研究内容

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研究の背景

現在の日本や欧米など成熟した市場経済においては、新規顧客の獲得に掛かるコストが大きいことや、“デシルの法則”あるいは“パレート法則”の経験則から、既存顧客との関係性を重視したCRMの考え方がひろがり、自社の顧客を離脱させない顧客維持、優良顧客の識別と追加販売、通常顧客の優良顧客への転換、などがマーケターに求められる重要な戦略となっており、現代マーケティングの大きな研究領域を形成している。
CRMの実施に関する具体的課題は、取引履歴として自動的に蓄積される消費者行動に関する大量データを利用した「異質」な顧客を理解して個別対応することである。しかし、これまでの研究には次の2つの限界と課題がある。

  1. CRMを実践する手法としてのデータベース・マーケティングで展開されているモデルは、消費者の情報処理の「結果」である行動データを主として情報源として展開されているが、これで十分ではなく、消費者理論で研究される「原因構造」を反映させる必要がある。
  2. 市場全体として大規模な情報があっても、顧客ごとには複雑な消費者の情報処理の結果である行動を正確に理解できるほどに多くの情報は期待できないのが実情であり、顧客の異質性をどのように処理して推測を行うか。同じ消費者でも時間軸上で変動する時間的異質性をどのように処理するかが十分に検討されていない。

本研究はこれらを克服するための新しいアプローチとして、(i)に対しては、消費者理論を取り入れた演繹アプローチとの融合、(ii)については、消費者異質性の統計モデリング技法の体系的展開、を推進する。

本研究の特色と意義

(1)特色

市場行動を分析対象としながら行動に至るプロセスを説明する消費者理論を取り入れたCRM実践の研究である点、加えて、研究全般を通じて必要となる消費者異質性モデリングの展開も、空間上(消費者間)と時間軸(消費者内)の両面から統一的にアプローチする点が本研究の独創的な点である。つまり、

  1. データベース・マーケティング(帰納)と消費者理論(演繹)との融合
    既存のCRM実践のためのデータベース・マーケティングは、顧客購買履歴や顧客属性などのデータを分析するものが中心であり、消費者の属性と意思決定の結果である購買履歴情報のみを利用しているに留まり、消費者を理解する消費者理論とそれにもとづく観察調査データを取り入れたCRM実践手法開発研究はこれまでにない。
  2. (ii)  消費者異質性のモデル化
    現代マーケティングに求められる消費者異質性のモデリングも、消費者間のいわば空間的異質性のみならず、消費者行動の動学的変化を表す時間的異質性のモデル化は、顧客との時間的な長期的関係性の構築と維持を目的とするCRMにとって重要なモデリング上の課題である。これら空間的および時間的異質性は、これまで別々の土俵で議論されてきたが、異質性という視点から統一的に眺める研究はこれまでにない。

(2)意義

本研究の構成要素であるデータベース・マーケティングと消費者理論にはそれぞれつぎの長所と短所がある。

データベース・マーケティング:消費者の情報処理の結果として表れる行動としての市場購買履歴データに基づいて、顧客生涯価値測定と予測を行うものであり、リアルな市場環境での消費者行動にもとづく分析であるという長所を持つ反面、顧客の行動(結果)のみの事後的説明を目的とするという批判がある。データ分析による帰納的推論が大部分である。

消費者行動理論:実験室での選ばれた被験者に対する刺激の反応測定を主としてその理論的根拠としており、バーチャルなノイズのない状態での測定・検証により、行動に至るプロセスの理解を切り分ける長所があるのに対して、実験室データを重視していることから、現実の市場環境においてマーケティングが求める要請に応えられる枠組みとは必ずしもならない可能性もある。

これら両者を融合することにより、前述の自然科学における「データ同化」プロセスが生まれ、精度の高い新しいCRM実践手法が開発できることが予想できる。

研究テーマ

まず第1に、データベース・マーケティングによるCRM実践の各段階において、これまで提案されているマーケティング・モデルを、共通する課題としての消費者異質性モデリングの視点から再検討し、新しいモデル開発の研究を体系的かつ組織的に実施する。さらに、第2に、最新の消費者理論を取り入れてこれらを融合し、帰納的推論と演繹的推論の総合による高精度の顧客管理モデルを開発して新しいCRMを展開する。その際、消費者の情報処理過程を跡付ける理論の検証やCRMに特化した理論の修正も加えてモデルの中に取り入れてゆく。

図表

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