2002年度 修士論文要旨


ATRによるMdm2のリン酸化を介したp53癌抑制蛋白質の活性化

篠崎 智美

 Mdm2癌遺伝子蛋白質はp53癌抑制蛋白質の不活化に重要な役割を担う。Mdm2はp53のユビキチン化や核外輸送の促進を介してp53の不活化を誘導する。Mdm2のリン酸化は機能的に重要な役割を果たすと考えられ、現在我々は、抗リン酸化部位特異的抗体等を用いて、Mdm2の幾つかのリン酸化部位の解析を進めている。Mdm2のC末端付近にはPI3キナーゼファミリーによりリン酸化されると推測されるSQ/TQ配列のクラスターが存在するが、そのようなSQ配列に属する407番目のセリン残基(S407)のリン酸化及びその機能について検討した。

 S407のリン酸化は、DNA複製阻害剤であるcamptothecinやhydroxyurea処理により誘導された。このリン酸化は、細胞周期のS期への移行を阻害すると抑制された。又、caffeineの投与、及びkinase-dead型のATRキナーゼの導入により、S407のリン酸化が抑制された。さらに、in vitroにおいて野生型ATRキナーゼがS407をリン酸化する事も確認された。以上の結果よりS407をリン酸化する主なキナーゼはATRキナーゼである事が示された。 S407のAsp疑似リン酸化変異体(S407D)を作製しMdm2によるp53の核外輸送におけるS407のリン酸化の役割を調べた所、S407D変異体では野生型Mdm2やS407のAla変異体(S407A)と比較して、核外輸送能力が低下していた。さらに、野生型に比べS407D変異体では、Mdm2によるp53発現レベルの抑制能が低下している事が認められた。従って、ATRキナーゼによるMdm2のS407のリン酸化は、Mdm2の不活性化を介してp53の活性化を引き起こすと考えられた。


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