研究理念
相木研究室では「現象の数学解析」を基本理念として様々な自然現象・物理現象の数学的な定式化及び解析を行っています.また,現象を可視化するために計算機を用いたシミュレーションも行っています.
研究テーマの例
このコーナーでは,相木研究室での研究理念である「現象の数学解析」をもう少し具体的に紹介します.
① 流体の運動
流体とは水や空気など,その運動が「流れる」と表現されるような物体を総称したものです.流体の運動は非常に複雑で,特徴的な現象も数多くあります.流体にまつわる現象の特徴をよく観察し,その特徴をうまく捉えるような数学的定式化や数学解析を行います. また,流体と一言に言ってもその性質を用いて以下のように分類することができます.
非圧縮非粘性流体
粘り気が少なく,力を加えても体積があまり変化しないような流体を非圧縮非粘性流体と総称します.典型例としては,水が挙げられます.
非圧縮粘性流体
力を加えても体積があまり変化しないが,粘り気がある流体の総称.典型例としては,液体タイプの洗濯洗剤などが挙げられます.
圧縮非粘性流体
力を加えると体積が大きく変化(圧縮・膨張)するが,粘り気がない流体の総称.典型例としては,常温の空気が挙げられます.
圧縮性粘性流体
力を加えると体積が大きく変化し,粘り気のある流体の総称.典型例としては(特定な条件下での)空気などが挙げられます.
このような分類に応じて,流体の運動を数学的に扱うと見通しが良くなることもあります.② 熱伝導
身の回りにある様々な物体は熱を伝えます.例えば,フライパンの底面をコンロで十分に熱すると,フライパンの調理面や縁などが熱くなります.これは,コンロの火が熱源となり,まず炎が当たっている部分のフライパンに熱が伝わります.その後,フライパン内部を通して熱が伝わり,全体が熱くなります.この「熱が伝わる」という現象を熱伝導と呼びます.
時刻\( t\)における物体の各点\( x\)の温度を\( u(x,t) \)とおいたとき,物体内を熱が伝わり,温度が変化する様子を表す偏微分方程式として以下の熱方程式がよく知られています.
\begin{align*}
u_{t}=\kappa \Delta u
\end{align*}
ここで,下付き添え字は偏微分を表し,\( \Delta \)は,\( \Delta = \sum_{i=1}^{n}\frac{\partial^{2}}{\partial x_{i}^{2}} \)で与えられる2階の偏微分作用素です.つまり,\( \Delta u\) は \( \sum_{i=1}^{n}\frac{\partial^{2}u}{\partial x_{i}^{2}}\)で定まる関数です.\( \kappa \)は熱伝導係数と呼ばれる正の定数で,物体の「熱の伝わりやすさ」を表す値です.\( \kappa \) が大きいほど熱が良く伝わることを表します.