岩佐 光輝
材料は細菌の糖輸送に関与する低分子量タンパク質、ヒスチジン含有タンパク質(HPr) である。シミュレーションによる熱変性過程で得られた構造のうち80〜150ピコ秒間の各 種構造を初期構造として、室温での分子動力学シミュレーションを行い、初期構造に依 存する物性やエネルギー状態を解析した。
遷移状態の手前と思われる構造を初期構造とした場合、速やかにリフォールディングが 進行し根平均二乗変位や露出表面積、タンパク質のポテンシャルエネルギー等がコント ロールのシミュレーションと似た状態に収束していった。それ以降の構造を初期構造と した場合、数百ピコ秒間安定な中間状態が見られた。このことから、HPr折り畳みの遷移 状態は、エネルギー的に異なったいくつかの状態をとり、その間に準安定な状態が存在す るラフネスモデルであることが示された。
以上本研究では、タンパク質折り畳み過程遷移状態の構造的・エネルギー的特徴を明ら かにすることができた。