2012年度 修士論文要旨


大腸菌プロリン輸送タンパク質PutPの安定な精製法の検討と結晶化

岩本 千稔

 大腸菌プロリン輸送タンパク質PutPは生化学的にSSS(Sodium/substrate symport) family に属して いる。PutPは大腸菌の内膜に存在し、Na+の濃度勾配を利用して細胞内にプロリンを輸送する 二次性能動輸送タンパク質である。反応機構としては共役イオンであるNa+が結合することに よってPutPがコンフォメーション変化を起こし、基質であるプロリンのPutPへの親和性が増大するとい う結合モデルが提唱されている。SSS family の構造解析はあまり進んでいないため、PutPの構造情報は シンポーターのメカニズムや機能特性を理解するために非常に重要になる。

 結晶構造解析は、タンパク質の立体構造解析において最も有効な手法のひとつである。しかし、膜タン パク質は精製、結晶化も一般的に困難とされており、PutPも疎水性が高く凝集しやすい。そこで本研究室 では、PutP全体の疎水度を下げる分子設計が行われた。その結果、発現量の高いpMYP7(WT PutP-His-GST) ベクターが作製された。また50% ethylene glycolを用いて精製することで、約1ヶ月4℃で安定であること がわかった。しかし、PutPの濃縮を行う際、アグリゲーションを起こしてしまう問題点が残った。

 本研究ではpMYP7を用いてPutP-His-GSTを大量に発現させ、ethylene glycolを用いた精製を行い、PutP を結晶化することが目的である。濃縮の際の問題点を解決するため、界面活性剤を非イオン性界面活性剤 DDM(n-dodecyl-β-D-maltoside)からイオン性界面活性剤Sarkosyl(sodium N-dodecanoyl-sarcosinate)へ 置換し、PutPの安定化を目指した。電気泳動、ゲル濾過クロマトグラフィーの結果からイオン性界面活性剤 Sarkosylが安定性の向上に有効であることがわかった。結晶化はシッティングドロップ蒸気拡散法を用い、 20℃の条件で行った。Sarkosyl中においても、リゾチームでは結晶化が可能であった。その結果、PGA (poly glutamic acid)が有効ではないかと考えられた。今後の課題として、さらに純度の高い安定なPutP を精製するための界面活性剤の検討、また結晶化条件の検討が必要である。


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