神楽坂代数セミナーの記録 (2014年度)
- 第14回
- 2015年3月10日(火)13:00-14:00, 14:10-15:10
- 会場 東京理科大学神楽坂キャンパス1号館111
- 講演者 浅芝 秀人(静岡大学)
- タイトル Grothendieck constructions and derived equivalences of linear categories
- 概要
可換環𝕜と小圏 I (I_0, I_1でIの対象のクラス,射のクラスを表す)を固定する。
以下,𝕜-線型小圏を単に𝕜-小圏とよぶ。
𝕜-多元環の無限被覆も考察の対象とするために,𝕜-多元環は対象を有限個しか
持たない局所有界圏とみなし,𝕜-小圏の範囲で議論を進める。
𝕜-小圏全体を対象とし,それらの上の両側加群を1-射とし,
両側加群の間の準同型を2-射とする bicategory 𝕜-Cat^b を考える
(もう少し詳しくいうと,𝕜-小圏 C から D への1-射はD-C-両側加群Mで与え,
合成 C→D→EはD上のテンソル積で与える)。
(Lax) functor X:I→𝕜-Cat^b に対して,一般化された Grothendieck construction Gr(X)を定義する。
これにより,𝕜-小圏 X(i) (i in I_0) を両側加群 X(a) (a in I_1) でつなぎ合わせて
新しい 𝕜-小圏 Gr(X) が構成される。
特別な例として,この構成は三角行列多元環や𝕜-speciesのテンソル多元環を与える。
さらに,X の"加群圏" Mod X や X の"導来加群圏" D(ModX) もI からの(lax) functorとして自然に定義し,
これを用いて(lax) functors X,X′:I→𝕜-Cat^b の間に導来同値を定義する。
X と X′ が導来同値であれば(X(i) と X′(i) (i in I_0 ) の間の
導来同値を両側加群 X(a),X′(a) (a in I_1) で貼り合わせることにより),
Grothendieck constructions Gr(X) と Gr(X′) の間の導来同値を構成することができる。
この定理の応用例も紹介する。
- 第13回
- 2015年1月8日(木)16:30-18:00
- 会場 東京理科大学神楽坂キャンパス1号館111
- 講演者 小笠原健 (小山高専)
- タイトル 重さ1のモジュラー形式の空間の次元とエータ積
- 概要
重さ1のモジュラー形式の空間の次元は,レベルが素数の場合に,
Serreの"Modular forms of weight one and Galois representations" (Algebraic
Number Fields, ed. by A. Fr¨ohlich, Acad. Press (1977), 193--268) で考察されている.
その中で,あるエータ積との関係が指摘されているが,本講演では,
重さ1の空間の次元を,エータ積が生成するHecke加群を用いて計算する試みについて紹介する.
- 第12回
- 日時 2014年12月22日 (月) 16:30-18:00
- 会場 東京理科大学神楽坂キャンパス1号館111
- 講演者 齋藤正顕(早稲田大学)
- タイトル Cohen のマース形式について
- 概要 Andrews, Dyson, Hickerson は 1988 年の論文で,
Ramanujan の Lost Notebook に記載された
ある2つ q-級数(モックテータ級数に似た級数)を調べ,
そのフーリエ係数に関する等式として
「整数の分割の個数」及び「Pell 方程式の解の個数」
を用いた2通りの表示を得た.
これに関連し, Henri Cohen は 1988年の論文で,
Ramanujan の2つの q-級数のフーリエ係数が,
正則部, 非正則部に現れるような固有値1/4の
マース形式を与えた. Cohen のマース形式は,
実2次体を中間体として含むような, ある2面体拡大の
2次元偶ガロア表現に付随するマース形式として与えられる.
本講演では,Cohen のマース形式を含むマース形式の族
について報告する.
- 第11回
- 日時 2014年12月11日 (木) 16:00-18:10
- 会場 東京理科大学神楽坂キャンパス1号館111
- 16:00-17:00
- 講演者 板場綾子(東京理科大学)
- タイトル 単項多元環と自己移入的特殊双列多元環のホッホシルトコホモロジーについて
- 概要
多元環のホッホシルトコホモロジーは, 近年盛んに研究されている対象であり,
特に, 導来同値の重要な不変量の一つであることから,
導来同値かどうか判断する
ためにも用いられている.
本講演では, ある分離条件を満たす単項多元環(monomial algebra)及び二重矢を持つ巡回クイバー
による自己移入的特殊双列多元環(self-injective special biserial algebra)の両側極小射影分解と
それらの多元環のホッホシルトコホモロジーについて述べる.
- 17:10-18:10
- 講演者 板垣智洋(東京理科大学)
- タイトル The cyclic homology of truncated quiver algebras and
the Hochschild homology dimension
- 概要
巡回ホモロジーはConnesにより導入され,
ホッホシルトホモロジーと同様に森田同値や導来同値における不変量である.
具体的な多元環の巡回ホモロジーの加群構造については, 例えばTailleferによって標数0の体上のtruncated quiver algebraの巡回ホモロジーの加群構造が得られている.
本講演では, 正標数の体上のtruncated quiver algebraの巡回ホモロジーについて述べる. また, truncated quiver algebraのホッホシルトホモロジーの加群構造を利用して得られた, ホッホシルトホモロジー次元が無限大となる多元環のクラスについて述べる.
- 第10回
- 日時 2014年11月17日 (月) 14:30-17:45
- 会場 東京理科大学神楽坂キャンパス1号館111
- 14:30-16:00
- 講演者 Laurentiu Paunescu (シドニー大学)
- タイトル Directional Homeomorphisms
- 概要 In this elementary talk I will describe several directional objects associated to a set, both local and global,
and introduce the sequence selection property of a set, SSP for short.
After this we investigate under which supplementary conditions the SSP property is preserved.
- 16:15-17:45
- 講演者 毛利 出(静岡大学)
- タイトル Finiteness condition (Fg) for selfinjective Koszul algebras
- 概要
群環や完全交叉環の研究においてsupport varietyが重要な役割を担いますが、もっと一般の環でもsupport varietyの理論がうまく機能するようにSnashallとSolbergによって考案され た条件がHochschild cohomology環におけるfiniteness condition (Fg)です。
講演者の研究分野である非可換代数幾何学は代数幾何学を用いて非可換環を研究する分野といえます。ここではcomplexityの小さいselfinjective Koszul algebraが代数多様 体Eとそれ上の自己同型\sigmaの組によって記述される(そのような環は講演者によってcogeometricと名づけられました)ことを利用して、「cogeometric selfinjective Koszul algebra A^!(E, \sigma)が(Fg)を 満たす必要充分条件は\sigmaの位数が有限であることである」という予想を立てました。
この講演では上記の予想が成り立ついくつかのケースについて紹介します。(2014年4月14日 (月)の小原大樹さんのセミナー講演と 大いに関係があると思われます。)特に非可換代数幾何学に関連する部分は定義と例を中心に初歩から解説しますので、関心をもった学生は是非この研究課題に参画してほしいと思います。
- 第9回
- 日時 2014年11月13日 (木) 16:30-18:00
- 会場 東京理科大学神楽坂キャンパス1号館111
- 講演者 許斐 豊(学習院大学)
- タイトル 2面体拡大とL-関数の特殊値について
- 概要 岩澤主予想に関連し,
総実代数体上の有限次総虚Abel拡大体の整数環のあるエタールコホモロジー群と
L関数の負の整数における特殊値には密接な関係があることが知られている.
しかし, 非Abel拡大の場合には, このような関係は明示的に述べられていないように思われる.
そこで, 本講演では2面体拡大に関しても同様の関係が成り立つことについて述べる.
- 第8回
- 日時 2014年10月23日 (木) 16:15-18:15
- 会場 東京理科大学神楽坂キャンパス1号館111
- 講演者 黒沢 健(東京理科大学理学部)
- タイトル Mahler関数の代数点における超越性について(入門)
- 概要 第一部として, 超越数論に関する基礎的な事項について入門的に紹介する. 実代数的数の有理近似に関するDirichletの定理やRothの定理から導き出される無理数や超越数に関して簡単に説明を行う.これに関連して代数的数の基本不等式について説明する.
第二部として, Mahler関数理論を使った超越性の判定定理などの紹介を行い, 具体的な値の超越性について紹介を行う. ただし, 講演は超越性に限り, Mahler関数理論における代数的独立性に関しては講演では触れない.
- 第7回
- 日時 2014年7月24日 (木) 16:30-18:00
- 会場 東京理科大学神楽坂キャンパス8号館833
- 講演者 木村 巌(富山大学)
- タイトル 重さ1のモジュラー形式に伴うGalois表現の計算
- 概要 重さ1のモジュラー形式(Hecke固有形式)に対して,
有理数体のGalois群の2次元複素Artin表現が対応することはDeligne-Serre(1974)以来よく知られている.
M. Koike (1976)により,この表現はfと法lで合同な重さ2のHecke固有形式に伴う法l表現を経由して構成できることが示されている.
後者を計算するEdixhoven-Couveignesのアルゴリズムを用いて,問題の2次元複素Artin表現の計算が可能か,またその計算量の評価を考える.
- 第6回
- 日時 2014年6月26日 (木) 16:30-18:00
- 会場 東京理科大学神楽坂キャンパス8号館845
- 講演者 Alan Filipin (University of Zagreb)
- タイトル The problem of Diophantine m-tuples
- 概要 Diophantine m-tuple is the set of m positive integers such that
the product of any two of them increased by 1 is a perfect square. There
is a folklore Conjecture that there does not exist a Diophantine m-tuple.
In this talk we will present the history of the problem and also show the
newest methods used in proving this Conjecture which enabled the
significant improvements of some known results in recent years.
- 第5回
- 日時 2014年4月14日 (月) 15:00-17:15
- 会場 東京理科大学森戸記念館第一会議室
- 15:00-16:00
- 講演者 川島正行(東京理科大学理学部)
- タイトル 平面曲線とその位相不変量
- 概要 与えられた平面曲線たちの違いを複数の位相不変量を比べることによって考察する.
本講演では曲線の不変量には何が影響しているのかに焦点をあてて,
基本群やAlexander多項式、Zariski対の存在ついて入門的に紹介したいと思います.
また難波・土橋アレンジメントに対する特性多様体についても述べたいと思います
- 16:15-17:15
- 講演者 小原大樹 (東京理科大学理学部)
- タイトル Hochschildコホモロジー群の性質とHappelの問題について
- 概要 Hochschildコホモロジー群・環の定義・性質と
それに関しての主な問題の紹介をしたあと,
Happelの問題の反例になる多元環 k < x,y > / < x^2,y^2,xy-qyx >
を例にHochschildコホモロジー群・環を定義から計算する手順を紹介する.