2 フェリ磁性体

2.1 フェリ磁性体とは

この節ではモーメント、交換相互作用や磁気配列を簡単に変えることができるというシミュレーションの自由度を生かして、新たにフェリ磁性体という磁性のシミュレーションをすすめる。

2次元正方格子上でのフェリ磁性体の磁気構造は、以下の図のように長さの異なるモーメントを持つ2つの副格子が反強磁性的に結合したもので、差し引きの自発磁化を生じる。



fig.2.1 フェリ磁性体の磁気構造

フェリ磁性体というモデルが、異なるモーメントを持つ2つ以上の副格子が反強磁性的に結合されたものであるならば、今まで見てきた反強磁性体は、モーメントが等しい特別 な場合のフェリ磁性体と見ることができ、強磁性体についても 1種類の副格子により構成される磁性体だと見なすこともできる。
この意味で、フェリ磁性体の振る舞いを調べることは、2次元正方格子でモデル化可能な磁気構造の特徴の多くをつかむことと言える。実際、フェリ磁性体にはおもしろい特徴があり、このシミュレーションを通 じてそれらを見ていきたい。

シミュレーションでは以下に示すように2つの磁気モーメント(SA;A格子、SB;B格子)を設定し、相互作用についてもA格子間相互作用、B格子間相互作用、AB格子間相互作用を考慮した。


fig.2.2 フェリ磁性体のモデル

それぞれの格子におけるハミルトニアンは


となる。

それでは次で、最も粗く大づかみではあるが、まず分子場近似によってフェリ磁性体を 解きあかしてみよう。