IL-17と新規IL-17産生ヘルパーT細胞サブセット

岩倉 洋一郎、石亀 晴道

Summary

従来CD4+T細胞には細胞性免疫に関与する1型ヘルパーT(Th1)細胞と、液性免疫に関与するTh2細胞があることが知られていた。Th1、Th2細胞ではそれぞれ特徴的にT-betやGATA3と呼ばれる転写因子を発現しており、IFN-gやIL-4を発現する。ところが最近、Th17細胞と呼ばれる新たなT細胞サブセットが存在し、これがアレルギー応答や自己免疫、細胞外増殖性の細菌感染防御などで中心的な役割を果たしていることが分かってきた。Th17細胞は特徴としてIL-17を産生し、RORγtと呼ばれる転写因子を発現する。Th17細胞の分化はTGF-bとIL-6によってナイーブT細胞から誘導され、IFN-gやIL-4は分化に阻害的であり、IL-23がその生存に関与している。Th17細胞は自己免疫やアレルギーの新規治療ターゲットとして、あるいは感染症治療薬として大いに注目を集めている。

Key words: CIA、RORγt、EAE、STIRファミリ?、Act1、IL-22

はじめに

 IL-17は1993年にマウスのT細胞ハイブリドーマからクローニングされ、CTLA-8と名付けられた1)。1995年には、このタンパク質にNF-kBの活性化能やIL-6誘導能があることが示され、新しいサイトカインとしてIL-17と命名された2)。IL-17は分子量20-30kDのペプチドからなるホモダイマーの糖蛋白質であり、現在、IL-17(IL-17Aとも呼ぶ)以外に、相同性を持つ6個のファミリー分子(IL-17、IL-17B、IL-17C、IL-17D、IL-25(IL-17E)、IL-17F)からなることが知られている(図1)3-5)。IL-17は主に活性化T細胞より産生され、繊維芽細胞や上皮細胞、血管内皮細胞、マクロファージなど種々の細胞に作用して、炎症性サイトカインやケモカイン、細胞接着因子など、種々の因子を誘導して炎症を誘導することが知られている(表13, 4)。最近、IL-17を産生するT細胞が従来知られていたTh1細胞、あるいはTh2細胞と呼ばれるT細胞サブセットではなく、新たなTh17細胞と呼ばれるサブセットから産生されることがわかり、炎症や感染防御に於けるこの細胞集団の役割が大きな注目を集めている。本稿では、最近明らかとなってきたTh17細胞の分化誘導メカニズムと、IL-17の炎症性疾患や細菌感染における役割について概説する。


図1:IL-17サイトカイン(A)とIL-17レセプターファミリー(B)の系統樹
スケールは塩基置換率を示す。

Ⅰ.Th17細胞

 これまでCD4ヘルパーT細胞は、Th1細胞、およびTh2細胞とよばれる2つのサブセットからなることが知られていた(図2) 6)。Th1細胞は主に細胞性免疫や細胞内寄生体の排除に関与し、IFN-gを産生する。一方、Th2細胞は液性免疫や細胞外寄生体に対する感染防御に関与し、IL-4、 IL-5、IL-13等を産生する。ナイーブT細胞からTh1細胞への分化は、p40およびp35サブユニットのヘテロダイマーからなるIL-12が、STAT4を活性化することによってIFN-gの産生を誘導する。IFN-gはSTAT1を活性化することにより、転写因子T-betの発現を誘導し、この転写因子がTh1細胞特異的な遺伝子の発現を誘導することがわかっている。一方、Th2細胞はIL-4がSTAT6の活性化を介してGATA-3の発現を誘導し、この転写因子がTh2細胞特異的な遺伝子の発現を引き起こすことが知られている6)。また、GATA-3はTh1細胞特異的な遺伝子の発現を抑制し、逆にIFN-gはTh2細胞の分化を抑制し、両者が相互排他的であることが知られている。


図2:IL-12サイトカインファミリー

 Th1、Th2以外の新たなサブセットの存在は、2000年Infante-Duarteらにより初めて示唆された7)。彼らはBorrelia burgdorferi刺激により誘導されるIL-17を産生するCD4+T細胞が、従来言われているようなIFN-g産生細胞でもIL-4産生細胞でもなく、IL-17とTNFを同時に産生するような細胞集団であることを見出した。一方、我々のグループは関節炎の発症機構を解析する過程でIL-17欠損マウスを作製し、IL-17が接触型過敏症や遅延型過敏症、気道過敏症等のアレルギー応答において重要な役割を果たしていることを初めて示した8)。また、コラーゲン誘導関節炎(CIA)や接触型過敏症、実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)などがIL-17を欠損させると強く抑制されるのに対し、IFN-g欠損では抑制されないことから、このT細胞集団がTh1やTh2とは異なる新しい集団であることを提唱した9)。同じ頃、新規IL-12ファミリーサイトカインであるIL-23(IL-12共通のサブユニットであるp40とIL-23特異的サブユニットであるp19のヘテロダイマー)がIL-17の強力な誘導因子であることが示され、IL-17産生細胞はIL-12やIL-4で誘導されるTh1細胞あるいはTh2細胞とは異なるT細胞であることが示唆された(図2)10, 11)。その後、後で述べるように複数のグループにより独立に、IL-17を産生する細胞集団がTh1細胞やTh2細胞とは異なる集団であることが示され、これらのCD4+T細胞集団をTh17細胞と呼ぶことが受け入れられるようになっている12, 13)(図3)。


図3:CD4+T細胞サブセットの分化機構
ナイーブCD4+前駆T細胞(Thp)からのTh17細胞の分化は、TGF-bとIL-6のシグナルによりSTAT3が活性化されることが重要であり、これによりTh17分化に必須の転写因子であるRORgtが誘導される。さらに、RORgtはTh17細胞上にIL-23R発現を誘導し、Th17細胞の生存や機能維持に重要であるIL-23に反応できるようになる。Th17細胞の分化は、IFN-g、IL-4、IL-2、IL-25、IL-27などの様々なサイトカインにより抑制性的に制御されている。一方、Tregの分化はTGF-bやIL-2-STAT5シグナルによりFoxp3が誘導されることが重要であり、その分化はIL-6により抑制される。Th1細胞の分化には、IL-12-STAT4、IFN-g-STAT1、T-betといったシグナル経路に依存している。また、Th2細胞はIL-4、STAT6、GATA3が重要であることが分かっている。これらT細胞サブセットの分化機構は、転写因子やサイトカインの依存性が異なっており相互排他的であると考えられている。

Ⅱ.Th17細胞の分化誘導メカニズム

 試験管内でメモリーCD4+T細胞をIL-23で刺激することによりIL-17産生が誘導されることや10)、IL-23のp19サブユニットを欠損させたり、p19の特異抗体で阻害したりするとTh17細胞が大きく減少することから14, 15)、当初IL-23がTh17細胞の分化誘導に重要な役割を果たしていると考えられた。しかし、ナイーブCD4+T細胞をTCR刺激存在下にIL-23で刺激してもTh17細胞はほとんど分化できない。これは、ナイーブT細胞にはIL-23Rが発現していないためであり、このことはIL-23がナイーブT細胞からのTh17細胞の分化誘導には関与していないことを示している。その後、分化誘導にはTGF-bとIL-6が重要な役割を果たしていることが報告された(図3)16, 17)。TGF-bとIL-6はナイーブT細胞に作用して、RORγtと呼ばれる転写因子の発現を誘導する18)。RORγtは核内オーファンレセプターであり、RORγtを欠損させるとTh17細胞が分化できなくなることや、逆にRORγtを強制発現することによりナイーブT細胞をIL-17産生細胞へと分化させられることから、この転写因子がTh17細胞分化へのコミットメントに関与しているか、あるいは直接IL-17の転写に関与している可能性が示唆されている。また、RORγtはT細胞上にIL-23Rの発現を誘導することから、Th17細胞にコミットした細胞の生存、維持にも関与しているものと考えられる。RORγtの発現誘導にはIL-6によるSTAT3の活性化が重要であることが示されており、逆にIL-2によるSTAT5の活性化は発現を抑制する(図3)19)。IL-2は別のCD4+T細胞サブセットである制御性T細胞(Treg)の分化に必要であり、IL-2欠損マウスは重篤な自己免疫を発症するが、これはTregが減少すると同時にTh17細胞の過剰分化が起こるためである可能性が示唆されている19)

 TGF-bのTh17細胞分化の重要性は、T細胞でTGF-bを過剰発現させたマウスではIL-17産生が亢進しEAEが増悪化することや、逆にT細胞上でドミナントネガティブTGF-βRⅡを過剰発現させたマウスや、炎症局所にanti-TGFβ抗体を投与したマウスではEAEの発症が抑制されることからも明らかとなっている16, 20)。ところで、試験管内においてナイーブT細胞をTGF-b単独で処理するとTh17細胞ではなくTregが誘導される(図3)。このように、IL-6の存在の有無により全く正反対の機能を持つ細胞集団に分化することはきわめて興味深く、IL-6の発現制御がTh17細胞依存性疾患の治療につながる可能性を示している。ただ、Th17細胞が中心的な役割を果たしていると考えられる病態に於いて、IL-6を欠損させることが必ずしも発症抑制につながらない例も知られており、Th17細胞の分化誘導機構、さらにその中でのIL-6の位置づけに関しては、さらなる検討が必要であると考えられる。

 T-bet やSTAT4、STAT1 といったTh1細胞分化に重要である転写因子や、Th2細胞分化に必須であるSTAT6の欠損マウスにおいてもTh17細胞分化に障害は認められない12, 13)。さらに、anti-IFN-g抗体やanti-IL-4抗体を添加することにより効率よくTh17 細胞が分化してくることから、IFN-gやIL-4はTh17細胞分化をむしろ抑制的に調節していることが明らかとなった。同様に、シグナル伝達にSTAT1を用いるT型IFNや新規IL-12サイトカインファミリーであるIL-27もTh17分化を抑制することが明らかとなっている(図3)21, 22)。その後、IFN-gはIL-23Rの発現を抑制することが示され、また、IL-4による抑制メカニズムはまだ分かっていないが、STAT6が直接IL-17発現を抑制することも示唆されている。

Ⅲ.IL-17のシグナル伝達機構

 IL-17が主に活性化T細胞から産生されるのに対し、IL-17Rは種々の細胞で構成的に発現している。リガンドと同様にレセプターもファミリー(IL-17RA、IL-17RB、IL-17RC、IL-17RD、IL-17RE)を形成していることが分かっている(図1)5, 23)。以前よりIL-17R単独では、IL-17に対する親和性が低いことから、他のサブユニットが存在する可能性が指摘されていたが、最近、IL-17はIL-17RAとIL-17RCから成るヘテロダイマー受容体に結合し、シグナルを伝えることが明らかとなった(表224)。また、IL-17と最も相同性の高いIL-17Fのシグナル伝達にも同じレセプターが関与していると考えられているが、正確なことは分かっていない。また、他のファミリー分子については、IL-17BとIL-25がIL-17RBに結合することがわかっている以外は詳細はまだ不明である。

 IL-17は受容体に結合した後、TRAF6を介してNF-κBやJNKを活性化することが知られており、IL-1やTNFといった他の炎症性サイトカインと同様なシグナル伝達を介してその作用を発揮していると考えられていた。しかし、IL-17Rの細胞内領域にはこれまで知られている機能ドメインが存在しておらず、その詳細なシグナル伝達経路は不明であった。最近、IL-17Rファミリーには、SEFIRドメインというIL-1R/TLRのTIRドメインに相当するシグナル伝達に重要なモチーフが存在することが報告され、TIRファミリーとSEFIRファミリーを合わせてSTIRファミリーと呼ぶようになっている。SEFIRドメインを持つ分子には、上記IL-17Rファミリーの他にAct-1というアダプター分子がある。最近、IL-17のシグナル伝達にはIL-1シグナルに必須であるMyD88やIRAK4は必要ではなく、Act-1がIL-17Rのアダプター分子として機能していることが明らかとなった(図4)25)。Act-1のshRNAを用いた機能阻害実験やAct-1欠損細胞を用いた実験から、Act-1とIL-17RのSEFIRドメイン同士が会合し、Act-1のTRAF6結合ドメインにTRAF6が会合することにより、IKKやJNKを活性化することでNF-kBやAP-1を活性化し、下流でIL-6などの炎症性メディエーターの発現を誘導することが明らかとなった25, 26)。しかし、Act-1欠損細胞においてもIL-17刺激によるERKの活性化は正常であることからAct-1に依存していないシグナル経路も存在することが示唆されている。また、B細胞においてAct-1はCD40やBAFFのシグナル伝達を抑制していることも明らかとなっており、今後Act-1がどのようにIL-17RシグナルとCD40/BAFFシグナルを制御しているかについて調べる必要がある。


図4:IL-17のシグナル伝達機構
IL-17がIL-17Rに結合することにより、SEFIRドメインを介してAct-1がIL-17Rに会合する。これにより、TRAF6がAct-1のTRAF結合ドメインに会合することにより、下流のNF-kB経路や、MAPキナーゼ経路、C/EBP経路が活性化され、炎症性サイトカインやケモカインが誘導される。この他に、Act-1非依存性のシグナル経路の存在も示唆されているが詳細は不明である。

Ⅳ.Th17細胞の炎症、アレルギー応答に於ける役割

 当研究室の中江らはIL-17欠損マウスを作製することに成功し、このサイトカインが自己免疫や炎症応答においてきわめて重要な役割を果たしていることを初めて示した8)。このなかで中江らはIL-17欠損マウスを用いて、DNFBやTNCBによる接触型過敏症を誘導し、発症が抑制されることを示した(図5)。また、メチル化BSAによる遅延型過敏症反応も有意に抑制されることや、OVA誘導による好中球依存的な気道過敏症も抑制されること(図5)、CIAやEAEも強く抑制されることを示した(図6)。これまでにIL-17にはG-CSFやCXCL8等の発現を誘導する活性があり、このため顆粒球合成促進や好中球の活性化、炎症サイトへの遊走等が引き起こされることや、IL-1やIL-6、TNF等の炎症性サイトカインや、ICAM-1等の細胞接着因子、iNOS、COX、メタロプロテアーゼなどの発現を誘導する活性も持っていることなどが知られており、一般的に活性化エフェクターT細胞が産生するIL-17のこれらの活性によって炎症が引き起こされるものと考えられている(図7)。しかし、中江らはIL-17欠損マウスに接触型過敏症や遅延型過敏症、CIAを誘導したとき、抗原特異的なT細胞応答や抗体産生の低下が認められたことから、IL-17が増悪期だけではなく、T細胞のプライミングのステージでも重要な役割を果たしていることを示唆している8, 9)


図5:アレルギー応答におけるIL-17の役割
IL-17欠損マウスでは、(A)DNFB誘導接触型過敏症や(B)メチル化BSA誘導遅延型過敏症が有意に抑制された。また、(C)DO11.10トランスジェニック(Tg)マウスを用いた好中球依存的な気道過敏症においても、IL-17の欠損により抑制されることが分かった。


図6:自己免疫疾患におけるIL-17の役割
(A)IL-1Rアンタゴニスト欠損マウスやHTLV-Iトランスジェニックマウスに自然発症する自己免疫性関節炎、さらにコラーゲン誘導関節炎において、IL-17を欠損させることにより関節炎の発症を顕著に抑制できることが分かった。(B)IL-17欠損マウスでは、自己免疫性脳脊髄炎の発症も抑制され、これら自己免疫疾患の病態形成にIL-17が中心的な役割を担っていることが明らかとなった。


図7:慢性炎症と感染防御におけるIL-17の役割
(A)慢性炎症において、マクロファージや樹状細胞は抗原刺激によりIL-23を産生し、Th17細胞からのIL-17産生を促進させる。IL-17は、T細胞のプライミングを亢進させ、さらに様々な炎症性メディエーターを誘導することにより炎症応答を引き起こす。一方、IL-12刺激によりTh1細胞はIFN-gを産生し、Th17細胞の分化を制御することで慢性炎症を抑制的に調節している。(B)病原体感染により活性化したマクロファージや樹上細胞からIL-23が産生され、IL-23は感染局所に存在するTh17細胞やその他のIL-17産生細胞からのIL-17産生を誘導する。IL-17はG-CSFやケモカイン産生を介して好中球の感染局所への遊走を促し、病原体を排除する。一方、Th1細胞はIFN-gを産生し、CD8+細胞障害性T細胞(CTL)、NK細胞やマクロファージを刺激する。IFN-gはMHC分子発現を誘導することにより抗原提示を促進したり、パーフォリンやグランザイム産生を誘導したりすることにより病原体を排除する。

 さらに、我々はこれまでにHTLV-IトランスジェニックマウスとIL-1Rアンタゴニスト欠損マウスを作製し、これらのマウスが関節リウマチによく似た自己免疫性の関節炎を自然発症することを報告してきたが27)、これらのマウスのIL-17を欠損させると関節炎の発症が強く抑制されることがわかった(図6)28)。この結果は、IL-17がIL-1の下流に位置することを示したものであり、IL-17は炎症誘導だけではなく、自己免疫の発症においても重要な役割を果たしているものと考えられる。これまで、関節リウマチや多発性硬化症を代表とした自己免疫疾患は炎症局所においてIL-12やIFN-gの発現が亢進していることや、anti-p40抗体を投与することにより症状の緩和が認められることから、Th1細胞が疾患発症に関与していると考えられていた。しかし、CIAやEAEといったマウス自己免疫疾患モデルにおいて、p35、IL-12Rb2、IFN-g、STAT1欠損マウスでは症状が増悪化することが分かり、Th1細胞が病態形成に重要であるという考えと一致しなかった。最近、p35 (IL-12のみ欠損)、p19(IL-23のみ欠損)、p40(IL-12/IL-23どちらも欠損)欠損マウスを用いた解析から、p19欠損マウス、p40欠損マウスではEAEやCIA、IL-10欠損マウスに於ける炎症性大腸炎などの発症に耐性であり、一方、p35欠損マウスは発症することから、IL-12ではなくIL-23が自己免疫疾患に重要な役割を果たしていることが明らかとなっている15, 29, 30)。このとき、p19欠損マウスではCD4+T細胞からのIFN-g産生は正常であるがIL-17産生が著しく低下しており、一方、p35欠損マウスではIFN-g産生は低下するがIL-17産生は亢進していることから、病態とIL-17産生に正の相関があることが認められている。さらに、EAEにおいてIL-23で誘導した髄鞘構成タンパク質特異的なTh17細胞は、IL-12で誘導したTh1細胞に比べて極めて病態形成能が高いことが分かった14)。実際、IL-17を欠損させると、これらの発症は強く抑制され、Th17細胞がこれら自己免疫疾患の発症に中心的な役割を果たしていることが証明された9, 31)。しかしながら、p19欠損マウスやp40欠損マウスではCIAやEAEの発症に完全に耐性であるのに対し、IL-17欠損マウスでは部分的にしか抑制できないことから、IL-23の作用はIL-17の作用のみでは説明できないことが示唆されている。最近、Th17細胞はIL-17、IL-17F、IL-6やTNFに加えて、新規IL-10サイトカインファミリーであるIL-22も産生することが分かり32, 33)、これらIL-17以外のサイトカインもIL-23の下流で疾患の発症に関与している可能性が考えられる。

Ⅴ.Th17細胞の感染防御に於ける役割

 これまでに、細菌感染防御にはTh1が重要な役割を果たしており、寄生虫感染の排除にはTh2応答が重要な役割を果たしていることが明らかとなっている。一方IL-17については、IL-17R欠損マウスでKlebsiella pneumoniae感染に感受性が高くなることなどから、生体防御に重要な役割を果たしていることが分かっているが34, 35)、詳細な作用メカニズムについては不明な点が多い。前述したように、IL-17産生は、Borrelia burgdorferiや、LPS、Klebsiella pneumoniaeなどの菌体成分により誘導される。これらの成分は抗原提示細胞に作用してIL-23を誘導することにより、IL-17産生を促進するものと考えられる。IL-17R欠損マウスではKlebsiella pneumoniae感染後肺感染局所において、好中球の遊走/機能に重要な役割を果たしているCXCL1やCXCL2、G-CSFなどの産生が低下しており、好中球の遊走に障害が認められる34, 35)。同様な現象は、p19欠損マウスでも認められる34, 35)。このマウスではKlebsiella pneumoniae感染後にIL-17産生が低下しているが、IFN-g産生は正常である。一方、p35欠損マウスではIL-17産生は正常であるがIFN-g産生が低下し、同様に菌体を排除できないことが分かっており、IL-23/IL-17軸はIL-12/IFN-g軸とは異なるメカニズムで生体防御に関与していると考えられている(図7)。また、IL-17R欠損マウスでは、Candida albicans感染やToxsoplasma gondii感染にも高感受性であることが分かっている。さらに、マウス病原性大腸菌感染モデルであるCitrobacter rodentium感染においても、p19欠損マウスは感染後菌体を排除することができない17)。興味深いことに、p19欠損マウスでは感染後の粘膜固有層細胞より分離したTh17細胞からのIL-17産生は正常である。この結果は、IL-23はTh17細胞分化には必須ではないことを示したものであり、CIAやEAEと同様にIL-23によって誘導されるIL-17以外のサイトカインの関与を示唆している。

 一方、結核菌やToxsoplasma gondiiCryptococcus neoformansなどの感染モデルにおいては、p40 欠損マウスの方がp35 欠損マウスに比べ感受性が亢進することが知られており、IL-23/IL-17の重要性が示唆されていた。しかしながら、p19欠損マウスはp35欠損マウスより感染に対して抵抗性であり、IL-23の作用はIL-12が欠損したときに顕著に認められることから、IL-23はIL-12の作用に対し補助的に機能しており、これら感染モデルにおいてはIL-23/IL-17軸よりもIL-12/IFN-g軸が感染防御に重要であると考えられている36-38)

 IL-17R欠損マウスやp19欠損マウスではIL-17とIL-17Fのどちらの機能にも障害があることから、細菌感染におけるIL-17とIL-17Fの機能的重複性について今後調べる必要がある。また、IL-12/IFN-gシグナルに障害があるヒトにおいて、感受性が亢進する感染症は結核菌とSalmonella entritidis感染だけであることが知られており11, 39)、ヒトにおいてIL-23/IL-17軸が細菌感染の生体防御にどれだけ貢献しているかについては今後詳細な検討が必要である。

Ⅵ.今後に残された課題

以上述べたほか、以下の様な問題が今後の課題として残されている。

・Th17細胞以外のIL-17産生細胞の役割

  Th17細胞から産生されるIL-17が重要な役割を果たしていることはTh17細胞の移植実験などから明らかであるが、IL-17は他にCD8+T細胞、gdT細胞、好中球、単球からも産生されることが分かっている。これらTh17細胞以外から産生されるIL-17がどのように制御され、また、どのような役割を果たしているかはまだほとんど明らかとなっていない。

・IL-17ファミリーの機能

 現在、IL-17ファミリーとして6個の分子が知られている(図1、表2)。中でもIL-17とIL-17Fは、遺伝子がヒトでは第2染色体 (2q31)、マウスでは第1染色体(1A4)に隣接して存在しており、相同性が高く、同じIL-17Rに結合するため、その機能が注目されている。また、IL-25はTh2型の生理作用を有しており、IL-17の活性を抑制的に制御する役割を持つことが報告されている40)。IL-17とIL-17Fは同じ細胞から産生されることが知られているが、IL-25は活性化Th2細胞やCD8+T細胞、マスト細胞の他、脳や肺でも産生される。また、他のファミリー分子は筋肉や神経、消化管など種々の細胞で産生されることが知られており、IL-17とは異なる役割を果たしているものと考えられている。これらのIL-17ファミリー分子の機能解析は、IL-17Rファミリー分子の機能解析と合わせ、今後に残された課題である。

・ 免疫系の恒常性維持に於けるTh17細胞の役割

 ヘルパーT細胞には少なくとも4つのサブセット(Th1、Th2、Th17、Treg)が存在し、T細胞依存性の免疫応答において重要な役割を果たしていることが分かってきた。この内、Th1細胞とTh2細胞の分化は相互排他的であり、Th1およびTh2細胞がTh17細胞分化を抑制することも知られている。また、Th17細胞がTh1、Th2細胞分化に対し抑制的であることも示唆されている。Treg細胞のTh17細胞分化に対する作用は知られていないが、Tregの分化に必要なIL-2はTh17細胞分化を阻害し、逆にIL-6の存在はTreg細胞分化を抑えTh17細胞分化を促進する。この様に、各T細胞サブセットは相互に緊密な相互調節によって恒常性を維持していることが分かる。すでに、病原体によってTh1細胞あるいはTh2細胞への誘導が起こりやすいものが知られているが、Th17細胞の分化に関しては良くわかっていない。今後、病原体の種類や抗原提示細胞の種類によって、Th17細胞の分化がどの様に制御され、他のT細胞サブセットとのバランスがどの様に保たれているのかを明らかにすることが、自己免疫疾患などの発症機構や種々の病原体に対する感染防御機構を理解する上で重要であると考えられる。

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