待ち行列理論についての素朴な疑問


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待ち行列理論は役に立つの?

うーん!難しい質問です.もともと待ち行列の理論は現実の問題(電話交換機の性能評価)に答えを出す必要から生まれました.これは今日においても変わりありません.限られた資源をたくさんの人が有効に利用しようとする限り,待ち行列の問題は尽きることがありません.実際に問題は益々複雑になり,未解決の問題がたくさん残されています.理論はこれらの問題解決の道具です.私達の研究はこの道具を作ることを目指しています.待ち行列も発祥から90年近くが経ちました.数学的な理論としても成熟し,内容を理解するための敷居がだんだん高くなっているのも事実です.しかし,幸いなことに,待ち行列はいつも現実の問題に答えを出す必要に迫られています.理論もこれに懸命に答えようとしています.ご質問の答えになっているかわかりませんが,待ち行列の理論は役立つことを目指していると言えます.

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何に応用されるの?

待ち行列理論はもともと電話交換機の性能評価から始まりました.電話網は現在情報通信網へと大きく発展しています.これに伴い,待ち行列理論も情報通信ネットワークの性能評価に貢献しています.計算機システムやそのネットワークの性能評価にも使われています.工場における生産システムなどにも重要な応用分野です.

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どうやって使うの?

標準的なモデルが用意されていますので,すぐに理論を適用できる場合があります.また,待ち行列理論に基づいた性能評価ソフトウェアパッケージも開発されています.しかし,待ち行列のような確率モデルでは,実際の問題をいかにモデル化するかがとても大事です.この辺のノウハウはなかなか伝えることが難しいところです.まず計算機でシミュレーションすることを勧めます.このためには,数学的なモデル化が必要ですから自然にモデルについて考えることになります.シミュレーションに関するソフトウェアパッケージはたくさんありますが,モデル化の所をかなり適当にしているものが多く,やはり自分でプログラムを作ることに及びません.昔と違って,高速な計算機を簡単に使える時代ですから,シミュレーションが本当に手軽にできます.シミュレーションでモデル化ができれば,次は理論を適用することになります.場合によっては数値計算やさらなるシミュレーションが必要になることもあります.

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どんなことを勉強すれば待ち行列理論がわかるの?

待ち行列のモデルを理解するには,ほとんど何の知識も必要ありません.しかし,モデルの確率的な仮定や理論的な結果を理解をするためには確率論の知識が必要です.また,マルコフ過程についても少し知っているとよいでしょう.ただし,大学1,2年程度の初等的な知識で十分です.

 待ち行列理論を勉強したいというのであれば話は少し違います.大学の1年生で勉強する解析と線型代数それに確率論の基礎的な理解が最低限必要です.少し進んで勉強してみたいという人には,初等的な集合論位相測度論(積分論)を勉強することを勧めます.丁寧に書かれた確率論の本は測度論の必要な部分を含んでいますから,確率論の本を最初に読むのもよいでしょう.次に,マルコフ連鎖などの確率過程を含む応用確率論を勉強します.この他にヒルベルト空間などの関数空間も勉強しておきたい分野です.  


改訂, 2001年1月20日
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