2009年度 修士論文要旨


Na+輸送性V型ATPaseのCサブユニットの発現系の構築と結晶化

鈴木 甫

 各種生体エネルギー変換系の中で、イオン輸送性ATPaseは細胞内イオン環境 の恒常性維持に重要な役割を果たすタンパク質である。P型、F型、V型のイオン 輸送性ATPaseのうち、V型ATPaseは液胞型ATPaseとも呼ばれ、真核生物の細胞内 酸性小胞の酸性化を担う本体として知られている。当研究室で研究している E. hiraeのV型ATPaseはA,B,C,D,E,F,G,I,Kのサブユニットにより構成さ れている。その中で、IサブユニットはKサブユニットと共にイオン透過部分を 形成し、Cサブユニットは回転モーターA3B3DGとイオン 透過ローターKとを結合するソケットとして働いている。V-ATPaseの機能やその 各サブユニットの機能を理解するためにも、その構造解析は重要である。

 本研究では、まずE. hirae由来のIサブニットの大量発現を目指して、 封入体として得るために、ADKタグの付加を試みた。ADKタグ領域とベクターの 量比等、DNA組換え体作成条件を各種検討したが、目的のベクターを作成できな かった。次にそのため、Cサブユニットの研究に着手した。まず、Cサブユニット の大腸菌での大量発現・精製系の構築を行った。Linker配列を除いたHis-tag付 Cサブユニットベクターを作成した。m-DM-CA培地を用い、大腸菌で発現させ、 Niレジンを用いて部分精製を行い、ゲルろ過クロマトグラフィーにより精製した。 Niレジンによる精製時、洗浄液のimidazol濃度を低くし、また濃縮作業を穏やか に行うことで培地1 L当たり12 mgの精製サンプルを得た。蒸気拡散法による結晶化 を目指した。結晶化キットCrystallization Screensのindex1,2、Membfac、Natrix とBioSystemsのWizard1,2の計288条件で結晶化を行った。これらの条件のうち Wizard1(条件11)で結晶状のものを得た。

 結晶条件をさらに検討して、構造解析に適する結晶を得ることが次の課題である。 構造情報を充実させることでV-ATPaseの理解を深めることが出来ると期待される。


Back to "Master Thesis" Home Page "修士論文リスト"のページへ戻る