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部分多様体幾何とリー群作用2025
日時:2025年12月9日(火)〜 12月10日(水)
場所:東京理科大学 神楽坂キャンパス 森戸記念館第1フォーラム(B1階)
講演予定者(敬称略、五十音順)
- 加藤 直樹(中京大学)
- 甘中 一輝(金沢大学)
- 木村 太郎(鶴岡工業高等専門学校)
- 笹木 集夢(東海大学)
- 田崎 博之(東京都立大学、筑波大学)
- 多羅間 大輔(立命館大学)
- 長友 康行(明治大学)
- 馬場 蔵人(東京理科大学)
- 森本 真弘(東京都立大学)
- 山内 優太(横浜国立大学)
タイトル・アブストラクト
- 加藤 直樹「左不変アファイン葉層構造と左対称代数構造の一般化」
リー群上の左不変アファイン構造は, リー環上の左対称代数構造と一対一に対応することが知られている. 本講演では, 左対称代数構造を一般化し, この一般化された代数構造がリー群上の左不変アファイン葉層構造と一対一に対応することを説明する. また, 左不変アファイン葉層構造の完備性についての条件を, この代数構造を用いて表す. 更に, この代数構造を許容する低次元リー環について紹介する.
- 甘中 一輝「Hurwitz-Radon数と半単純Lie群の固有作用」
Hurwitz-Radon数は二次形式の合成則、球面上のベクトル場の研究等、様々な分野で思いもかけず現れる。本講演では擬Riemann幾何学の文脈でもHurwitz--Radon数やその変種が自然に現れる事を紹介する。具体的には、与えられた擬Riemann等質空間に対して、どの様な非コンパクト連結半単純Lie群が等長かつ固有に作用し得るか?という問題を取り上げる。講演では関連する先行研究を概観した後、擬Riemann等質空間のある族に対して、その様な半単純Lie群が`古典型Lie環に付随するHurwitz-Radon数'を用いて分類される事を報告する。本講演は東條広一氏(東海大学)との共同研究に基づく。
- 木村 太郎「Cartan embeddings of compact Riemannian $k$-symmetric spaces」
$G$ をコンパクト連結リー群, $G$ の有限位数 $k$の自己同型写像を$\sigma$ とする.
$K=\{ g \in G \mid \sigma(g)=g \}$ とおくとき, $\Psi: G \to G ; g \to g \sigma (g^{-1})$ は
写像 $\Psi_{\sigma} : G/K \to G ; g \to g \sigma (g^{-1})$ を引き起こす. この写像を Cartan 埋め込みという.
また, $(G, K, \sigma)$ は $k$対称空間 $G/K$ を定める. $k=2$ のときは通常の意味での対称空間である.
$k=4$ のとき, $H=\{ g \in G \mid \sigma^2(g)=g \}$ とおく.
このとき, $4$ 対称空間 $G/K$ は, 自然なファイバー束 $H/K \to G/K \to G/H$ の構造をもつ.
本講演では, $4$ 対称空間 $G/K$ におけるカルタン埋め込み
$\Psi_{\sigma} : G/K \to G$ の2重調和性について,
対称空間 $G/H$ からの特徴付けを報告する.
本講演の内容は間下克哉氏(法政大学 名誉教授)との共同研究の内容に基づく.
- 笹木 集夢「簡約実球等質空間上の不変測度」
非コンパクト実半単純リー群の半単純対称空間に対して,この対称空間における極大コンパクト部分群の作用の軌道空間(両側剰余空間)は,半単純対称空間に対するカルタン分解の理論により分裂カルタン部分環を用いて記述される.この分解定理に沿って,半単純対称空間上の不変測度は極大コンパクト部分群のHaar測度と分裂カルタン部分環上のLebesgue測度を含んだある積分公式によって与えられる.本講演では,簡約実球等質空間と呼ばれる半単純対称空間を含むクラスの上の不変測度を考察する.特に,非対称な簡約実球等質空間に対してカルタン分解および不変測度の積分公式の構成について具体例を交えて解説する.
- 田崎 博之「$Pin^c$群および関連するコンパクトLie群の極地」
連結コンパクトLie群の極大トーラスと非連結コンパクトLie群の類似物を利用して得られた、$Pin^c$群および関連するコンパクトLie群の極地に関する結果を示す。これにより、すべての有向実Grassmann多様体が$Pin^c$群の極地として現れることがわかる。また、$Ss^c$群の極地と直交複素構造全体の2つの連結成分との関連性も明らかにする。
- 多羅間 大輔「Subriemannian geodesic flows of the seven-dimensional sphere」
This talk deals with the geodesic flows of the seven-dimensional sphere with respect to four specific trivializable subriemannian structures. The complete integrability is proved for each of the Hamiltonian flows, on the basis of a method introduced by A. Thimm at the beginning of 1980's. The subriemannian structures are described in terms of Clifford modules and the key of the proof for the complete integrability lies in construction of a chain of non-degenerate subalgebras in the Lie algebra $\mathfrak{so}(8)$. Further, the invariant differential operators corresponding to the constructed first integrals are also discussed. The talk is based on a joint work with Wolfram Bauer and Abdellah Laaroussi.
- 長友 康行「旗多様体からグラスマン多様体への正則写像;竹内の定理の一般化」
本講演の目的は竹内先生の結果 (M.Takeuchi, Homogeneous Kähler submanifolds in complex projective spaces, Japan J. Math. 1 (1978), 171-219) を一般化することにある;ディンキン図形とその部分図形の組 $(\Pi, \Pi_0)$ を用いて旗多様体を指定し、その第 2 ベッチ数を $r$ とする。そして、$r$ 個の正整数からなる集合を $\mathbf{Z}^r_+$ と表し、写像 $p : \Pi-\Pi_0\to \mathbf{Z}^r_+$ を考える。この時、$(\Pi, \Pi_0;p)$の同型類を $A$ とする。また、旗多様体 $(\Pi, \Pi_0)$ から複素射影空間への充満な正則等長写像の像同値類からなる集合を $B$ と表わす。すると竹内先生の定理は「$A$ から $B$ への全射が存在する」と定式化される。我々はこの結果を、「コンパクトリー群の表現のなす圏と、旗多様体から複素グラスマン多様体へのある性質を満たす正則写像のなす圏が同型となる」という形に一般化する。
- 馬場 蔵人「対称空間内の等焦部分多様体を発する後退平均曲率流について」
対称空間内の等焦部分多様体を発する後退平均曲率流は長時間解をもち,極小な等焦部分多様体に収束することが知られている.本講演では,等焦部分多様体に付随する接焦データを用いた後退平均曲率流の長時間解に関する考察について述べる.この講演は小池直之氏との共同研究に基づく.
- 森本 真弘「平行移動写像と弱鏡映部分多様体のアファイン微分幾何学」
アブストラクト:1990年代に C.-L. Terng と G. Thorbergsson は,ある無限次元ヒルベルト空間からコンパクト・リーマン対称空間 G/K への自然なリーマン沈め込みを研究した.この写像は G/K 上の平行移動写像と呼ばれる.その後,小池直之は彼らの理論を G/K が非コンパクト型リーマン対称空間の場合へ拡張した.本講演では,これらの理論のアファイン微分幾何学の枠組みにおける一般化について,講演者の研究結果を発表する.特に,アファイン対称空間上の平行移動写像を定め,それが安部直人と長谷川和志の意味で水平分布付きアファイン沈め込みとなることを示す.対称空間の弱鏡映部分多様体との関係についても議論する.
- 山内 優太「特異点をもつ部分多様体の絶対全曲率」
ユークリッド空間$\boldsymbol{R}^{n+r}$内のコンパクトかつはめ込まれた$n$次元部分多様体に対して,その絶対全曲率はBetti数の総和以上になることが知られている(Chern-Lashofの定理).さらに,絶対全曲率が$2$であることと,その部分多様体が$n+1$次元アファイン部分空間ないの凸超曲面になることは同値となる.本講演では,ユークリッド空間内の特異点をもつ部分多様体(フロンタル)に対してのChern-Lashof型定理を紹介する.さらに,絶対全曲率が最小の$2$であり,かつ全ての特異点が第一種である場合に,そのフロンタルの像が$\boldsymbol{R}^{n+r}$内の$n$次元アファイン部分空間の閉凸体となることを紹介する.
世話人:
小池 直之(東京理科大学理学部第一部数学科)
田中 真紀子(東京理科大学創域理工学部数理科学科)
馬場 蔵人(東京理科大学創域理工学部数理科学科)
サポート:
科学研究費補助金・基盤研究(C) No. 22K03300(研究代表者:小池 直之)
科学研究費補助金・基盤研究(C) No. 23K03100(研究代表者:田中 真紀子)
東京理科大学研究推進機構総合研究院「幾何学と自然科学融合研究部門」[Link]
過去の記録については、下記のサイトをご覧ください。
conf-sgla (tus.ac.jp)
研究課題一覧(2025年度)|共同利用・共同研究拠点|大阪公立大学数学研究所
[LINK]
管理人:馬場 蔵人 baba_kurando(at)ma.noda.tus.ac.jp