伊藤隆宏
本研究では、計算を高速化するため、溶媒を明示的に扱わないブラウン動力学 (BD)法を利用した。従来のBD法は水相中でのシミュレーションを想定しており、 膜タンパクに適用できない。そこで、BD法の枠組みの中で、膜環境をも非明示的に 再現するモデルの開発を行った。αヘリックス構造のポリアラニンペプチドや パピロマーウイルス由来のE5タンパク質、蜂毒のメリチンをモデルとしてシミュ レーションした結果、疎水性であるポリアラニンとE5膜タンパク質は膜中で安定に 存在した。また、両親媒性であるメリチンペプチドは膜表面に安定に結合していた。 これらの結果から、本膜モデルを用いたBD法は膜タンパク質のシミュレーション に有効であると考えられる。