神楽坂代数セミナーの記録 (2024年度)
第72回
- 日時 2025年3月13日(木)15:00-16:30
- 会場 東京理科大学神楽坂キャンパス 8号館 3階 832室
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- 講演者 Leo Margolis (Universidad Autonoma de Madrid)
- タイトル The Prime Graph Question for units in integral group rings
- 概要
The unit group of the integral group ring ZG of a finite group G is a long studied object, but nevertheless many fundamental questions remain open. Concerning the elements of finite order, one could wonder if the existence of a unit of augmentation 1 which has order n implies that also G contains an element of order n. While this is known since the 1960’s in case n is a prime power, it remains open even for the case when n is the product of two different primes and is known in this case as the Prime Graph Question. While this is a weak variation of many other open questions concerning the unit group of ZG, it has the advantage of admitting a reduction to finite simple groups - thus giving hope a positive solution might be possible.
I will explain a method developed to study the question based on character theory and modular representation theory. It is especially powerful, when a Sylow p-subgroup of G is cyclic, where p is a prime dividing n, though seems useless when p equals 2. Recently we showed how it still can be applied in this situation by considering reductions modulo 4 instead of modulo 2, in some situations when the Sylow 2-subgroup is a Klein four group or dihedral of order 8.
This is joint work with Florian Eisele.
第71回
- 日時 2025年1月16日(木)13:00-14:30
- 会場 東京理科大学神楽坂キャンパス 8号館 4階 343室
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- 講演者 足立大雅(九州大学)
- タイトル Iwasawa theory for weighted graphs and discrete-time quantum walks in graphs
- 概要
近年, Vallières らによって, グラフ理論における岩澤理論的現象の研究が発展している. 整数論における, 代数体の(Z_p)^d-拡大塔に沿った類数の漸近挙動を記述する岩澤型公式の類似として, グラフ理論では, (Z_p)^d-被覆塔におけるグラフの全域木の数の漸近挙動が DuBose–Vallières, Kleine–Müller により記述されている. これまで, グラフの岩澤理論の研究は自明な重みを持つグラフに対して行われてきたが, 今回荷重グラフへと理論を拡張することに成功した. 本講演では, 岩澤類数公式, 木田の公式の荷重グラフ類似を述べ, 最後にグラフにおける離散時間量子ウォークの遷移行列の固有多項式に関する漸近挙動について説明する. 本研究は, 舘野荘平氏(名古屋大学), 水野宏亮氏(名古屋大学) との共同研究である.
第70回
- 日時 2024年12月5日(木)14:40-16:10
- 会場 東京理科大学神楽坂キャンパス 8号館 3階 831室
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- 講演者 甲斐亘(東北大学)
- タイトル 数体の素元に現れる線形パターン
- 概要
講演者は2020年の論文で、素数のなす等差数列についてのGreen-Taoの定理を、数体一般に拡張しました(見村万佐人、宗政昭弘、関真一朗、吉野聖人との共著)。数体Kの整数環を O_Kと書くと、上の定理は或る具体的な形の有限個の O_K係数2変数1次式が同時に素元値をとる、という形に定式化できます。これをもっと一般の1次式(ただし2変数以上)に拡張できたのでお話しします。有理整数Zの場合は Green-Tao-Zieglerの2012年の結果です。扱える1次式が増えたおかげで、数体上の多様体の有理点問題に応用があります。
第69回
- 日時 2024年11月29日(金)14:40-16:10
- 会場 東京理科大学神楽坂キャンパス 8号館 4階 841室
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- 講演者 沖泰裕(北海道大学)
- タイトル On the Hasse norm principle for extensions of degree pl with p≠l
- 概要
Hasseノルム原理は,代数体の有限次拡大の大域的なノルム写像と局所的なノルム写像との「ずれ」を測るものであり,代数的整数論における古典的な問題の1つとして知られている. 1931年のHasseの研究により, Hasseノルム原理は成立する場合とそうでない場合のいずれも存在することが知られている.そこで, dを正整数とするとき,次数dの拡大に対してHasseノルム原理が成り立つための必要十分条件は何か,という問題を考える.この問題は, dが素数またはBartelsによって,dが素数の2乗または6のときはDrakokhrust-Platonovによって, dが16以下のときは星-金井-山﨑によって解決されている.しかし,その他の場合については未解決である。本講演では, dが2つの相異なる素数の積のとき,次数dの拡大に対するHasseノルム原理が成立するための必要十分条件について考察する.
第68回
- 日時 2024年10月31日(木)15:30-16:30, 11月1日(金)15:30-16:30、16:40-17:40
- 会場 東京理科大学葛飾キャンパス 講義棟 6階 611教室
- 注意 教室予約の都合上、今回は【葛飾キャンパスで対面・zoom 併用でのハイフレックスで開催】
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- 講演者 埴原紀宏(九州大学)
- タイトル Cluster categories and singularity categories
- 概要
本講演では有限次元代数と可換Gorenstein環のCohen-Macaulay表現論を扱います。これらの表現論において最も基本的な対象は、有限表現型の環であるDynkin箙の道代数および単純特異点(ADE特異点)です。異なる出自をもつこれらの表現圏ですが、有限次元代数のクラスター圏、また可換環の特異圏というCalabi-Yau三角圏を通して両者は自然に結びつきます。今回は基本的な例の計算や紹介からはじめて、知られている結果を概説し、クラスター圏と特異圏の三角同値を与える一般的な手法と応用について説明します。本講演の内容は伊山修氏との共同研究に基づきます。
第67回
- 日時 2024年10月3日(木)14:00-15:30
- 会場 東京理科大学神楽坂キャンパス 8号館 4階 843室
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- 講演者 白石伝助(東京理科大学)
- タイトル l進ガロアポリログとその関数等式について
- 概要
従来のポリログとは、3点抜き射影直線上の道に沿った反復積分として定義される対象であり、形式的KZ方程式の基本解を記述する特殊関数であった。一方で、2000年頃にWojtkowiakは、任意の素数lに対して、l進反復積分を導入し、ポリログのl進ガロア類似物であるl進ガロアポリログを定義した。これは3点抜き射影直線の副lエタール基本亜群への基礎体の絶対ガロア群の作用を記述するl進特殊関数である。さて、ポリログの関数等式の研究は18世紀のEulerやLanden等の研究に始まる長い歴史があり、現在に至るまで数多くの関数等式が知られている。一方で、l進ガロアポリログの関数等式については、中村博昭-Wojtkowiakの共同研究によりいくつかの典型的な関数等式が導出されていたが、そのリストの追加が課題とされていた。本講演では、l進ガロアポリログの関数等式について講演者が得た結果を紹介する。
第66回
- 日時 2024年8月23日(金)13:30-15:00
- 会場 東京理科大学神楽坂キャンパス 2号館 2階 221室
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- 講演者 Cindy Tsang(お茶の水女子大学)
- タイトル ホップ・ガロア理論における skew brace の応用について
- 概要
Skew brace はヤン・バクスター方程式の集合論的解を研究するために導入された代数的構造であるが,置換群の理論やホップ・ガロア理論にも応用があることが知られている.本講演では,skew brace の基本事項を述べた後,skew brace とホップ・ガロア構造の関連性を説明する.その応用として,skew brace の左イデアルを計算することで,ホップ・ガロア対応の全射性を調べることができる.最後には,この手法を用いて得られた研究成果を紹介する.主定理は Lorenzo Stefanello 氏との共同研究に基づく.
第65回
- 日時 2024年6月19日(水)14:40-16:00
- 会場 東京理科大学神楽坂キャンパス 3号舘 4階 343室
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- 講演者 熱田真大(東京理科大学)
- タイトル 総実代数体上の G_m の p 進 L 関数とオイラー系について
- 概要
古典的な有理数体上の岩澤理論に登場する Kubota-Leopoldt の p 進 L 関数には、
いくつかの構成方法が知られており、その中の一つに円単数と Coleman 写像を用いるものがある。
これは大雑把にいうと、円単数のなすオイラー系の Coleman 写像による像が p 進 L 関数になっていることを主張している。
一方で、一般の総実代数体上の岩澤理論にも、 Kubota-Leopoldt の p 進 L 関数の一般化である Deligne-Ribet の p 進 L 関数が
存在するが、上述のようなオイラー系と Coleman 写像を用いた構成方法は知られていない。その原因は円単数の一般化にあたるオイラー系の存在が予想はされているが、未解決だからである(Rubin-Stark 予想、より一般には Burns-栗原-佐野予想)。
本講演では、上述のアイデアを逆手に取り、逆に Deligne-Ribet の p 進 L 関数から、オイラー系が構成できることを解説する。さらに、p 進 L 関数に関する幾つかの予想の下で、構成したオイラー系が Rubin-Stark 予想、Burns-栗原-佐野予想の主張するオイラー系と一致することが示せることもお話しする。本研究は臺信直人氏(慶應義塾大学)、片岡武典氏(東京理科大学)との共同研究である。
第64回
- 日時 2024年6月13日(木)14:40-15:40
- 会場 東京理科大学神楽坂キャンパス 3号舘 4階 343室
キャンパスマップ
- 講演者 川村花道(東京理科大学)
- タイトル Tour on dualities of multiple zeta values and its variants
- 概要
多重ゼータ値と呼ばれる実数の族は「双対性」と呼ばれる簡明な関係式を満たす。多重ゼータ値には様々な変種があり、その中でも「有限」ならびに「対称」と形容詞のつくものにはHoffman双対性という類似の性質が成り立つ。
本講演では、それらの概説を行い、実多重ゼータ値における双対性の変数付き持ち上げおよびその「有限」類似にも触れる。その上で、「対称」の設定における同定理の一般化を行った講演者の研究を紹介する。
第63回
- 日時 2024年5月23日(木)14:40-16:10
- 会場 東京理科大学神楽坂キャンパス 3号舘 4階 343室
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- 講演者 大井雅雄(京都大学)
- タイトル Note on local factors of representations of classical groups
- 概要
局所Langlands予想によれば,p進簡約群の表現はp進体のGalois表現と自然に対応付くと期待される(局所Langlands対応).この局所Langlands対応の「自然」性には様々なものが含まれるが,その一つには,大域的なL関数の局所成分である「局所因子」と呼ばれる表現論的不変量を保存するという性質が挙げられる.2013年のArthurの仕事により,p進体上の古典群に対する局所Langlands対応が構成されたが,Arthurの対応は局所因子とはアプリオリには無関係な特徴付けに立脚しており,局所因子を保つかは明らかではない.実際には局所因子はArthurの対応で保存されており,それは「well-known to experts」な事実として専門家の間では周知されているようであるが,その細部についてまとまった文献はない(講演者調べ).そこで本講演では,そもそも古典群の表現の局所因子とは何であるか,というところから始め,Arthurの局所Langlands対応が局所因子を保つという事実の証明についてお話ししたい.本講演の内容はUC BerkeleyのSug Woo Shin氏との共同研究に基づく.
第62回
- 日時 2024年4月19日(金)15:30-17:00
- 会場 東京理科大学神楽坂キャンパス 森戸記念館 第2フォーラム
- 講演者 平前直也 (京都大学)
- タイトル 一般対称群の群代数の\( \tau \)-傾有限性について
- 概要
\( \tau \)-傾有限な代数はDemonet-伊山-Jassoによって導入された新たな有限次元代数のクラスであり,近年さまざまな有限次元代数に対して\( \tau \)-傾有限性が議論されている.有限群のモジュラー表現論に関する結果のひとつとして,群代数のtameなブロックはすべて\( \tau \)-傾有限であることがEisele-Janssens-Raedscheldersによって示された.そこで,ブロックの表現型が不足群の言葉で分類できるという古典的な結果の類似として,ブロックの\( \tau \)-傾有限性を不足群などの言葉で記述できないかという自然な問題が生じる.講演者は,一般対称群の群代数が\( \tau \)-傾有限になるための条件を与えることで,この問題を部分的に解決した.本講演では,\( \tau \)-傾有限な(あるいは\( \tau \)-傾無限な)群代数やブロックの例を紹介した後,一般対称群の群代数の\( \tau \)-傾有限性について説明する.