2011年度 修士論文要旨


細胞シミュレータの拡張・開発

松永 翼

 近年ゲノム解析技術が飛躍的に向上し、研究データの蓄積が進んでいる。またコンピュータ性能の 向上により、生命の全体像を分子レベルから一貫したシステムとして理解しようとする、システム バイオロジーが現実味を帯びてきている。伊東は、@細胞内反応プロセスをグラフィカルに表示、 A可能な限り生化学の実験データを使用、Bシミュレータ内に様々な反応プロセスを統合、の3点を 目標にしてシミュレータを開発してきた。

 また、一般の酵素反応や遺伝子発現制御の記述のモデル化を統合し、大腸菌二段階増殖のシミュレ ーションに成功した。さらにアロステリック酵素などに見られる協同性機構や、細胞内外などの 局在性の記述のモデル化も行われた。

 本研究では、本細胞シミュレータの改良とモデルの統合を目標とした。既存のシミュレータは、 書き出された保存データをテキスト形式で編集することが困難であった。そこで開発環境をVisual C++から新たにVisual C#に変更した。そして書き出されたデータをテキスト形式で編集し、シミュ レータに読み込む機能の実装を試み、その他いくつかの改善を行うことで、より操作性の高いシミュ レータを実現した。また、本シミュレータで記述できるプロセスの各種(遺伝子発現制御、フィード バック制御を含む代謝過程、細胞内外局在性の区別、そして細胞分裂過程)を統合し、細胞全体の 挙動を予測するためのシミュレータに拡張した。

 本シミュレータは生化学データに基づいており、生化学・分子生物学の蓄積するデータを統合的に 解析する上で有用と考えられる。今後、他の生命現象の局面にも適用でき、より高い精度の予測が 出来るよう拡張が期待される。


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