現在の関心事
私たちは日々頭を働かせて,面白いアイデアを思いついたり,どうでもいいことで悩んだり,難しい問題の答えを考えてみたり,楽しかった出来事の記憶を思い出して喜んだりしています。
頭がうまく働いて,集中力や記憶力,思考力が高くなると嬉しいですね。一方,頭がうまく働かず,集中ができない,覚えたいことが覚えられない,思い出したくないことが浮かんでくる,何も良いアイデアを思いつかない,という状態になると辛いですね。
ではどのようにすれば,頭をうまく働かせることができるかご存知でしょうか。なぜ頭がうまく働かなくなるのかご存知でしょうか。森田研究室では実験や調査を通して,頭の働きにアプローチし,それらの問いへの答えを蓄積しています。
現在取り組んでいる研究テーマは以下のものです。
- 展望的記憶 prospective memory
- 無意図的想起 involuntary remembering
- マインドワンダリング mind wandering
- 認知的加齢 cognitive aging
- 退屈 boredom
未来において実行しようと思っている行為の記憶。この記憶の失敗は,し忘れとなります。薬の飲み忘れ,メッセージの伝え忘れ,火の消し忘れ,メールの出し忘れ,安全装置のかけ忘れ,書類提出のし忘れなどが,その一例です。どのようにすれば,危険なし忘れを防ぐことができるのでしょうか。また,どのようなメカニズムのおかげで,私たちはするべきことをタイミングよく思い出すことができるのでしょうか。さらに,年齢を重ねるにつれて,し忘れが増えるとよく言われますが,それは本当なのでしょうか。
思い出そうとしていないのに,記憶がふと頭に浮かぶ現象。楽しい記憶や嫌な記憶が頭に浮かんできて,楽しい気分になったり,嫌な気分になったりすることもあります。また,しなければならないことの記憶がふと頭に浮かんできて,し忘れをせずに済むこともあります。さらに,過去や未来の記憶が頭に浮かんでくるせいで,現在遂行中の課題に集中できなくなってしまうこともあります。このような無意図的想起現象は,どのようなメカニズムによって発生しているのでしょうか。私たちの様々な頭の働きにとって,どのような意味があるのでしょうか。無意図的想起の生起頻度や内容を思いどおりにコントロールすることはできないのでしょうか。
現在遂行中の課題に無関係なイメージや音声,思考などが浮かんでくること。刺激独立思考stimulus-independent thoughtや課題無関連思考task-unrelated thoughtとも呼ばれます。授業中や仕事中に,無関係なことを考えて上の空になってしまったりする場合が,マインドワインダリングの例です。何かか勝手に頭に浮かんでくるという点で,無意図的想起ととても類似しています。マインドワンダリングをよく経験する人は,新しいことを思いつきやすくてクリエイティブになりやすいといったことがあるのでしょうか。
年齢を重ねるにつれて,私たちの頭の働きも変化してくることは知られていますが,それでは上記の無意図的想起やマインドワンダリングは,高齢になるとその頻度は向上するのでしょうか,それとも低下するのでしょうか。低下するならばそれはなぜなのでしょうか。もし低下することが望ましくない結果をもたらすのなら,どのようにすればそれを補うことができるのでしょうか。
仕事中や授業中,移動中などに,私たちはしばしば退屈になります。退屈は不快な経験ですので,私たちは退屈しのぎをしようと,さまざまな試みを行いますが,時にそのことが困った事態を引き起こすこともあります。例えばウェブサイトの閲覧を止められなくなってしまいするべき課題ができなくなってしまうことや,運転中に暇つぶしに熱中しすぎて赤信号を見落としてしまうことなどです。どのようにすれば退屈感を緩和させることができるのでしょうか。また,もし退屈感を緩和することが難しいのであれば,退屈により困った事態が引き起こされることをどのようにすれば防ぐことができるのでしょうか。

About
- 室員:森田泰介Taisuke Morita
- 所属:東京理科大学教養教育研究院
- 所在地:神楽坂キャンパス1号館16階
- 担当科目:心理学,心理学研究法,心理学演習等
- 連絡先:tmorita[at]rs.tus.ac.jp([at]を@に変えてください)