2002年度 修士論文要旨


水溶性高分子ポリアスパラギン酸の酵素分解機構

梶山 満里子

 現在、洗剤のビルダーなど様々な分野で利用されているポリアクリル酸などの水溶性合成高分子は、環境中で分解されずに蓄積することが懸念されている。ポリアスパラギン酸(PAA)は、生分解性を有する上に、熱重合により安価に大量合成できることから、既存の水溶性高分子の代替物質として利用されることが期待されている。しかし、化学合成されたPAAはL体またはD体のアスパラギン酸がαまたはβ結合した共重合ポリマーであり、複雑な構造を有する。そのため、これまでにPAAの生分解機構に関する知見は数少ない。また、現在までにPAA分解酵素が精製されていないため、PAA分解機構に関する詳細な知見が得られていない。そこで本研究では、PAAの構造と生分解性との関係を明らかにすることを目的として、PAA分解菌からPAA分解酵素を精製し、その性質を調べ、PAAの酵素分解機構の解明を試みた。

 PAA分解菌として、河川水中より単離されたSphingomonas sp. KT-1を用いた。本菌体から2種のPAA分解酵素(TypeT,TypeU)を精製した。両酵素の性質を調べた結果、以下のことが明かとなった。ゲルろ過クロマトグラフィーによりPAA分解挙動を調べたところ、TypeT(分子量30 kD)はPAAをオリゴマーにまで分解することが分かった。さらに、分解生成物の構造解析をNMRにより行った結果、TypeTはPAA中のβアスパラギン酸間のアミド結合を特異的に分解するendo型の加水分解酵素であることが明らかになった。一方TypeU(分子量42 kD)は、TypeTの分解生成物であるオリゴマーをモノマーにまで分解することが分かった。さらに逆相液体クロマトグラフィーにより分解挙動を調べた結果、Type IIがアスパラギン酸のオリゴマーをexo型に分解し、モノマーを生成することが明かとなった。これらの結果から、Type IおよびType IIにより、PAAはモノマーにまで分解されることが明かとなった。


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