腸内連鎖球菌はグラム陽性菌です。高塩、高pHでも生育できます。それは、
細胞膜にナトリウムイオンを排出するATPアーゼがあるからです。
しかも、このATPアーゼは真核細胞によく見いだされていたV(液胞)型
のATPアーゼで、真性細菌では私達が初めて見つけだしたのです。
細胞の内外のイオン環境の恒常性維持は、生きとし生けるものにとって不可欠
です。その恒常性維持においては、生体膜に存在するイオン輸送性タンパク質、特にイオン輸送性
ATPアーゼが重要な役割を担っています。イオン輸送性ATPアーゼには3種のもの,
細胞膜に主にあるP型ATPアーゼ、ミトコンドリアや細菌細胞膜などにあるF型ATPアーゼ、
真核細胞の細胞内器官の膜に主にあるV型ATPアーゼが知られています。F型とV型
は非常によく似ています。F型ATPアーゼはミトコンドリアなどでの基質の酸化のエネルギー
を使ったり、葉緑体で光のエネルギーを使ったりして、ATPを合成するのに働いています。
一方、V型ATPアーゼは逆にATPのエネルギーを使って各種細胞内器官にプロトンを
運び込むために働いています。このように、V型ATPアーゼは細胞内器官や破骨細胞外のpHを酸性に保つために 重要な役割を担っています。この酸性pHは、実は細胞内器官でのコレステロール代謝や 老廃物の蓄積や、自己消化などに、また破骨細胞による骨組織破壊に密接に関わっています。 しかも、こうした細胞内器官の働きや破骨細胞の働きの異常が、実は動脈硬化や骨粗鬆症 に関係してくるのです。そのため、この酸性化の機構とpH調節機構は各種の疾病に 重要な関わりを持ち、研究が盛んです。その中で中心的な役割を担っているのがV型 ATPアーゼであり、このATPアーゼについての研究も重要と考えられています。
私達が見いだしたナトリウムイオン輸送性ATPアーゼは、真性細菌に初めて報告された
V型ATPアーゼです。遺伝子のクローニングにより、大量発現・精製が可能となっています。
そこで、私達のATPアーゼの生化学的・分子生物学的研究により、V型ATPアーゼ一般の
諸性質について深い理解が得られるものと期待しています。
これまでの成果
今後の展開
"研究紹介"のホームページに戻る
山登研ホームページ