2003年度 修士論文要旨


腸内連鎖球菌ナトリウム輸送性V型ATPaseのサブユニット構成とエネルギー変換機構の研究

石井 淑子

 生体エネルギー変換系の中でイオン輸送性ATPaseは細胞のイオン環境の恒常性維持において重要な役割を持つ。イオン輸送性ATPaseは 構造・機能・生化学的な性質の違いから、リン酸化中間体を形成するP型、ミトコンドリア内膜等に存在しATP合成酵素として働くF型、 細胞内酸性小胞を酸性化するV型に分類される。しかしイオン輸送のエネルギー共役機構の詳細は未だ解明されていない。所属研究室で は腸内連鎖球菌(E. hirae)由来Na+輸送性V型ATPase遺伝子群(ntpFIKECGABDH)のクローニングをはじめとする 分子生物学的・生化学的研究がなされ、真核生物型のV型ATPaseであることが示された。しかしそのサブユニット構成について決着がついて おらず、またNa+輸送性である利点を活かしたエネルギー共役機構の解明も待ち望まれている。

 まず、本遺伝子群の各サブユニット完全欠失株を作製し、菌の生長・Na+排出能・ATPase活性に与える影響を調べた。その結果、 HとJサブユニットを除いた残り全てのサブユニットが必須であることが示された。

 次に、精製ATPaseをプロテオリポソームに再構成し、膜電位依存のATP合成活性を調べた。これまで精製標品へのNa+結合活性を詳 しく調べた結果、ATP存在下で高親和性成分が減少することが示され、イオン輸送機構として親和性変化モデルが提案された。そこでチャネル モデルと区別するため、Na+脱離側の親和性、つまりは逆反応(ATP合成反応)のNa+依存性を調べることが必要である。 私は再構成系において、実際にATP合成反応が起こることを示した。その反応は膜電位というエネルギーにより駆動されていた。ATP加水分解反 応の阻害剤であるKNO3、NaN3、N-エチルマレイミドなどがATP合成反応で同程度の効果を発揮した。ATP合成反応のNa+ 濃度依存性を調べ、輸送機構を議論する。


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