このように、V型ATPアーゼは細胞内器官や破骨細胞外のpHを酸性に保つために 重要な役割を担っています。この酸性pHは、実は細胞内器官でのコレステロール代謝や 老廃物の蓄積や、自己消化などに、また破骨細胞による骨組織破壊に密接に関わっています。 しかも、こうした細胞内器官の働きや破骨細胞の働きの異常が、実は動脈硬化や骨粗鬆症 に関係してくるのです。そのため、この酸性化の機構とpH調節機構は各種の疾病に 重要な関わりを持ち、研究が盛んです。その中で中心的な役割を担っているのがV型 ATPアーゼであり、このATPアーゼについての研究も重要と考えられています。
私達が見いだしたナトリウムイオン輸送性ATPアーゼは、真性細菌に初めて報告された
V型ATPアーゼです。遺伝子のクローニングにより、大量発現・精製が可能となっています。
そこで、私達のATPアーゼの生化学的・分子生物学的研究により、V型ATPアーゼ一般の
諸性質について深い理解が得られるものと期待しています。