2003年度 修士論文要旨


コンビナトリアル合成によるβ-hairpin ペプチドの構造安定化

幸田 敏宏

 ヒトゲノムをはじめ、現在様々な生物のゲノムが解析・公開されてきている。今後膨大なものになると思われるゲノム情報を有効に利用ため には、アミノ酸配列から立体構造や機能を予測する方法の確立が重要である。そのためには立体構造の形成原理を理解することが必須とされ近 年注目が集まっている。

 タンパク質の主要な2次構造であるα-helixの研究が進みその構造形成原理はよく理解できるようになってきた。しかし、もう一方の主要な 2次構造であるβ構造についての研究は遅れている。その主な原因はα-helixに比べ、構造形成原理を研究するためのモデルペプチドの数が少な いことである。1993年のBlancoらの報告にはじまり、現在までに水溶液中・有機溶媒中でβ構造をとる配列が10種類程度報告されているだけで ある。そこで本研究ではβ-hairpin構造の安定化機構を理解することを目的とした。

 コンビナトリアル合成の手法を用いβ-hairpinを形成する既存のペプチドをより安定化するアミノ酸配列を模索した。初期配列として水中で 55%程度のβ-hairpinを形成する16残基のペプチドを用いた。 548,720種類(193×20×4)のペプチドライブラリーを作成し、水中でのCD測定 により構造を形成すると期待される3種類のペプチドを選択し、解析を行った。3種類のペプチドは水中において単量体として存在し、β-hairpin 構造をより強くとっていると考えられた。水中で0℃では90% 近く構造を形成していると見積もられた。熱力学的解析により、弱い協同性により 構造を安定化している事が分かった。選出した最適アミノ酸は初期配列のβ-hairpin構造を強めた。配列からはトリプトファンが増加していた。 また、プロトン2次元NMRの解析により多数の芳香環残基によるNOEが観測されたことから、β-hairpinの両腕が芳香環同士の相互作用により凝集 安定化したためであると推察された。β-hairpinの形成にはvan der Waals相互作用が重要であるとする提案を支持していると思われる。コンビナ トリアル合成系はペプチドの二次構造を強める有用な手法であると考えられる。


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