本研究室で実施している研究課題

 本研究室で実施している研究課題についてご紹介します.なお,ここに紹介している課題のほか に,御社におきましてお困りのトラブル,さらには技術開発など様々な問題解決・開発案件に関しても対応させて頂いております.

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はじめに
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 我が国は,他の国に比べて自然に恵まれた環境にあると言われています.しかしながら,このような素晴らしい自然環境が醸成されてきた背景には繰返し引き 起こされてきた地殻変動と自然災害があります.
 数学・物理に裏打ちされた合理的な考え方が欧米から我が国に導入されたのは1886年であり,現在に至るまでの約120年間を経て,我が国はこのような 考え方に従って飛躍的な経済発展を遂げてきました.その際,機械工学が果たしてきた役割は重要であり,今も変わりありません.機械構造物は,欧米流の合理 的手法と手順のもので開発・設計され,それは自然災害を克服するために強固なものであることが求められてきました.
 私たちは,2011年3月11に大変な自然災害を経験しました.この大震災は大地のみならず,我が国の経済と産業の構造をも揺るがすことになりました. 結果的には,欧米流の合理的なモノづくりの考え方をも揺るがしたといえます.一例として,エネルギー分野について考えてみます.現在,原子力発電所の再稼 働が困難となり,これに代わってこれまであまり運転されることのなかった火力発電所がフル稼働しています.このような事情は,今後数十年にわたって変わら ないと考えられます.このため,運転されている発電設備(ボイラー,ガスタービン)が壊れないように注意深く管理することが求められるようになりました. 今回の震災は,大地震のみならず大洪水,そして火山噴火など多くの自然災害が待ち構えていることを我々に再認識させたのです.

最近(2022年)の研究テーマについて
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本研究室のキーワードは”自然災害と共存していくための材料技術
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 自然災害を克服するのではなく,共存するための新しい技術が求められています.すなわち,これまでの欧米流ではなく我が国固有の技術,さらには考え方を 確立していかなければならないのです.”持続可能(Sustainability)”な技術開発が必要となっている理由がここにあります.
 社会に役立てられることを目指して,当研究室では,”自然災害と共存していくための材料技術”を開発することを大きな研究目標に掲げています. 

 初心者向けのための当研究室 の紹介はこ ち らをご覧ください.

本研究室の専門分野
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 固体力学(材料力学,弾性力学,塑性力学),損傷力学,界面力学,破壊力学,実験力学,計算力学 

本研究室の研究分野
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 薄膜・皮膜の機械的特性評価,経年劣化した機械構造物の損傷評価,発電用・航空機用ガスタービン高温部品の損傷評価,連続体力学に関わるあらゆる理論 的・解析的研究,ひずみ計測技術,センサー技術

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最新ニュース
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NEDOが公募した 「カーボンリサイクル・次世代火力発電等技術開発/次世代火力発電基盤技術開発/石炭火力の負荷変動対応技術開発」に応募し,採択されました.本研究開発 では,再生可能エネルギーの導入拡大により増加する石炭火力発電所の負荷変動に対応した配管余寿命診断技術の開発を実施します.本開発は,東京理科大学, 熊本大学,大阪府立大学,近畿大学,非破壊検査株式会社,中国電力株式会社の連携のもとで実施されます。
研究開発項目:
1)高温配管システムを模擬した試験システムの開発の実証試験の実施
2)損傷モニタリングのための高温三次元薄膜静電容量型センサーの開発
3)高温配管大規模解析とデジタルツイン技術の開発
4)伝熱管のための超電導磁気センサーの開発
5)損傷モニタリングのためのマスターカーブのデータベース化
6)実機実証試験

 プレスリリースはこ ち らをご覧ください.

これまでの科研費・助成金・共同研究費 獲得状況
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●国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)
 「カーボンリサイクル・次世代火力発電技術開発/次世代火力発電基盤技術/石炭火力の負荷変動対応技術開発」
 (2020〜2023年)

●文部科学省 科学研究助成事業(科研費)基盤研究(C)(2015〜2017年)
●文部科学省 科学研究助成事業(科研費)基盤研究(C)(2018〜2020年)
●文部科学省 科学研究助成事業(科研費)基盤研究(C)(2022〜2024年)

●一般社団法人 日本ボイラー協会 ボイラー・圧力容器等助成金(2014年)
●株式会社 超高温材料研究センター ガスタービン補修技術 助成金(2016年)
●株式会社 超高温材料研究センター ガスタービン補修技術 助成金(2017年)

●株式会社 トーカロ 共同研究費(2013年)
●一般財団法人 電力中央研究所 共同研究費(2013年)
●株式会社 トーカロ 共同研究費(2014年)
●株式会社 トーカロ 共同研究費(2015年)
●日産自動車 株式会社 共同研究費(2015年)
●中国電力 株式会社 共同研究費(2016年)
●株式会社 トーカロ 共同研究費(2016年)
●日産自動車 株式会社 共同研究費(2016年)
●中国電力 株式会社 共同研究費(2017年)
●株式会社 トーカロ 共同研究費(2017年)
●日産自動車 株式会社 共同研究費(2017年)
●中国電力 株式会社 共同研究費(2018年)
●株式会社 トーカロ 共同研究費(2018年)
●日産自動車 株式会社 共同研究費(2018年)
●中国電力 株式会社 共同研究費(2019年)
●東京電力ホールディングス 株式会社 共同研究費(2019年)
●株式会社 トーカロ 共同研究費(2019年)
●中国電力 株式会社 共同研究費(2)(2019年)
●東京電力ホールディングス 株式会社 共同研究費(2020年)
●株式会社 トーカロ 共同研究費(2020年)
●中国電力 株式会社 共同研究費(2020年)
●東京電力ホールディングス 株式会社 共同研究費(2021年)
●株式会社 トーカロ 共同研究費(2021年)
●株式会社 トーカロ 共同研究費(2022年)
●中国電力 株式会社 共同研究費(2022年)

▲先進ガスタービン高温化技術・信頼性技術

発電用ガスタービン・航空機用ジェットエンジンの動翼材料の非弾性解析技術と損傷評価法の開発
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 本研究では,発電用ガスタービンならびに航空機用エンジンの 動翼に生じうるき裂ならびにそれら動翼表面に施されているTBC(耐環境性コーティン グ)のき裂発生や はく離といった損傷を対象とし,非弾性変形と損傷の発生と進行を予測するための温度場−非弾性・損傷連成解析技術を 開発しています.このような解析ツールを開発することにより,新しい耐熱合金・耐環境性コーティングの開発と動翼の経済的な交換時期,TBCのリコーティ ング実施時期を適切に助言,提言することが可能となるものと期待されます.

この研究プロジェクトの内容と その成果はこ ち らをご覧ください
 
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図 航空機用ジェットエンジン(耐熱合金と耐環境性コーティングの開発)

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図 動翼用遮熱コーティング材の非弾性構成方程式とそれを組み込ん だ非弾性有限要素解析コードによる損傷解析結果)

各種高温機器のための多孔質セラミック遮熱コーティングの開発
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 本研究では,各種高温機器のための先端技術としてトランスピレーション 冷却技術に注目し,この冷却技術に必要不可欠な多孔質セラミック遮熱コーティングを開発し ています.メーカーとの共同研究のもと,新たに開発した混合粉体 を原料に,プラズマ溶射技術により低コストでかつ簡単に多孔質セラミックコーティングを成膜することができます.フィルム冷却とこのコーティングによるト ランスピレーション冷却による冷却効果の確認,高温下におけるコーティングの高温強度特性など,様々な確認試験を通じて,将来,実機ガスタービンへの適用 を狙っています.
 
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図 多孔質セラミックコーティングによるトランスピレーション冷却技術の説明図
(冷却空気流量の増加に伴って部品表面温度が著しく低下する様子がサーモグラフィーで観察されました.)

マイクロマテリアルの機械的特性評価のためのマイクロテスターの開発
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 本研究では,薄膜材やコーティング材のような厚みが薄く,かつサイズが小さいマイクロマテリアルを 対象に,このような供試材の機械的特性(応力−ひずみ曲線,疲労 寿命,き裂進展特性)を把握することが可能なマイクロテスターを開発しています.単軸負荷ピエゾ駆動型マイクロテスターについてはすでに開発を終了し,商 品化されています.マイクロテスターは各種分析装置と組み合わされ,様々な製品を開発するために役立てられています.

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図 電子顕微鏡と組み合わされた単軸負荷ピエゾ駆動型マイクロテスター(株式会社 理学相原精機との共同開発)

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図 当研究室で開発した手のひらサイズのマイクロテスター.アクチュエータにはバイオアクチュエータを利用.制御システムはアルディーノにより構築. (2014年度 試作)

押込み試験法によるコーティング材の膜質と界面強度評価に関する研究
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 本研究では,押込み試験法によりコーティング材の膜質(弾性係数,熱伝導率,ヤ ング率,熱伝導率など)と微視的組織を関係づけることを試みています.またコーティングと基材の接合界面強度を簡便に評価することを目的として,ビッカー ス硬さ試験機を利用した破壊試験法を開発しています.界面に押し込んだ ビッカース圧子の縁から界面に沿って発生,進展した界面き裂に基づいて接合界面強度を評価するための解析的評価法を中心に研究を進めています.本手法は,2016年9月にISO 19207 "Thermal spraying - Classification methods of adhesive strength by indentation"が規格として認定されました.今後は世界中で皮膜の品質は本規格に従うことになりました.

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図 ビッカース硬さ試験機を利用した界面破壊靱性評価に関する説明図と本試験法の実機への適用例

熱伝導と熱応力の連成理論に関する研究
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 熱伝導と熱応力の以下に関する連成理論の基礎的研究に取り組んでいます.
(1)気体浸透と熱伝導を同時に多孔質媒体が受けることで,場にどのような温度,圧力,流速,熱応力 を生じるのか明らかにするための理論的な研究 を行っています.これまでに,熱交換による場の相互作用効果が表れるため,場の支配方程式は非線形偏微分方程式と なることを明らかにしてきました.現在, フーリエ積分変換法,摂動法などの応用数学を駆使してこの非線形方程式を解くことに取り組んでいます.
(2)相対論的熱伝導方程式と動的熱応力理論を連成させて,弾性媒体中を高速で伝ぱする熱波の理論 解析に取り組んでいます.ナノ構造体においては,これまでの古典的熱伝導方程式に従って熱移動が生じないことが指摘されています.このた め,新しい理論と解析手法(差分法)の開発を進めています.

異物の高速衝突によるFOD損傷技術に関する研究
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 航空機ジェットエンジンにおいては,バードストライクなど異物の高速衝突をブ レードが受けることでFODと呼ばれる損傷が発生します.本研究では,微小鋼球を高速衝突させることが可能な衝突試験装置を用いて,どのような損傷がブ レード表面に生じるのか,疲労寿命に及ぼすFOD損傷の影響について研究を進めています.


▲経年火力プラントのプラントメンテナンス技術

押込み試験による溶接部の高温強度特性評価技術の開発
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 機械構造物には溶接部が多数存在しており,トラブル事例によればこのような溶接部を起点としてき裂が発生し,重大な事故が多発しています. 本研究では, 火力発電設備の大口径配管溶接部を対象として,高温押込み試験装置の開発とそれを用いた溶接部におけ る溶接熱影響部の機械的特性を測定できるよう研究を進 めています.

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図 高温下押込み試験の非弾性・接触連成有限要素解析結果の一例(ANSYSにより解析を実施)

複合荷重条件下での実機鋳鋼配管システム溶接部のき裂進展評価
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 経年劣化が著しい火力発電設備における車室・弁・配管システムに生じうるき裂発生と進展を予測するための数値解析技 術の開発を進めています.本研究では,火力発電所の現場(中国電力)と密接に連携をとりながらき裂発生と進展過程を予測していきます.

空間中を湾曲するはり状構造物のための伝達マトリックス法の開発
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 空間中を三次元的に湾曲したはり状構造物に生じる応力とたわみを計算するための新しい解析手法を開発しています.これまでの有限要素法による解析では, 要素に対して変位成分と力成分からなる剛性方程式が組み立てられ,これを数値的に解くことで問題の解が得られてきました.これに対して,ここに開発してい る伝達マトリックス法では,状態ベクトルと呼ばれる変位と力からなる成分がはり状構造物中をつぎつぎに伝ぱしていく,というアイデアに基づいて材料力学の 問題が解かれます.現在,基礎理論の構築とそれによる解析プログラムの開発を進めています.

経年劣化した機械構造物に対するレーザー補修技術の開発
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 東日本大震災以降,電力供給安定化のために老朽化した石油・石炭火力発電設備が原子力発電設備の代替として再稼働を余儀なくされています. これらの発電設備はすでに設計寿命20年を遥かに超えており,最近ではボイラー主蒸気管,再熱蒸発管などの高温高圧配管機器において内部漏洩など深刻なト ラブルが報告されるようになってきています.本研究では,経年劣化した主要配管系をリフレッシュするための新しい レーザーメタルディポジッション(LMD)技術による表面補修技術とそ の信頼性を確立することを目的としています.


▲富士山噴火を想定した 災害防止技術

機械構造物への火山灰堆積による損傷評価技術
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 富士山が噴火した際には関東に設置されている発電設備をはじめとするインフラ設備のほとんどは機能 不全に陥る可能性が指定されています.これまで,火山灰降下は農作物への被害,人体への被害が主に議論されてきました.しかしながら,火山灰降下が上述し たインフラ設備に及ぼす影響に ついてはほとんど論じられることはありませんでした.そこで当研究室では,インフラ設備のうち使用環境が最も厳しい発電用ガスタービンを例に取り,エアロ ゾル火山灰をガスタービンが吸気したときにどのような損傷を誘発するのか,実験的・解析的観点から災害シナリオを作成しています.本テーマは将来の日本を 担いうる挑戦的研究課題として位置づけられ,つぎのような研究テーマが進められています.
(1)機械構造物への火山灰堆積条件の解明
(2)火山灰堆積した機械構造物の腐食加速現象の解明.
(3)エアロゾル火山灰雰囲気下での電子デバイスの腐食損傷解析技術の構築.
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 図 当研究室で開発を進めている火山灰堆積シミュレータの概念図  図 当研究室で提案する火山灰堆積マップ

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・順次,ホームページを改定しています.