マイクロ波散乱実験


3-4 二次元斜交格子からの散乱

 さて(10)式において、と記述したが、実はこれはの時にのみ成立するものであって、一般的な表現としては正しくない。
 一般に、が結晶格子の基本並進ベクトルであるとき、その逆格子の基本並進ベクトルは、

で表され、逆格子点の位置は一組のベクトル
(l、m、nは整数)
で与えられる。このを逆格子ベクトルという。

となるとき、Bragg条件を満たす。
 二次元斜交格子を考えてみよう。

実験8



図37 二次元三角格子からの散乱(格子定数a=b=4.5[cm]、波長λ=3.27[cm]方向と方向のなす角γ=120°)




図38 実格子unitcell


 逆格子空間と逆格子点を描きなさい。また、図37の様に原子棒を配置し(a=b=4.5[cm]、γ=120°、三本三列)、K=0としてHを0.8から2.3まで0.05ごとに変化させて(H 0)Scanを行え。設定は実験6と同様にせよ。

解説8



図39 三角格子の逆格子空間




図40 (H 0)Scan




図41 三角格子の逆格子の基本並進ベクトル(はab平面に垂直な方向の単位ベクトル)




図42 二次元三角格子(三本三列)の強度分布


 Hが整数の時にピークが現れることが確認できただろうか。やはりこれも

(l、mは整数)
が成立したときにピークが現れる。
 逆格子空間が図39となっていることから、結晶は60°の回転対称性をもつことになる。確認してみよう。

実験9

  実験8のときの(2 0)の位置にω、ψを合わせ(ω=57.04°、ψ=114.09°)、ψを固定したままωをその位置から2°づつ、180°回転してIntensityを測定せよ。

解説9



図43 三角格子の60°回転対称性

 図44の様にScanしたことから、60°ごとに(2 0)、(0 2)、(-2 2)、(-2 0)のピークが現れたことが分かる(図43)。



図44 Scanの方向