1998年度 修士論文要旨


大腸菌プロリン輸送タンパク質結晶化の試み

伊東 祐介

 大腸菌プロリン輸送タンパク質(PutP)は、プロリンをNa+の 電気化学的濃度勾配を利用して細胞内に輸送する典型的な二次性能動輸送 タンパク質である。二次性能動輸送タンパク質は動植物・微生物を通じ普 遍的に存在し、構造と機能相関について研究が盛んである。しかし、その 三次元構造情報は、X線結晶構造解析のための結晶化が困難であることから 一例も報告されていない。

 一般に膜タンパク質は非常に疎水性で可溶化状態が不安定であるので、 結晶化され構造解析されたものは数が少ない。

 本研究では、PutPの結晶化を目的として、まず大量精製系を確立した。 putP遺伝子のC末端部分にgst遺伝子(グルタチオン-S-トランス フェラーゼ遺伝子)をつなげた発現ベクタープラスミドを作製し、培養・ 誘導方法の工夫により大量発現させた内膜を得た。界面活性剤による可溶 化後、アフィニティ-カラムによる1ステップの精製により、1リットル培養 あたり3 mgの高純度で安定な融合タンパク質を得た。次に、この精製標品 を25 mg/mlに濃縮後、結晶化条件のスクリーニングを行った。その結果、 2.5% PEG6000, pH9.0の条件で、縦0.2 mm、横0.01 mm程度の微小結晶が得 られた。結晶化に重要な因子として界面活性剤の濃度およびGSTの基質で あるグルタチオンの添加が挙げられた。今後、本融合タンパク質の結晶を 構造解析することにより、生物にとって高効率なエネルギー変換機能を 明らかにできるものと期待される。

 以上の結果、大腸菌プロリン輸送タンパク質の高発現・大量精製・結晶 化条件が確立され、二次性能動輸送タンパク質構造解析に向けた一歩が踏 み出された。


Back to "Master Thesis" Home Page "修士論文リスト"のページへ戻る