数論A, B [旧課程:代数学特講1](初等整数論とその応用/3,4年生向け)

  主なトピックス,及び概要

 - 平成23年度:曜日数の計算,魔法陣の構成,平方剰余の相互法則,ガウスの整数環[素因数分解,有理素数の分解]

   初等整数論の入門的な講義です.教職を目指している学生も少なからずおられるようなので,出来るだけ中学・高校の生徒にも興味を持ってもらえるような話題を取り入れてみました.

 - 平成24年度:平方剰余の相互法則,終結式と判別式,3次4次方程式の解法,殆ど有理点を持たない楕円曲線,Mordell-Weil群

   初等整数論に関する基本的な事項を前期に解説します.後期は,それらを踏襲して楕円曲線に関するいくつかの話題について解説します.初等整数論を多少駆使できる程度の内容ですので,あまり高度な理論の解説は一切行いません.2倍写像や高さについても具体例で多少触れるだけです.

 - 平成25年度:平方剰余の相互法則,PIDとUFD,立方剰余の相互法則,純3次拡大体における有理素数の分解

   初等整数論に関する基本的な事項を前期に解説します.後期は,それらを踏襲して平方剰余の相互法則の一般化である立方剰余の相互法則について解説します.さらにそれを応用して有理数体上純3次拡大体の整数環における有理素数の分解をいくつかの例を通して解説します.基本的には初等整数論と環論の初歩を仮定すれば分かるような平易な解説をする予定です.

 - 平成26年度:ベルヌーイ数,スターリング数,リーマンのゼータ函数の偶数点での値,及び解析接続 (数論Bのみ開講)

   自然数列の和や,自然数の2乗の和については高校でも学習しますが,より一般に,自然数の冪乗和をベルヌーイ数というものを用いて表すことができます.前半は,ベルヌーイ数について比較的平易な解説を行います.一方,区分求積法を用いて容易に示されるように,自然数列の逆数和は発散します.ところが,自然数の2乗の逆数和は収束します.このような収束級数を,複素平面上の有理型函数として一般化したものがリーマンのゼータ函数です.後半は,リーマンのゼータ函数の基本的な性質や,ゼータ函数とベルヌーイ数との関係について解説します.(一応,簡単な説明は加えますが)複素函数のLaurent展開や留数定理などの知識があることが望ましいです.

 - 平成27年度:平方剰余の相互法則,一次分数変換,2次体の整数論,三角形のモジュライ空間

   初等整数論に関する基本的な事項を前期に解説します.後期は,平面内の三角形の相似類たちのなす空間が複素平面内の単位円の内部と同一視できることを解説します.(三角形のモジュライ空間の,中村博昭-小木曽啓示の両氏らによるモデル.)そのための準備として,一次分数変換や2次体の整数環の性質についていくつか解説をします.基本的には初等整数論と複素函数論の初歩を仮定すれば分かるような平易な解説をする予定です.

 - 平成28年度:ファレイ数列,ピックの公式,連分数,モジュラー群の上半平面への作用,モジュラー群の表示,行列の単因子とモジュラー群のアーベル化 (数論Bのみ開講)

   格子点に関連する整数論のトピックスをいくつか解説します.より具体的には,分母どうし分子どうし足し合わせることができる分数,格子点の数を数えることで面積が分かる多角形,無限に続く分数で無理数を表わす方法,モジュラー群の上半平面への作用の基本領域,上半平面を「三角形」で分割する方法,群の木への作用,モジュラー群の表示,整数係数行列の標準形と単因子,群のアーベル化などを解説します.時間に余裕があれば,有限体上の一般(特殊)線型群,モジュラー群のレベル2主合同部分群の基本領域などについても解説します.代数学1,代数学2の知識があれば問題ないような解説を行う予定です.

 - 平成29年度:整数の整除,ユークリッドの互除法,曜日数の計算,オイラー関数,原始根,平方剰余の相互法則(数論Aのみ開講)

   在外研究のため前期のみの開講となりました.試験には東京物理学校時代の期末試験問題も出題してみました.

   物理学校でどのようなことを教えていたのか,今も昔も変わらない関門制度など,感慨深いものがあります.特に,本校の生徒は徴兵免除の特権があり,先の戦争中は徴兵忌避を目的として志願者が殺到しました.このため,文部省からの勧告により入学試験を実施するに至りました.これが本学の入学試験の始まりです. 落第とともに徴兵となったのでは生徒もたまらないでしょう.試験に対する気合の入れ方は半端なかったことと推察しています.

   昭和11年ごろからは高木貞治先生も本校で夜間の教壇に立たれました.130年を超える伝統を次なる世代に伝えていきたいものです.


  参考書

 講義ノートを作成する際に参考にした本です.最近の本もありますが,基本的には,整数論の研究室に在籍していた学部生時代に読んでいた本です.他にも良い文献はあると思います.

 1. 初等整数論

 - 「数論入門」,北村 泰一著,槇書店.
 - 「初等整数論」,ハロルド. M. スターク著,芹沢 正三,安藤 四郎共訳,現代数学社.
 - 「整数論」,ヴィノグラードフ著,三瓶 与右衛門,山中 健訳,共立出版.
 - 「平方剰余の相互法則」,倉田令二朗著,日本評論社.

 2. 楕円曲線

 - 「数論1」,加藤 和也,黒川 信重,斎藤 毅共著,岩波書店
 - 「フェルマーの最終定理・佐藤‐テイト予想解決への道 (類体論と非可換類体論 1)」,加藤 和也著,岩波書店.
 - 「初めての数論」,シルヴァーマン著,鈴木 治郎訳,ピアソン・エデュケーション.
 - 「楕円曲線論入門」,シルヴァーマン,テイト共著, 足立 恒雄, 小松 啓一, 木田 雅成, 田谷 久雄共訳,シュプリンガー.
 - 「数論入門講義」,J. S. Chahal著,織田 進訳,共立出版.

 3. 立方剰余の相互法則

 - 「平方剰余の相互法則」,倉田令二朗著,日本評論社
 - 「数論を学ぶ人のための相互法則入門」,平松 豊一著,牧野書店.
 - 「A Classical Introduction to Modern Number Theory」,K. Ireland and M. Rosen著,Springer.
 - 「Primes of the form x^2 + y^2」,D. A. Cox著,Wiley Inter-Science.
 - 「Reciprocity Laws」,F. Lemmermeyer著, Springer.

 4. ベルヌーイ数,スターリング数,ゼータ函数

 - 「ベルヌーイ数とゼータ関数」,荒川 恒男, 金子 昌信, 伊吹山 知義著,日本評論社.
 - 「整数論―美しき円分体論・ベルヌーイ数への旅路」,山口 周著,産業図書.
 - 「組合せ論入門」,ジョージ ポリア, ドナルド・R. ウッズ, ロバート・E. タージャン著, 今宮 淳美訳,近代科学社.
 - 「ゼータの世界」,梅田 亨, 若山 正人, 黒川 信重, 中島 さち子著,日本評論社.
 - 「リーマンのゼータ関数」,松本 耕二著,朝倉書店

 5. 2次体の整数論

 - 「初等整数論講義 第2版」,高木 貞治著,共立出版.
 - 「代数的整数論入門」,藤崎 源二郎著,裳華房.
 - 「素数と2次体の整数論」,青木 昇著,共立出版.

 6. 三角形のモジュライ空間

 - 「三角形のモジュライ考」,中村 博昭著,高校生に贈る数学ライブ,数学セミナー編集部編,日本評論社.
 - 「不変量とは何か - 現代数学のこころ」,今井 淳,寺尾 宏明,中村 博昭著,ブルーバックス,講談社.
 - 「Elementary moduli space of triangles and iterative processes」,H. Nakamura and K. Oguiso著, J. Math. Sci., Univ. Tokyo, 10 (2003), pp. 209-224.

 7. ファレイ数列,ピックの公式,連分数

 - 「格子からみえる数学」,枡田 幹也,福川 由貴子著,日本評論社.
 - 「数論入門1」,G.H. ハーディ,E.M. ライト著,小野 信一,矢神 毅訳,シュプリンガー.
 - 「初等整数論講義 第2版」,高木 貞治著,共立出版.

 8. モジュラー群の上半平面への作用

 - 「一変数保型函数の理論:Fuchs群」,河田 敬義著,東京大学セミナリーノート.
 - 「Introduction to Arithmetic Theory of Automorphic Functions」,G. Shimura著,Princeton University Press.




最終更新日:2017年7月27日.