1998年度 修士論文要旨


腸内連鎖球菌Na+輸送性液胞型ATPase頭部(V1)部分の精製と結晶学的研究

田中 角則

 各種生体エネルギー変換系の中でイオン輸送性ATPaseは細胞のイオン環境の恒常性維持 に重要な役割を担っている。イオン輸送性ATPaseはP型、F型、V(液胞)型に大別される。 F型、V型ATPaseともに、分子量450 kDa以上の巨大な複合体酵素であり、膜表在性で親水性 であるATPase触媒頭部(V型ではV1部分、V1-ATPase)と、膜内在 性でイオン輸送路を含む部分(V型ではV0部分)に分けられる。近年、F1 -ATPaseの立体構造がX線結晶構造解析により明らかにされ、その構造と機能の研究が一大 発展した。一方、V型ATPaseでは、その立体構造の解明が未だなされていない。そこで、本 研究では腸内連鎖球菌に見いだされたNa+輸送性のV型ATPase頭部部分(V1 -ATPase)のX線結晶学による立体構造の解明を目指し、大量精製法および結晶化方法の確立を行った。

 腸内連鎖球菌F型ATPase欠失株に本ATPaseオペロン全体を含むプラスミドを導入した増幅株から 膜小胞を調製し、低イオン強度でV1-ATPaseを遊離させた。Red-Aカラム、陰イオン 交換カラムなどのカラムクロマトグラフィーにより、菌体1gあたり1 mgの安定な本複合体 (A3B3D複合体)を精製できた。次に、結晶化条件を確立した。沈殿剤PEG4000(24-28%)、 pH 7.5-8.5、添加塩 0.2 M 硫酸リチウム、温度4℃、で2週間から4週間で再現性よく結晶が 得られた。このような結晶へのX線照射により、現在のところ3.54 Åの分解能で回折斑点が 得られた。

 以上、本研究により、腸内連鎖球菌V1-ATPaseの大量精製並びに結晶化方法が 確立された。


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