神楽坂代数セミナーの記録 (2016年度)
- 第29回
- 2017年1月13日(金) 14:30-17:00
- 会場 東京理科大学森戸記念館第1会議室
- 14:30-15:10 講演者 島倉雅光
- タイトル 代数的トーラスから引き起こされるクンマー拡大の分岐について
- 概要 素数次Kummer拡大での素イデアルの分岐はHeckeの定理により記述できる.
本講演では代数的トーラスの素数次同種写像から得られるKummer拡大の場合に
この定理を拡張できたのでそれを紹介する.
応用として, 与えられた導手をもつ局所体の巡回拡大の同型を除いた個数も決定できる.
- 15:20-16:00 講演者 石岡大樹
- タイトル Scott加群のBrauer直既約性について
- 概要 有限群のp-部分群 Pが可換であるような場合について, P 上の fusion systemがsaturatedであることと,
Pに関するScott加群がBrauer直既約であることが同値となることが知られている.
本講演では,Pが可換とは限らない一般の場合について,
Scott加群がBrauer直既約となるための条件について考察する.
また,Pが非可換な場合に,Scott加群がBrauer直既約となる具体例を与える.
- 16:10-16:50 講演者 鯉江秀行
- タイトル 自己入射中山多元環に対するHochschild拡大環の箙表示
- 概要 本研究は東京理科大学の板垣智洋氏、眞田克典氏との共同研究に基づくものである。
Hochschild拡大とは、1945年にHochschildによって導入された環拡大であり、特殊な例としてはtrivial extensionがある。Fern\’andesとPlatzeckによってtrivial extensionに対する箙表示と関係式は既に決定しているが、Hochschild拡大については今のところほとんど研究されていない。本講演では、Sk\”oldbergおよびCibilsの射影分解を使用し、Hochschild homology から2-cocycle を構成することで自己入射中山多元環に対するHochschild拡大環の箙表示について考察する。
- 第28回
- 2017年1月12日(木)14:30-16:00
- 会場 東京理科大学神楽坂キャンパス2号館2階232教室
- 講演者 青木美穗氏(島根大学)
- タイトル アーベル数体の組の類数の可除性について
- 概要
\( p \equiv 5 \pmod 8 \) をみたす素数\( p \)に対し, \( \zeta \)を1の原始\(p \)乗根とする.
\( Q (\zeta )/ Q \)の中間体で\(Q\)上\( (p-1)/4 \) 次拡大であるものを\(F \)とおく.
この講演では, \( F(\sqrt{D})\) と\( F(\sqrt{pD}) \) (\(D \)は負の整数)の形の
虚アーベル数体の組で類数が\(p \)で割れる\( (p-1)/2 \)次体の構成法について話す.
ここで\(D\) は実二次体\( Q(\sqrt{p}) \) の基本単数から作られる
線形回帰数列を用いて具体的に書ける.
例えば\( p=5 \) の場合は,\( D=2-F_n \) (\( F_n \)はFibonacci数)である.
この研究は, 愛知教育大学の岸康弘氏との共同研究である.
- 第27回
- 2016年12月17日(土) 15:00 - 17:15
- 会場 東京理科大学神楽坂キャンパス2号館2階223教室
- 講演者 源泰幸氏(大阪府立大学)
- 15:00-16:00 タイトル 米田代数に入るマッセイ積とその応用 1/2
- 概要 米田代数Ext(M, M)の元は完全列と対応していて、積は二つの元に対応する完全列をつなげる操作に対応していることは良く知られています。
一方、米田代数は積以外にも高次マッセイ積やA無限大積という高次の積と総称される構造を持ちます。
今回は高次マッセイ積が完全列の言葉で記述する方法を説明します。
- 16:15-17:15 タイトル 米田代数に入るマッセイ積とその応用 2/2
- 概要 次数代数 A = k + A_{1} + ・・・ 上の米田代数Ext(k, k) は0次と1次の元から(行列)高次マッセイ積により生成されるという定理がGugenheim-Mayにより示されています。
彼らはEilenberg-Moore スペクトル系列の計算からこの定理を導いていますが、一回目の講演の結果を用いて納得できる証明を与えることが出来ます。
この定理を用いた(N-)Koszul代数の特徴づけも紹介したいと思います。
- 第26回
- 2016年11月10日(木) 16:15-17:45
- 会場 東京理科大学神楽坂キャンパス3号館4階 344教室
- 講演者 山岸正和氏(名古屋工業大学)
- タイトル チェビシェフ多項式の数論
- 概要
古典的直交多項式の一つであるチェビシェフ多項式は、円分多項式と関係があること、
特殊値としてフィボナッチ数列が得られることなどから、数論的にも大変興味深い多項式です。
本講演では、チェビシェフ多項式の数論的性質がグラフのラプラシアンの研究に応用できることを紹介します。
- 第25回
- 2016年10月27日(木) 16:30-18:00
- 会場 東京理科大学神楽坂キャンパス2号館3階 234教室
- 講演者 落合翼氏(学習院大学)
- タイトル 「手紙数」の紹介
- 概要
古典的な整数論の問題に、合同数の問題がある。
合同数の問題の面白さは、その素朴さや楕円曲線との関連性にある。
また合同数には、その拡張概念がいくつか考えられてきた。
本講演では、講演者が新たに定義した「手紙数」というものをご紹介したい。
- 第24回
- 2016年6月24日(金) 15:00-17:50
- 会場 東京理科大学神楽坂キャンパス2号館2階 221教室
- 15:00-15:50
- 講演者 浅芝秀人氏(静岡大学)
- タイトル Coverings of algebras using smash products and their module categories
- 概要
まず古典的なbound quiver (Q, I) のcovering F: (Q’, I’) --> (Q, I) を概観し,そのガロア群Aut(F)を定義する。次に,Gを群とするとき,G-graded category B, BとGのsmash product B#G, bound quiver (Q, I) のG-weightとそれが誘導するk(Q, I)のG-gradingを紹介し,k(Q, I)#Gのquiver presentationの計算法を説明する。
以上のことをG = Aut(F)とFから自然に定義される(Q, I)のG-weightに適用して,標準的なG-covering k(Q, I)#G --> k(Q, I)がFのlinearlization kFと同型となることを示す。これによって,smash productによるcoveringが古典的なcoveringを拡張したものであることがわかる。また,(Q’, I’)の計算法も得られる。最後に,k(Q, I)#Gとk(Q, I)のmodule categoriesの関係について述べる。
- 16:00-16:50
- 講演者 浅芝秀人氏(静岡大学)
- タイトル Covering theory for bimodules
- 概要 Gを群としG作用を持つcategories R, SとG-graded categories A, Bを考える。S-R-bimodule Mに対してG-invariantという概念を定義し,B-A-bimoduleに対して,G-gradedという概念を定義する。それらのcategoriesをそれぞれS-(Mod^G)-R, B-(Mod_G)-A で表す。G-invariant S-R-bimodule Mに対して,orbit bimodule M/G, G-graded B-A-bimodule Mに対して,smash product M#Gを定義する。これらの構成がfunctor (-)/G: S-(Mod^G)-R --> S/G-(Mod_G)-R/Gとfunctor (-)#G: B-(Mod_G)-A --> B#G-(Mod^G)-A#Gに拡張され,互いにquasi-inverseであることを示すことができる。ただし,A=R/G, B=S/Gに適用し, G-作用をもつ圏としての同値 A#G ~ R, B#G ~ Sでこれらを同一視する。これにより,stable equivalences of Morita type, standard derived equivalences, singular equivalences of Morita typeがcoveringの設定で,引き下げたり持ち上げたりできるようになる。
- 17:00-17:50
- 講演者 浅芝秀人氏(静岡大学),吉脇理雄氏(静岡大学), 中島健氏(静岡大学)
- タイトル 加群の分解論(Kronecker algebraを例として)
- 概要
多元環上の有限次元加群に対して,それを実際に分解することなく,その直既約分解の中にどの直既約因子が何個含まれているのかを計算する一般的な方法を与える。これはちょうどJordan標準形におけるJordan blockの個数を与える公式の一般化になっている。1つの応用としてこの方法をcommutative ladderとよばれるbound quiverに適用すると,位相的データ解析におけるpersistence modulesのpersistence diagramの1つの計算法が得られる(これは東北大学の平岡氏を代表者とするCREST研究に応用される)。講演では,この方法を特に,無限表現型の最も簡単な例と見られるKronecker algebraに適用して,その計算法を与え,計算機にプログラムして計算例を紹介する。この具体的計算法は,東京大学の岩田氏を代表者とするCREST研究にも直接応用できる可能性がある。