2002年度 修士論文要旨


反応中間体アナログを用いたセロオリゴ糖加リン酸分解酵素の反応解析

野村 圭

 セロオリゴ糖の加リン酸分解を触媒するセロビオースホスホリラーゼ(CBP)およびセロデキストリンホスホリラーゼ(CDP)は反応の可逆性から糖合成酵素としての用途が期待される。しかしながら、その触媒機構に関しては明らかにされていない。本研究では、反応中間体アナログ・グルカールを用いてCBP、CDPの触媒機構の解析を試みた。

 CBPの基質としてグルカールを用いたところ、グルコースの付加反応(二糖合成反応)およびリン酸付加反応が行われた。二つの付加反応はグルカールが非天然型の糖質であるにも関わらず可逆であることが示された。また、二糖合成反応はリン酸の添加により加速し、リン酸付加反応はグルコースの添加により加速した。これらの付加反応は、反応初期における生成物濃度の経時変化から、グルカールからの直接合成反応であることが示されている。この結果から、これらの反応の加速は、新たな合成経路が追加されたことが原因ではなく、直接合成経路自体の加速によるものであることが示唆された。グルコースのアナログによるリン酸付加反応の加速効果を検討したところ、酵素に対する結合および4位水酸基の存在が必須であることが示された。この結果から、酵素内の触媒残基によって活性化されたグルコース4位水酸基がグルカール1位を攻撃することによってリン酸の付加を促していると推察される。また、二糖合成反応、リン酸付加反応におけるグルカール2位に対するプロトン付加は、エカトリアル方向から行われていることを確認した。これは、二つの付加反応においてリン酸がプロトン供給源となることを支持する結果である。リン酸によるプロトン供給は二糖合成反応において加速の要因となり得る。また、過去の報告においてリン酸が求核触媒となることが示唆されていることから、リン酸はグルカール1位を攻撃することによってグルコースの付加を促す役割を有することが推察される。

 また、CDPのグルカールに対する反応特性はCBPと一致していた。このことから、CDPの触媒機構はCBPと同一であると推察される。


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