5.Biot-Savartの法則とAmpere-Maxwellの法則


Biot-Savartの法則からAmpere-Maxwellの法則は導けるか?

 Biot-Savartの法則からAmpere-Maxwellの法則が導けると主張する教科書なども存在するようであるが、本当にそれが可能であろうか?
そこで、実際に導出を試みてみる。Biot-Savartの法則のrotaionをとって計算してみると、

 一見すると導かれているように見える。本当にこれでよいのであろうか?


 さて、ここで確認しておかなければならないことはBiot-Savartの法則は定常電流が流れている場合に成立するものであり、一般的に非定常電流が流れている場合には成立しないということである。したがって、式で用いている電流も定常電流である。それに対して、導き出そうとしているAmpere-Maxwellの法則は定常電流が流れている場合だけでなく、非定常電流が流れている場合にも成立する一般的な法則である。
 
 そのことだけでも導けないことは明らかだが、前に示した階層化の表を使ってもう少し詳しく考えてみる。
 式の下線で示したところではCoulombの法則を使用している。しかし、Coulombの法則はρがlinearがconstant(Semistatic)という状況までしか成立しない。つまり、非定常電流が流れている場合にはこの変形は不可能ということになる。
 
 このように、限定的な状況でしか成立しないBiot-Savartの法則から一般的に成立するAmpere-Maxwellの法則は導かれたりしないのである。 


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