荒島 由季
まず、安定して均質な実験材料を得るため、組織培養法を確立し、カルスを実験材料とした。液体振とう培養カルスを用いた場合、 少なくとも通常の植物がダメージを受ける10〜100倍程度の培地中カドミウム濃度(CdSO4として1mM)までの耐性があった。 また、細胞を遠心により上清(細胞質・液胞)と残渣(細胞壁・細胞小器官)に分画し、カドミウムの細胞内分布を観察した。その結果、 細胞中に存在するカドミウムの約80%が残渣画分に存在し、培地中カドミウム濃度の増大にともない、その割合は高くなる傾向を示した。 このとき、両画分において他の二価重金属元素濃度についても測定したが、顕著な変化は観察されなかった。さらに、プロトプラストを 作成しカドミウム耐性を観察したところ、カドミウム1mMを添加してから少なくとも48hr以内には、その生存率に変化が認められなかった。
次に、一般にカドミウムによって誘導されると言われているファイトキレーチン合成酵素(PCS)遺伝子の発現を調べた。ファイトキレーチ ン(PCs)は、カドミウムと複合体を形成し、液胞へ輸送され、カドミウム耐性に関与すると考えられている。そこで、ファイトキレーチン 合成酵素遺伝子の発現比較を行ったところ、培地中のカドミウム濃度0〜5mMにおいて変化は見られなかった。さらに、二次元電気泳動法 (2D-DIGE)を行い、カドミウムにより誘導発現される新規なタンパク質の単離・同定を試みた。得られた約2000個のスポットのうち、1.5倍 以上に発現量が増加していたスポット219個、減少していたスポット437個を検出できた。発現の差が著しい10個のスポットを、MALDI-ToFを 用いて解析した結果、数残基のアミノ酸配列を得たがタンパク質の特定は不可能であった。
以上の結果から、耐性は組織依存的なものではなく細胞レベルのものであり、プロトプラストに存在すること、蓄積は残渣画分(細胞壁 ・細胞小器官)に選択的にされていることが明らかとなった。また、ファイトキレーチンの翻訳・タンパク質レベルでの調節、もしくは、 ファイトキレーチンとは別な機構による耐性の存在が期待される。
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