界面をデザインする

(a) 高機能性界面活性剤のデザインとその界面物性>ジェミニ型界面活性剤

研究目的

 ジェミニ型界面活性剤は通常の一鎖一親水基型の界面活性剤二分子がスペーサーにより親水基もしくはその近傍で連結された構造を有する界面活性剤である。通常の界面活性剤に比べて界面活性能が格段に優れる、少量の添加で優れた機能性を発現する、炭素数が多いのにもかかわらずクラフト点が低い、などの利点を有するため、近年、次世代型界面活性剤として大きな注目をあびている。しかしながら、ジェミニ型界面活性剤の研究は発展途上であり、その構造特性はまだまだ明らかになっていない。本研究ではこのジェミニ型界面活性剤に新たな官能基を導入することによって、種々の機能性を付与した新規機能性ジェミニ型界面活性剤の創製を目的としている。

将来の方向性

 新しい官能基を導入することによる高付加価値な機能性ジェミニ型界面活性剤の創製はもちろんのこと、ジェミニ型界面活性剤を実用化する上で最大の難点となっている合成コストの高さを克服した、低コストで環境負荷の少ないジェミニ型界面活性剤の合成経路の確立も同時に目指している。

キーワード

関連装置

ジェミニ型界面活性剤

表面張力計   →界面活性剤水溶液の表面張力測定

蛍光分光光度計 →界面活性剤水溶液の臨界ミセル濃度の決定

(a) 高機能性界面活性剤のデザインとその界面物性>生体適合性界面活性剤(シクロアミロース)

研究目的

 シクロアミロースは、デンプンなどを原料にして微生物や酵素などにより合成された高重合度環状α-1,4-グルカンであり、高い水溶性、還元力を持たない、包接能を有するなどの特徴がある。シクロアミロースは高い親水性を有しているので、その分子中の水酸基を介して疎水基を修飾すれば、生体安全性・環境適合性に優れた高分子界面活性剤を合成できると考えられる。当研究室では、シクロアミロース修飾界面活性剤を新規に合成し、その溶液物性について検討を行うことを目的とする。

将来の方向性

 本研究ではシクロアミロース修飾界面活性剤が優れた界面活性能を有することを見いだしている。シクロアミロースは生体安全性に優れるため、医薬、化粧品、食品など様々な分野に、目的に応じたHLBを有する高分子界面活性剤を提供できるものと期待される。

キーワード

関連装置

シクロアミロース、生分解性

Whilhelmy型表面張力計  → 表面張力測定

急速凍結装置       → 試料の急速凍結

フリーズレプリカ作成装置 → レプリカ作成

(a) 高機能性界面活性剤のデザインとその界面物性>高純度非イオン界面活性剤と液晶乳化

研究目的

 液晶乳化法とは,水/界面活性剤系/油系で形成する液晶を水中または油中に分散させることでエマルションを調製する方法である。液晶乳化法の利点として,液晶形成において油/水界面張力が著しく低下していることから弱い撹拌力でも微細な乳化粒子を調製できること,また,乳化粒子は構造体を保持したまま分散することから界面膜の強度が増大し,合一に対して安定なエマルションが得られるということが挙げられる。本研究では,高純度非イオン界面活性剤を用いることにより,従来の低純度な界面活性剤では認められなかった広範囲な液晶相を利用した液晶乳化を行い、その幅広い分野への応用を目的とした物性評価を行っている。

将来の方向性

 現在までに,ラメラ液晶,ヘキサゴナル液晶など異なる規則構造を持つ液晶相からそれぞれ液晶乳化を行い,乳化粒子の大きさが最小で300nm以下となるO/Wエマルションの調製に成功した。また,油相を変化させた系や,新たに多価アルコールを添加した系についても同様に乳化を行い分散安定性などの物性評価の比較することで,様々な系での応用を目指している。

キーワード

関連装置

液晶乳化法,高純度非イオン界面活性剤

動的光散乱       →  粒子径分布測定

光学顕微鏡       →  粒子の直接観察

(a) 高機能性界面活性剤のデザインとその界面物性>アニオン/カチオン界面活性剤のユニークな溶液物性

研究目的

 界面活性剤混合水溶液は、各成分の単独水溶液では観測されない興味深い相挙動を示す。カチオン/アニオン界面活性剤混合水溶液は、一般の界面活性剤溶液と比べ希薄な系においても様々な分子集合体を形成する。特に細胞モデル、微小反応場などへの応用が期待されるベシクルが、外力を加えずに自発的に形成することが注目されている。しかし、通常、等モル比付近では不溶性の塩を形成し易いため、実用化が困難であるのが現状である。そこで本研究では、沈殿の形成しにくい分散安定性に優れるベシクルの調製を目的としている。

将来の方向性

 現在までに混合による沈殿形成を抑制するために、カチオン界面活性剤として親水性の強いノニオン性のポリグリセリン基をアルキル4級アンモニウム塩に修飾したものを用い、アニオン界面活性剤(アルキル硫酸塩)との混合水溶液における界面物性の検討を行った。その結果、カチオン/アニオン界面活性剤混合水溶液が等モル付近においても、沈殿を形成せずに、ベシクルが形成することが分かった。今後は、このベシクルの実用化に向け生体適合性のある界面活性剤などを用いることも検討する。

キーワード

関連装置

自発形成ベシクル、ナノテクノロジー

カタアイオニック(Catanionic)界面活性剤

Cryo-TEM →  ベシクルなどの分子集合体の観察

動的光散乱 →  分子集合体の粒子径分布測定

ζ電位     →  分子集合体の表面電荷測定

 

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