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住所〒162-0826 東京都新宿区市谷船河原町12 5号館 304

TEL. 03-3260-4272 (内線5843)
FAX. 03-5228-8255

研究内容

研究分野:有機化学
      超分子化学、構造有機化学、分子マシン(分子機械)、
     アロステリック、 分子認識、高歪み化合物、π共役分子など


 有機分子の中には、外部刺激に応じて形や運動性、色などを変える分子スイッチや分子マシン、ひとりでに規則正しい構造に組み上がる自己集合性分子、特定の分子を選んで捕まえるレセプター分子など、様々な物性をもった機能性分子が存在します。有機化学の力を使うと、多様な構造や物性をもつ化合物を独自に設計・合成することが可能になります。
 誰も作ったことのない未知の構造を設計・作り出すことで、これまでにない新しい物性や機能性を持つ分子を開発(発見)し、新しい科学を切り拓いていきたいと考えています。
 
  
 また、2つの意味からなる”動的構造制御”にも興味をもって研究しています。
  ・外部刺激による”動的構造”の制御・・・動きをコントロール
  ・環境変化に基づく”動的な”構造制御・・組織形態や次元性の時間的制御


 

・現在の研究テーマ

1. 新奇超分子モチーフとしてのヒドリンダセン分子の機能開発 (→構造有機若手の会 演題
2. アロステリック会合を利用した核形成-伸長プロセスに基づく超分子ポリマー構築
3. イミン架橋型ロタキサン分子を用いた伸縮制御分子(人工筋肉分子)
4. 3次元的な構造修飾性を持つ大環状化合物の開発とチューブ構造への集積
5. 新しい水素結合ネットワーク素材としての縮環マロナミド:次元制御構造構築と応用
6. イミン架橋制御により動的挙動と動的平衡を制御するダイナミック分子システム



・これまでの研究内容

 … 最近の成果については以下のHPもご参照ください。
   科学技術振興機構さきがけ 「構造制御と機能」(岡本佳男 総括) 主な研究成果

・主要論文の要旨

Dynamic covalently bonded rotaxanes cross-linked by imine bonds between the axle and ring: Inverse temperature dependence of subunit mobility
H. Kawai,* T. Umehara, K. Fujiwara, T. Tsuji,* T. Suzuki
Angew. Chem. Int. Ed., 45(26), 4281-4286 (2006)

イミン結合の動的共有結合性によって運動性の制御が可能な新奇ロタキサン分子の開発
 ロタキサン分子は軸状分子が環状分子に貫通した構造をもつ分子である。共有結合によらない機械的連結に基づく高い運動性とその制御により、分子デバイスや分子マシンへの応用が期待されており、その新規構築法および運動性制御法の開発に大きな興味が集まっている。本論文では、イミン結合の形成・解離という可逆性(動的共有結合性)をロタキサン分子の新規構築法として利用するとともに軸・環の運動性制御にも応用可能であることを見出した。このイミン架橋型ロタキサン分子は、イミン結合の加水分解により[2]ロタキサンへと変換することで軸・環の運動性が増加する一方、脱水によりイミン架橋体として環部の固定化が可能な運動制御性をもつことを明らかにした。また、加水分解条件下での温度変化において、低温では[2]ロタキサンへ平衡が偏り、高温にするとイミン架橋体へ偏るという運動性の観点からも興味深い温度依存性を見出した。

Multipoint recognition of catecholamines by hydrindacene-based receptors accompanied by the complexation-induced conformational switching
H. Kawai,* R. Katoono, K. Fujiwara, T. Tsuji,* T. Suzuki
Chem. Eur. J., 11(3), 815-824 (2005)

多点水素結合によりアドレナリン類を認識する分子レセプターの開発
 生体において、神経伝達物質であるアドレナリンなどカテコールアミン類は、カテコール環や2級アルコール部位、アンモニウム基のそれぞれがGPCR(Gタンパク結合型レセプター)に認識されることでタンパク構造の変化を誘起し、特異的な機能を発現する。一方、これまでアドレナリン類を認識する人工レセプター開発においてこのような多官能基認識特性や構造変化特性を有する例は開発されていなかった。本論文で開発されたヒドリンダセンジアミドレセプターでは、複数のアミド基やエステル基により、多点水素結合に基づく官能基選択性を有するとともに、荷電ゲストの認識がアミド基の配向を変化させるという動的分子認識機構を見出した。

Positive homotropic allosteric binding of benzenediols in a hydrindacene-based exoditopic receptor: Cooperativity in amide hydrogen bonding
H. Kawai,* R. Katoono, K. Nishimura, S. Matsuda, K. Fujiwara, T. Tsuji,* T. Suzuki
J. Am. Chem. Soc., 126(16), 5034-5035 (2004)

アミド基の水素結合に伴う極性誘起により活性化するアロステリックレセプターの開発
 アミド基はタンパクやペプチドといったアミノ酸に必ず含まれる官能基であり、その水素結合ネットワークがタンパク固有の機能をもたらすといっても過言ではない。さらにアミド基はC=O側とNH側の両方で水素結合可能であり、一方の側での水素結合が他方の側(例えばNH側への水素結合がC=O側)への水素結合能を活性化する協同効果をもっていることが提唱されてきた。このアミド水素結合の協同性は、α-ヘリックスやβ-シートなどペプチド間水素結合の安定性を説明する効果の一つとされてきたが、これまで明確な証拠はほとんどない状況であった。
 本論文では、ヒドリンダセン骨格がもつ3次元的な構造修飾性に着目し、アミド基を導入した分子レセプターを設計・合成したところ、分子平面の上下で2分子の芳香族ジオールに対する正のアロステリック会合能を有していることを見出し、単離した錯体の系統的なX線解析から、アロステリック会合能がアミド基の回転抑制と水素結合に伴うアミド基への極性誘起という機構によって発現していることを明らかにした。
すなわち本研究はこれまでに利用例のない機構を利用してアロステリックレセプターを開発するとともに、アロステリック会合能の発現により、これまで未解決であったアミド基の極性誘起の効果を実証することにも成功した。

研究室の住所

研究室の住所
東京都新宿区市谷船河原町12
5号館 304(研究室)/ 221(個室)
TEL.03-3260-4272
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