2000年度 修士論文要旨


タンパク質立体構造形成原理の研究

安藤 格士

 現在、DNA塩基配列解読数は指数関数的に増加している。タンパク質は特定の立体構造をとる ことにより、その機能を発揮する。生命現象を理解するためには、タンパク質機能の網羅的な 予測が必要であり、そのためにもアミノ酸配列からの立体構造予測法の確立が重要と考えられる。 また、第一原理からの立体構造形成原理を理解することにより、タンパク質のde novo設計への道 が開かれる。 タンパク質の立体構造は非共有結合性相互作用が複雑に絡み合い維持されており、 個々のアミノ酸残基が安定性にどのような機構により、どの程度寄与しているのかを評価するこ とが重要である。これまでも一般的なタンパク質を用いた多くの研究があるが、今回、定量的な 解析を行ないやすいと考えられるモデルペプチドを用いた研究を行なった。

 ββα構造をもつとされる28残基ペプチドに相応なDNAを合成し、封入体を形成するタンパク 質であるadenylate kinase遺伝子に融合させ、大腸菌において発現させた。1 L培養当たり約20 mg もの大量精製が可能であった。次に、このペプチドのNMRによる構造解析を行なった。DQF-COSY、 TOCSY、NOESYの各種二次元NMRを測定し、構造計算を行なった結果、報告されているものとほぼ 同様のββα構造をしていることを確認した。そこでその構造を基に変異体を13種作製し、その 全てについてNMRとCDを用いて構造的特徴と熱安定性の解析を行なった。タンパク質立体構造安 定化因子として、これまでいくつか挙げられているが、今回特に注目したのは、分子内部の疎水 相互作用、芳香環同士の相互作用、ターン部分の配列などである。期待通り疎水相互作用強化に より安定化された。また、これまであまり注目されていなかったターン部分について、統計的に β-ターンを取りやすい配列に変えた変異体においては、α/βの両二次構造がより強く形成され ることがわかった。以上、本モデル系は、タンパク質立体構造形成原理の詳細な研究に有用であ ると考えられた。

 さらに、本研究では分子動力学シミュレーションの結果も合わせて議論し、ペプチドの構造形成 における各アミノ酸の構造安定性に及ぼす寄与を定量的に把握することができた。


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