青柳 亮介
試料としてAbのみの溶液と、AbとGM1の混合溶液を用いた。Ab試料は、pH 3.0、10 mMリン酸 緩衝液に溶解し0.5 mMの濃度に調製した。AbとGM1の混合溶液は、同じくpH 3.0、10 mMリン酸 緩衝液に溶解しAb試料を0.5 mMに、GM1の濃度を0.05 mM、0.025 mMに調製し、最終的な濃度比が それぞれAb:GM1=10:1、20:1になるようにした。それぞれの試料についてNMR測定を行った。
その結果、試料によりシグナルが変化することが観測できた。GM1のスペクトルは非常にブロード であるのでAbのシグナルの変化を解析することにした。Abのみのシグナルは非常にシャープであるが 混合試料ではGM1の濃度が高くなるにしたがって、ブロードになっていった。
Abは凝集しやすく、試料濃度も低いことから、当初、鮮明なシグナルを得られず、詳細な相互 作用部位の特定が困難であった。そこで、pH 3.0にし、Ab溶解後フィルターを通し試料を調製し たところ、鮮明なシグナルを得ることができた。このことからAbは溶解する際に核を作り凝集す ることが明らかになった。また、GM1のスペクトルが非常にブロードであったことから今回の測定 条件では見かけ上の分子量が大きい状態で存在することが分かり、膜状態で存在するのではないか と推論した。また、いくつかのNMRシグナルの変化の解析からAbペプチドとGM1が強い相互作用をし ていることが分かった。そして、GM1の濃度変化によってAbの特徴的なシグナル変化が現れた部位が あり、この部分が相互作用に関係がある部位なのではないかと推論した。