2002年度 修士論文要旨


大腸菌プロリン輸送タンパク質の結晶化を目指した精製条件の検討

松井 聡

 プロリン輸送タンパク質(PutP)は大腸菌の細胞膜に存在し、Na+の電気化学的濃度勾配を利用して細胞内にプロリンを輸送する二次性能動輸送タンパク質である。二次性能動輸送タンパク質の構造が原子レベルでわかれば、生物にとっての高効率なエネルギー変換機構の重要な情報を知ることができると期待される。精製したPutPは疎水性が高く非常に凝集を起こしやすい。そこで当研究室ではPutPと親水性タンパク質であるGSTを融合し、PutP単独よりも安定化することを期待したPutP-GST融合タンパク質が作られた。本研究ではPutP-GSTのX線結晶構造解析を目標として精製条件の検討を行い、結晶化を試みた。

 大腸菌の内膜に発現させたPutP-GSTはアフィニティカラムを用いて一段階の精製を行い、純度の高いPutP-GSTを得ることに成功した。しかしながら精製標品は時間の経過に伴い分解されていた。SDS-PAGEの結果、PutP-GST融合タンパク質はPutPやGSTの中の数ヶ所で特異的に切断されていた。そして分解に伴って疎水性であるPutP部分が速やかに凝集していくことが認められた。そこでまず有機溶媒、尿素、プロテアーゼインヒビターなどを添加して分解を抑えることを試みた。最終的には、大腸菌プロテアーゼ活性欠損株に発現させたPutP-GSTを精製して、分解を起こしにくい精製標品を得ることができた。

 現在、分解を抑えた条件で精製した標品をシッティングドロップ蒸気拡散法で結晶化することにより微結晶が得られている。しかし、PutP-GSTの凝集は完全に抑えることができず、良質な結晶を得るには至っていない。


Back to "Master Thesis" Home Page "修士論文リスト"のページへ戻る