2006年度 修士論文要旨


膜タンパク質ブラウン動力学シミュレーション法の開発

伊藤隆宏

 タンパク質は生体の主要構成成分であり、複数のアミノ酸がペプチド結合により 連結したポリペプチド鎖からなる。その中、膜タンパク質は生体膜中に存在して、 細胞内外との物質のやりとり、隣の細胞との接着などに重要な役割を果たしている。 従って膜タンパク質の構造や機能を解析・予測することができれば、生化学、薬学 の分野で貢献することが期待される。しかし、膜タンパク質は疎水的で凝集しやす く、実験的に構造や機能を解析するのは困難である。そこで、時間・空間分解能の 高い膜タンパク質のコンピュータシミュレーションが注目されている。

 本研究では、計算を高速化するため、溶媒を明示的に扱わないブラウン動力学 (BD)法を利用した。従来のBD法は水相中でのシミュレーションを想定しており、 膜タンパクに適用できない。そこで、BD法の枠組みの中で、膜環境をも非明示的に 再現するモデルの開発を行った。αヘリックス構造のポリアラニンペプチドや パピロマーウイルス由来のE5タンパク質、蜂毒のメリチンをモデルとしてシミュ レーションした結果、疎水性であるポリアラニンとE5膜タンパク質は膜中で安定に 存在した。また、両親媒性であるメリチンペプチドは膜表面に安定に結合していた。 これらの結果から、本膜モデルを用いたBD法は膜タンパク質のシミュレーション に有効であると考えられる。


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