存在は話したが、平方剰余の相互法則はやれなかった。
いろいろ手計算をさせるのだが、例えば、7^23 を mod 11 で計算する
のに何回言っても、大きな筆算をして間違えている人がいる。
本当に言葉の無力さを感じる一瞬である。体で覚えないとわかったこ
とにならないんだよ!
聴衆は30人ほど。一年生に初等整数論をやるのはちょっと難しくなっ
てたかも。
- セミナー
小野先生の本を33節まで読む。第3章にはいってから、なかなか苦戦が続
いたがよくやれたと思う。あとは修論まで、いろいろな本や論文から、
ガロア群の計算や逆ガロア問題についての計算を中心に読んでいく予定。
Cohen GTM136 などを読んだ。
- 現代代数学基礎論第二 (大学院修士)
学習院と並行して単純環の理論をやろうと思ったが、結局代数的整数論
に変更。2000年の大学院の講議の代数的整数論の部分をやった。
セミナーに関連して、ガロア理論とガロア群の計算をあたらしく準備して、講義
した。出席した学生は2.5名。人気はない。
- 代数学III・代数学特論(学習院大学)
昨年は計算機がらみの話をしたので、今年は理論的なことをやろうと思い単純環
の一般論を選んでみた。例と簡単な問題がたくさん載っていたので、
Farb-Dennis: Noncommutative algebra GTM144 を基に講義を組み立てた。
環と加群の理論から初めて、
半単純環、単純環、中心的単純環、ブラウアー群と標準的な内容ながら、
ちょっと詰め込み過ぎたかなというのが正直な感想。
我慢して聞いてくれた
学生たちに感謝。
わたくしも学部4年生のときに単純環の理論を教わったけれど、
身についたのはずっと後でした。というわけで、いつか役に立つことを
願ってます。
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