2. 第二課題の結果例 その2
[ 第二章の説明 / 第二章の課題 ]


図2-1で示した経路に沿って磁化、帯磁率、内部エネルギー、比熱の振る舞いを調べてゆけば2次元イジング磁性体における常磁性-強磁性相転移について様々な特徴を知ることができる。実際、スキャンの方法を少し工夫することにより、この相転移現象を異なる切り口から見ることができる。
ここではさらに発展した考察を可能にするため、用意されたプログラムで実行することができる興味深い結果や、時間の都合上難しいと思われる温度と磁場についてより広い範囲と細かい幅でスキャンした結果を示す。
磁化の磁場依存性は同じ経路でも外部磁場の増加過程と減少過程では異なる振る舞いをする場合がある。経路4や違う温度はどうだろうか。
経路1,2で帯磁率と比熱の振る舞いには共通する特徴がある。では経路3,4ではどうだろうか。
経路3,4では帯磁率と比熱は全く異なる振る舞いを見せる。とくに比熱は興味深い変化をしている。これらの様子を解釈するには経路3,4だけでは足りないかもしれないので、温度と外部磁場のより広い範囲、細かい幅で測定した帯磁率と比熱を等高線プロットで示す。
比熱についてはJ1=0の系、つまり交換相互作用のない系でモンテカルロシュミレーションした結果も示す。両者の違いはどこにあるのだろうか。

交換相互作用のない系の比熱Cの厳密解は温度Tと磁場Hの関数で

と表される。
この厳密解とシュミレーションで求めたJ1=0、J1=1の場合の比熱の磁場依存性をT=1.0,2.5,5.0,9.0についてプロットする。
高温になればなるほど両者の違いは小さくなっている。これらの変化に交換相互作用のあるなしはどう寄与していたのだろう。

これらの結果のほとんどは自ら実験することのできるものである。しかし与えられた課題を追ってゆくなかで多くの人が見逃しているため、ここに付記した。シュミレーションは実際の実験に比べて容易に結果を得ることができる。思いついたことを即試してみることができるこの自由さを生かして、自発的に実験を進めていってほしい。