2008年度 修士論文要旨


細胞システムシミュレータの拡張開発

金子晴紀

 近年ゲノム解析技術が飛躍的に向上し、遺伝子産物の同定技術が急速に進展したことで、 個々の遺伝子産物の動態を網羅的に把握することが可能になってきた。そのお陰で、これ らの情報を用いて細胞や個体の動態を分子からシステムレベルまで連携した状態で理解し ようとするシステムバイオロジーという分野が現実味を帯びてきた。本研究室の伊東は ①細胞反応プロセスを視覚化する、②生化学データを使用する、③細胞の様々な反応プロ セスを統合する、というコンセプトの下にシミュレータを開発した。これまで、一般の 酵素反応、遺伝子発現制御の記述を行い、大腸菌2段階増殖のシミュレーションに成功 している。そこで今回私は、本シミュレータで記述できるプロセスを拡充し、ユーザー インターフェースの改良に取り組んだ。

 これまでは可逆・上可逆酵素反応とラクトースオペロンに関わる遺伝子発現制御が実装 されていた。そこで、未導入のプロセスである、アロステリック酵素などに見られる 協同性の機構、細胞内外などの局在性の記述、細胞分裂機構などがある中で、細胞分裂に 関する部分以外のモデル化を行いシミュレータに導入した。一般の遺伝子発現やDNA複製 制御についても拡充変更した。

 また、伊東の開発したシミュレータでは、Visual C++のserialize関数を用いていたた め、書き出された保存データをテキスト形式で編集することが困難であった。そこで、 xmlserialize関数を利用し、書き出されたデータをテキスト形式で編集し、シミュレータ に読み込む機能の実装を試み、よりユーザーフレンドリーなシミュレータを目指した。

本シミュレータは生化学データに基づいており、生化学・分子生物学の蓄積するデータを 統合的に解析する上で有用と考えられる。今後、生命現象のすべての局面に適用でき、 より高い精度の予測が出来るようにさらなる拡張が期待される。


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