2004年度 修士論文要旨


アルツハイマー関連ペプチドAmyloid-b (25-35)と糖脂質ガングリオシド(GM1)との相互作用

青柳 亮介

 現在、老年期痴呆症であるアルツハイマー病の原因として有力視されているのは、 アミロイドβペプチド(Ab)で、このAbがアミロイド繊維を形成することにより神経毒性 を発揮し、アルツハイマー病の原因となるという説が提唱されている。Ab研究において さまざまな断片ペプチドが取り扱われているが、本研究では、神経毒性を発揮する最小 の領域として知られる、Ab部分ペプチド(25-35)を用いた。そして、生体内の脳細胞に存在し アミロイド形成に関与しているといわれる糖脂質ガングリオシド、中でも特にGM1と Ab(25-35)の相互作用について、NMRを用いてその結合部位の詳細な解析を行うことを目的とした。

 試料としてAbのみの溶液と、AbとGM1の混合溶液を用いた。Ab試料は、pH 3.0、10 mMリン酸 緩衝液に溶解し0.5 mMの濃度に調製した。AbとGM1の混合溶液は、同じくpH 3.0、10 mMリン酸 緩衝液に溶解しAb試料を0.5 mMに、GM1の濃度を0.05 mM、0.025 mMに調製し、最終的な濃度比が それぞれAb:GM1=10:1、20:1になるようにした。それぞれの試料についてNMR測定を行った。

 その結果、試料によりシグナルが変化することが観測できた。GM1のスペクトルは非常にブロード であるのでAbのシグナルの変化を解析することにした。Abのみのシグナルは非常にシャープであるが 混合試料ではGM1の濃度が高くなるにしたがって、ブロードになっていった。

 Abは凝集しやすく、試料濃度も低いことから、当初、鮮明なシグナルを得られず、詳細な相互 作用部位の特定が困難であった。そこで、pH 3.0にし、Ab溶解後フィルターを通し試料を調製し たところ、鮮明なシグナルを得ることができた。このことからAbは溶解する際に核を作り凝集す ることが明らかになった。また、GM1のスペクトルが非常にブロードであったことから今回の測定 条件では見かけ上の分子量が大きい状態で存在することが分かり、膜状態で存在するのではないか と推論した。また、いくつかのNMRシグナルの変化の解析からAbペプチドとGM1が強い相互作用をし ていることが分かった。そして、GM1の濃度変化によってAbの特徴的なシグナル変化が現れた部位が あり、この部分が相互作用に関係がある部位なのではないかと推論した。


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