生物工学実習 W

☆ 実習の補足 ☆



  1. イオン輸送性 ATPase
  2. BLAST

  1. イオン輸送性 ATPase

    イオン輸送性 ATPase は細胞内イオン環境の恒常性維持に役立っているのみならず、筋弛緩、受容体の細胞内循環、ホルモンの貯蔵、消化、排出など、数多くの生理的・生物学的過程と共役している重要なタンパク質である。

    イオン輸送性 ATPase は、その構造、機能、生化学的性質により、F 型、V 型、P 型に大別される。

    • F 型 ATPase
      ミトコンドリア内膜・クロロプラストチラコイド膜・細菌細胞膜などに存在するイオン輸送性 ATPase である。
      H輸送性 F - ATPaseは、これらの膜に存在し、電子伝達系により形成されるHの電気化学的ポテンシャル差と共役し、ADPとPi から ATP を合成する。

      F 型 ATPase は、マトリックス(または細胞質側)に突き出している F1部分(α3、β3、γ、δ、ε サブユニット)と、膜に存在する F0部分( a、b2、c6-12 サブユニット)から構成されると考えられている。

      F1 部分は ATPase 活性の触媒機能を担い、F0 部分は膜を介したイオン透過の働きを担っており、ATPase 活性とイオン透過の共役機構の解明が重要な課題の1つとなっている。

      F 型 ATPase では X 線結晶構造解析により、F1 部分や、F0 部分の c リングなどの詳細な構造が解かれており、構造と機能に関する知見が充実してきている。
      また、一分子観察によって、α3β3複合体が、γサブユニットに対して相対的に回転することが証明されている。

      F_ATPase

    • V 型 ATPase
      液胞(vacuole)型 ATPase とも呼ばれ、真核生物の細胞内酸性小胞(液胞、リソソーム、ゴルジ体など)の酸性化を担う本体として知られているイオン輸送性 ATPase である。
      H輸送性 V - ATPase はATP の加水分解と共役してオルガネラ内部に H を輸送する。

      V 型 ATPase は、細胞質側にある V1部分( A3、B3、C、D、E3、F3、G サブユニット)と、膜内に存在する V0部分( I、K6 サブユニット)から構成されると考えられている。

      様々な実験結果から、V 型 ATPase は機能・構造的に、F 型 ATPase に類似していると考えられている。
      V 型 ATPase の A サブユニットは F 型 ATPase の βサブユニットに、B サブユニットはαサブユニットに、それぞれ類似の機能を果たすと考えられている。

      しかし、V 型 ATPase の存在が真核生物に限られていたことにより解析が困難であったため、F 型 ATPase に比べ V 型 ATPase の分子生物学・生化学的研究は遅れ、全体の構造も解かれていない。

      このような中、本研究室では、真性細菌である腸内連鎖球菌 Enterococcus hirae から Na輸送性 V - ATPase の遺伝子群を初めてクローニングした。
      詳細は以下のページを参考にしてほしい。
      山登研究室 生体エネルギー変換系の研究


    • P 型 ATPase
      動物細胞形質膜のNa/ K- ATPase 、筋小胞体膜や形質膜のCa2+- ATPase、胃粘膜細胞膜のH/ K- ATPase などに代表される。
      反応過程でリン酸化中間体を形成するため、P 型と呼ばれる。


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  2. BLAST

    BLAST は Basic Local Alignment Search Tool の略で、一般によく利用されている配列相同性検索のツールで、検索の速度と精度の両面において優れている。
    BLAST には問い合わせ配列と検索対象データベースによって、以下の各種プログラムが提供されている。

    BLAST program
    (BLASTの利用法 より引用)


    BLAST の結果は、以下のように表示される。

    BLAST result

    右列に表示された E-val とは E-value (expected value; 期待値) を表す。
    E-value が 0.01 とは、100個に 1 個の割合で誤った結果が含まれることを表しており、E-value が小さいほど偶然には起こり得ず、有意性の高い検索結果となる。


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Yamato Lab.
Last update: 2005/11/02