1999年度 修士論文要旨


大腸菌プロリン輸送タンパク質の膜配向性と再構成系を用いた輸送反応の性質

田島 夏織

 大腸菌プロリン輸送タンパク質(PutP)は大腸菌細胞膜に存在し、Na+ の濃度勾配を利用してプロリンを細胞内に輸送する典型的な2次性能動輸送 タンパク質である。PutPは12個の膜貫通領域をもち、N末C末とも細胞質側に あると推定されているが、詳細は不明である。また、輸送反応モデルが提唱 されているが、膜電位の効果については未解明のままである。

 本研究では、融合タンパク質を利用した膜配向性の研究、および巨大リポ ソームを利用した電気生理学的解析を行うための再構成系の工夫を行った。 PutPのN末側にマルトース結合タンパク質(MBP)を融合させた6種類のタンパク 質の発現ベクターを構築した。そのうち膜貫通領域を1つ追加したPutPと非分 泌型MBPの融合タンパク質に輸送活性がみられた。MBPの配向性はMBPのシグナ ルペプチドの有無にだけ依存していた。これらの実験結果とこれまでの知見 を総合して、PutP膜貫通領域は13個であると推定した。PutP-GST再構成リポ ソームは膜電位依存的なプロリン輸送活性を示した。活性にはPEが必須であ った。輸送反応の諸性質は野生型PutPを用いた場合と同様であった。直径10 mm 以上の大きさのリポソームが得て、パッチピペットとの間に高抵抗の密着(ギ ガΩシールド)を作ることができた。このように作製されるリポソームは、 電気生理学的研究に有効であると期待される。

 以上、本研究により、大腸菌プロリン輸送タンパク質の膜配向性と再構成リ ポソームの性質が明らかにされた。


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