総合研究院 合成生物学研究部門

東京理科大学 総合研究院 合成生物学研究部門 Change the world. Save the earth.

コンセプト

東京理科大学の理学部、基礎工学部、理工学部、薬学部、生命医科学研究所の生物学分野の研究者が中心になり分野・組織横断的に集結した合成生物学研究部門は、「生物種を超えたハイブリッド細胞を創成する」という明確な目標達成に向けて研究を推進します。

本部門は、生物学分野の優れた研究者が在籍する理科大の強みを最大限に活かします。生物学の最先端技術を共有することで、ブレークスルー技術を生み出すシナジー効果を得ることが期待できます。

合成生物学は人工細胞やDNA合成を通じて生命の動作原理を解明する学問です。イヌ、ネコなどのペット動物、花屋で売られているランなどの園芸作物、ラバ、ニワトリなどの家畜、コムギや果物などの農作物の複数種は、近縁種交雑による雑種です。人類は太古の昔から、ゲノム交雑やゲノム移植を意識せずに、ハイブリッド生物を創り活用してきました。

現在の技術革新により、近縁種以外のゲノム交雑やゲノム移植も可能になりました。この新しいバイオテクノロジーからフロンティア領域を生み出すべく、優れた生物学者が集う本学の強みを活かして部門研究を推進します。

我々研究者は、倫理的・法的・社会的影響(Ethical,Legal and Social Issues: ELSI)を常に認識して、研究を慎重に進めていく必要があります。科学的興味を持ちながらも、ELSIを重視し「何のために、何を知りたいか?」を常に意識しながら研究を展開します。将来の有用物質生産技術や医療技術への展開を視野に入れ、安全対策を十分に施したゲノム移植技術の確立を目指し、次の3つの研究課題を推進します。

戦略1 植物ゲノム移植

植物ゲノム中には、光合成モジュール・色素モジュール・漢方薬原料を生産する代謝経路モジュールなど、動物ゲノムにはないゲノムモジュールがあります。これらの植物ゲノムモジュールを動物ゲノムに移植することで、動物細胞に新機能を付与することを目指します。

戦略2 近縁種ゲノム移植

近縁種であっても、普通の交雑法では「種の障壁」があり、生物間のゲノム交雑は多くの種間で難しい状況です。そこでゲノム工学や細胞融合により、有用物質生産を可能にする子嚢菌ハイブリッド細胞の創成を目指します。

戦略3 創薬・医療に繋がる細胞創成グループ

ヒト型のタンパク質複合体を発現する酵母の作成や幹細胞研究を通じて、創薬や医療研究に資する細胞を創成します。新機能を付与した細胞の、発現解析やエピゲノム解析を通じて、安心・安全に創薬・医療技術に応用できる技術開発を目指します。

本部門を通じて、微生物学、植物学、動物学、医科学に細分化された生物学分野が融合して、生命の基本動作原理を解明することが可能になります。また、創薬・再生医療技術開発、高機能・有用生理物質生産などを通じて社会に貢献することが期待されます。

部門長挨拶

東京理科大学生命医科学研究所、免疫生物学研究部門 教授 伊川 友活

部門長:伊川 友活(Tomokatsu Ikawa, Ph.D.)

京都工芸繊維大学工芸学部卒業、京都大学大学院医学研究科修了、医学博士取得(桂義元教授)後、カリフォルニア大学サンディエゴ校(Cornelis Murre教授)へ留学。理化学研究所免疫・アレルギー科学総合研究センター研究員(河本宏チームリーダー)。

2012年同上級研究員(Young Chief Investigator)。2018年東京理科大学生命医科学研究所、免疫生物学研究部門准教授。2019年同教授。

国内外連携へと広がる合成生物学研究拠点形成を目指して

バイオテクノロジーの進歩により、遺伝子を合成すること、タンパク質を設計すること、そして細胞を創ることが可能になりました。まさしく生命を創る段階に、我々人類は到達したと言えます。

フロンティア精神を発揮して、細胞を創るプロジェクトを立ち上げたい!と夢いっぱいの提案をしたところ、素晴らしい有志の方々が集まってくれました。それが、この合成生物学研究部門です。これから、この途方もない前人未到のプロジェクトに我々は全身全霊でチャレンジします。このチャレンジを応援して頂ければ幸いです。

本研究部門が国内外の合成生物学研究者と共同研究・情報共有・技術交流のプラットホームになるべく、研究を盛り上げていきたいと思います。