杉田 梨紗
しかし,コリシンは細胞内に数分子侵入するだけで大腸菌は死ぬが,一旦侵入した 毒素は除いたり希釈したりできないので,コリシンはいつまで働き続けて菌を殺すのか 調べようがなかった。そこで,本研究では,活性ドメインの点変異により温度で活性の ON/OFFが可能な温度感受性(ts)コリシンを作製し,実験に利用した。
tsコリシンを30℃で大腸菌に与えると,野生型(wt)コリシンと同様に15分以内に細胞 内のほとんどの感受性tRNAが切断される(前述のE5の場合とは状況が異なるかも知れな い)。しかし,約2時間に到るまでcfuは維持されており,42℃へ上げることで大腸菌の 生育が回復した。すなわち,大腸菌はtRNAを失うだけではすぐに死なず,tRNA切断が直接 細胞死を意味しないことが判った。さらに,tmRNA欠損株(ΔssrA)においても同様の実験 を行ったところ,コリシンに対する感受性が若干高まった。これらのことから,コリシ ンの大腸菌に対する殺菌作用は,生死を分ける真の細胞内要因は不明ながら,細胞死に 至るまでの間に,tRNA切断による細胞内障害を回復させる品質管理機構が関わっている 可能性が考えられた。
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