このページでは、私たちの研究に関連の深いCircuit QED(回路量子電磁力学)について説明いたします。
この分野の研究をされていない方には、Circuit QEDという言葉自体が聞きなじみのないものであると思われます。研究分野としても比較的新しい領域です。まずは、Cavity QEDについて説明いたします。
Cavityとは共振器をさしており、共振器と原子の相互作用の研究が、この領域のメインテーマとなります。図をみてください。共振器と原子、そしてパラメーターとして共振器中の光子崩壊率κ、及び原子の緩和率γが示されています。Cavity QEDでは図のように共振器中に光子を閉じ込め、電磁場を量子力学的に扱います。この手法を用いれば、例えば原子の遷移周波数分の光子エネルギーを吸収、放出することが可能となり、物質と光の量子情報交換や量子情報処理に応用することが可能となります。Circuit QEDはこのCavity QEDの原理を回路上の共振器及び人工原子で実現します。私たちは超伝導体を用いて人工原子(いわゆる量子ビット)と共振器をつくり、量子力学の探究をしています。
では、私たちが日頃どのようなサンプルを用いて実験しているのかをご紹介いたします。
上図が超伝導回路の光学顕微鏡図及び、電子顕微鏡図です。まず、回路の大きさですが、2.5mmx5.0mmのとても小さなサイズです。この小さいサンプルの中に量子ビット、共振器が含まれています。サンプルの中央に細長くうねうねと伸びた部分が確認できます。これが超伝導共振器です。このタイプの共振器のことをCoplanar Wave Guide(CPW)型共振器と呼びます。
共振器の左端に付属しているのが磁束量子ビットです。図の磁束量子ビットは少し特殊な構造をしており、大きな四角いパッドがキャパシタの役割を担っています。さらに構造を詳しく見てみます。(c)の図を見てください。これが磁束量子ビットの根幹を担う箇所です。この量子ビットには3つのジョセフソン接合が含まれています。この例で言いますと、左側に2つ右側に1つです。ループのサイズは非常に小さくこの例でいえば、5μm×10μmです。ジョセフソン接合の作成に関してはFabrication のページに譲ります。
さて、共振器の両端にはマイクロ波を送受信するポートが取り付けられています。サンプル上で占有面積の最も大きな部分(灰色部)がNbでその次に占有面積の広い部分(青みがかった灰色部)が溝になっています。私たちはこの溝の幅や共振器の長さを変えることで共振周波数の大きさを調整しています。このうねうねとした形状は共振器の長さを稼ぐための構造です。
この量子ビットと、共振器からなる系は原子と共振器の相互作用を解析したJaynes-Cummings モデルによく従います。結合強度は量子ビットの配置や溝の幅などのパラメーターにより調節することが可能であるため、非常に拡張性の高い実験系であることがわかります。物理現象としての探究はもちろんのこと、この拡張性の高さが、超伝導量子エレクトロニクスという分野が量子コンピューターの基本素子として注目されているゆえんであるといえます。
では、次に私たちがどのようにしてこの小さな サンプルを作成しているのかFabricationのページでご紹介いたします。
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