所属
- 東京理科大学
- 学部 :理学部第二部物理学科 (学部オリジナルwebsite)
- 大学院:理学研究科物理学専攻
研究内容
- 研究分野 :
- 宇宙物理学 / 重力理論
- キーワード:
-
暗黒エネルギー / ブラックホール / 中性子星 / 重力波 / 数値相対論
1. 本研究室の目的
宇宙論・重力理論における未解決問題を理論的に解明すること.
2. 研究テーマ
現在の宇宙の約7割は暗黒エネルギーと呼ばれる宇宙を加速膨張させる未知のエネルギーによって占められています.1998年に超新星の観測によって宇宙の加速膨張が発見されて以来,その源である暗黒エネルギーの研究が世界中で活発に行われていますが,その起源は未だ解明されていません.素粒子物理学の類似に基づいた未知の物質によって暗黒エネルギーを説明しようとする試みがある一方で,マクロスケールにおける重力理論の変更によって暗黒エネルギーを説明しようという試みもあります.宇宙を記述する上で基盤となる重力理論は一般相対論であり,太陽系のような局所領域では一般相対論が精度良く成立していることが検証されていますが,宇宙論的なマクロスケールでは一般相対論が成立する精度について未解明な点が多く,重力理論の拡張によって宇宙の加速膨張を説明する試みは世界中で活発に研究されています.
また,ミクロスケールでも一般相対論の拡張が議論されています.例えば,一般相対論に基づくと,理論的にはブラックホールの中心において曲率の発散が起きる特異点が現れ,物理的に取り扱うことができなくなります.これは一般相対論の適用限界の存在を示しており,これを超えた理論の必要性を示唆していると考えられます.他方,近年の新たな観測の到来が強重力場における物理学や重力理論検証のための新たな窓を押し開きました.例えば,2015年に初めて直接検出されて以降活発に行われている重力波の観測は,これまで光を介してのみ宇宙を観測していた我々に宇宙を見るための新たな「目」を授けました.ただし,現在観測されている重力波はブラックホールや中性子星が成す連星の合体現象から放出されたものであり,この現象を詳しく調べようとすると合体直前の非線形性が非常に強く解析的な取り扱いが困難な領域を考える必要があります.そのため,数値相対論という大規模数値計算によるシミュレーションの重要性も益々強まっています.また,2019年にはイベント・ホライズン・テレスコープによって,ブラックホールの影であるブラックホールシャドウの撮像成功が報告されています.この観測は,ブラックホールによって形成される極端に強い重力場中での物理学の検証を可能としました.これらの,そして次世代の新たな観測が真の重力理論を照らし出すヒントを与えてくれるでしょう.
宇宙,そして重力理論には上記の未解明の謎が数多くあります.これらの解明に向けて,理論や観測の垣根を越えて忌憚なく意見を交わし,既存の枠組みにとらわれることなく長期的な視野を持って研究を推進していく必要があります.以上の背景のもと,本研究室では宇宙論班,コンパクト天体班,数値相対論班の三つの班に分かれて,一般相対論とそれを拡張した重力理論に関して最新の観測データを交えた研究を実施しています.宇宙論班は暗黒エネルギーやインフレーションを,コンパクト天体班はブラックホールや中性子星を,数値相対論班はブラックホール連星の合体現象等を主な研究対象としています.
2023年度および2024年度の研究室紹介イベントにおいて各研究班が発表したポスターを以下からご覧いただけます(画像をクリックすると別タブで開きます).
東京理科大学科学教養誌「科学フォーラム」にて本研究室のインタビューが掲載されています.リンクはこちら.
卒業研究
1. 卒研の内容
前期は最先端の宇宙物理学にアクセスするための基盤の形成を目的とし,そのために必要不可欠である一般相対論を,週1回の輪講形式のゼミで1冊の教科書を読み進め基礎からしっかりと学んでいきます.具体的には,毎回2人の卒研生が順繰りに発表者となって1人1時間程度で説明していき,前期の間にアインシュタイン方程式の導出とその応用としてのブラックホール時空の解析まで進めます.後期には相対論とこれまでに学部で学んできた知識を結集させ,各々が選んだ卒業研究テーマに取り組んでもらいます.後期のゼミも週1回であり,毎回1〜2人の発表者が卒業研究の進捗状況を全員に説明します.例として2024年度の卒業研究テーマは以下の通りです:
- ビッグバン宇宙論の問題点
- 超弦理論に基づくインフレーション
- 暗黒エネルギー模型の状態方程式
- 暗黒エネルギーと暗黒物質の相互作用を加味した宇宙後期加速膨張(背景時空)
- 暗黒エネルギーと暗黒物質の相互作用を加味した宇宙後期加速膨張(摂動論)
- U(1)ゲージ不変なスカラー-ベクトル-テンソル理論におけるブラックホール解
- Schwarzschildブラックホール摂動と準固有振動
2. 必要な復習と望ましいスキル
- 一般相対論に関しては前期のゼミで詳しく学びますので,配属時点で一般相対論を熟知している必要はありません.
- 宇宙物理学は学部で学んだ物理数学,古典力学,解析力学,熱力学,電磁気学,量子力学,統計力学,流体力学といった諸分野の知識を全て用います.配属時点で全てを網羅的に理解している必要はありませんが,配属後は得手不得手に関わらず必ずこれらの分野を自主的に復習して下さい.
- 上記の学部で学んだ諸分野の知識に加え,実際に卒研を行う上では前期の輪講で取り扱う相対論の理解が必要不可欠です.また,後期の卒研テーマによっては宇宙論の基礎や場の量子論,超弦理論の知識が必要となる場合もあります.これらは三年生までに学んだ内容に関してしっかりとした土台を築いた上で初めて理解できるようになる分野であり上述の復習が重要となります.卒研生間での自主ゼミの開催等を推奨します.
- 最先端の分野では参考文献は大抵英語で書かれています.特に,大学院では英語で論文を読んだり,書いたり,発表したり,ということが日常になりますので,大学院への進学を視野に入れている学生は英語に慣れておいて下さい.
- 理論物理学の分野でも昨今は紙と鉛筆だけで一つの研究を完遂することは難しく,数値計算やMathematica等を用いた解析計算といったコンピュータを用いた計算技術が重要になっています.よって,これらのツールに慣れておくことが望ましいです.
- 色々と書きましたが,結局一番大事なのは物理を誤魔化さずに真に理解しようと真摯に向き合う誠実さです.楽しみながら真剣に卒業研究に取り組みましょう.
大学院での研究
東京理科大学大学院理学研究科物理学専攻において研究指導を行っています.卒研が最先端の宇宙物理学にアクセスするための基盤の形成を目的としていたのに対し,大学院での研究は世界中の研究者が切り開いてきた宇宙物理学の最前線へと飛び込み,新規な結果を生み出しその境界を押し拡げることを目的としています.
大学院では理学部第二部物理学科からの進学者は勿論,他学部や他大学からの進学者も積極的に受け入れています.ご興味のある方は是非ご連絡下さい.
2020年度の研究室設立から現時点までに15名の学生が修士号を,2名の学生が博士号を本研究室にて取得しました.修士論文・博士論文のタイトルは以下の通りです.
2024年度修了生
- 谷口 喜太郎(博士)
- "The effect of scalar-vector couplings in the weak- and strong-field regimes of gravity"
- 佐藤 圭悟(修士)
- 「Scalar-Gauss-Bonnet重力理論における中性子星の潮汐Love数」
- 鈴鹿 悠太(修士)
- 「ブラックホールシャドウを用いたGMGHS解における荷量の制限」
2023年度修了生
- 高橋 優生(修士)
- 「シフト対称GLPV理論における静的球対称ブラックホール解の解析」
- 冨江 亮友(修士)
- 「Einstein-Maxwell-Dilaton理論における数値相対論シミュレーション」
- 友澤 由斗(修士)
- 「シフト対称GLPV理論における静的球対称ブラックホール解の奇パリティ摂動についての安定性解析」
2022年度修了生
- 石井 葵(修士)
- 「ベクトル・テンソル理論におけるブラックホール」
- 神谷 陽紀(修士)
- 「宇宙マイクロ波背景放射の観測データを用いたインフレーション模型の制限」
- 高岸 心大(修士)
- "Axion hair in U (1) gauge-invariant scalar-vector-tensor theories"
- 村尾 清照(修士)
- 「Extended Cuscuton理論の構成」
2021年度修了生
- 梶原 健太(修士)
- 「拡張重力理論における低速回転ブラックホール解」
- 谷口 喜太郎(修士)
- 「物質場と直接結合したスカラー・テンソル理論におけるヴァインシュタイン機構」
2020年度修了生
- 中村 進太郎(博士)
- "Cosmology in vector-tensor theories with interaction between dark components"
- 金谷 雄太(修士)
- 「暗黒エネルギーと暗黒物質が結合した模型でのスケーリング解」
- 武本 雄貴(修士)
- 「原始ブラックホールを形成するConstant roll inflationモデルの構築」
- 星野 翔太(修士)
- 「massive Brans-Dicke理論におけるコンパクト連星系からの重力波放射」
- 松本 青空(修士)
- 「暗黒物質の候補としてのアクシオンに関する研究」