信号処理・画像処理 基礎

 当研究室では、ディジタル信号処理理論の基礎研究に取り組んでいます。特に医療機器や福祉機器での活用を念頭に置いた研究を行っており、多次元信号や画像の因果性解析、異種の物理量を持つ信号間の相関分析といった内容の理論について考えています。

信号処理の重要性
 信号処理とは、何らかの数字の並びについてその意味を探り、またある意味を持つような数字の並びを作り出す作業です。特に、当研究室で扱う生体信号処理に対して、我々はこれを次のようなものであると考えています。
  • 未知の言語を解読するようなもの
  • 異世界の文化を理解するようなもの
  • 想像力を酷使すること
  • ジャンルを問わない文献や資料の読解のようなもの
 生体信号は、それが自発信号であれ誘発信号であれ、生体の持つ何らかのメカニズムによって生成される、いわば「言葉」や「文章」のようなものです。そこには何かしらの「意味」が隠されています。ただし、その「文章」は我々人類が理解できる言語で記述されていません。何語で記述されているのかわからない文章を翻訳し、その翻訳文に込められた意味や思想、さらにはその行間に至るまでを解明する作業が生体信号処理であると考えています。たとえるならば、発掘されたピラミッドの中に描かれた絵文字を解読してその内容や、さらには当時の文化や思想までも理解しようとする作業になるのでしょうか。ただし、絵文字ではあってもピラミッドの中の絵文字は、所詮は我々と同じ人類が記述したものです。生体信号はそんな生易しいものではなく、人類以外の誰かが独自の思想や思考に基づいて記述した長編なのです。どの波形が何を意味しているのか、文法はどのような法則があるのか、何らかの特徴量が1対1で何かを表しているのか否か、などなど、全然わかっていないところからスタートします。それでも、長い科学の歴史の中で、いろいろなことが解明されてきました。「心臓が正常に動いている時に見られる心電図の形はこうだ」とか「筋肉は強く収縮すればするほど振幅の大きな筋電位を出す」とか、「目を閉じて安静にしている時の脳波はα波がでる」とか、研究者たちの地道な努力の結果、様々な生体信号辞書が紡がれてきました。そして、それは現在進行形で続いています。
 当研究室では、そのような「人外の者が記した文章」を読み解くためのツールを作るという研究をしています。
当研究室で取り組む信号処理・画像処理技術開発テーマの例
  • 異なる物理量を持つ複数の時系列間の因果関係を定量的に可視化する理論の研究
  • 動画像に対する多次元有向情報量解析理論の研究