界面をデザインする
(c) 新しい発想のエマルション>サーファクタントフリーエマルション>疎水性油による安定化
研究目的
水と油のように互いに混ざり合わない2種類の液体に、界面活性剤を添加し、攪拌・超音波といった外力を付与することで一方の液体は他方の液体中に分散する。このような分散系はエマルションと呼ばれ、化粧品・医薬品・食品など様々な分野に応用されている。一方、ミニエマルションは、油相に少量の疎水性分子を添加した混合油相を通常のエマルションよりも低濃度の界面活性剤水溶液中に分散させることにより調製されるエマルションであり、通常のエマルションよりも不純物としての界面活性剤の混入が少ないといった利点から、懸濁重合によるポリマー微粒子調製などに応用されている。そこで、本研究はミニエマルションの物性や安定性に及ぼす種々の因子について検討すると共に、ポリマー微粒子調製に最適なミニエマルションを調製することを目的としている。
将来の方向性
ポリマー微粒子の調製、ミニエマルションの応用範囲を広げる(流動パラフィン、オリーブ油など)
キーワード
関連装置
O/W型ミニエマルション
超音波照射器 →エマルションの調製
動的光散乱光度計 →エマルションの評価
(c) 新しい発想のエマルション>サーファクタントフリーエマルション>高分子による安定化
研究目的
水中に油を添加して強い剪断力を与えるとエマルションが調製できるが、凝集・合一、クリーミング等の油滴成長過程により、容易に二相に分離するため、通常は分散安定性の向上を目的として界面活性剤が添加される。当研究室ではこれまでに、界面活性剤を用いなくても疎水性高分子や第二の油を添加することにより界面活性剤無添加系エマルションの分散安定性を向上させることに成功している。本研究では、疎水性高分子を添加した界面活性剤無添加系エマルションの安定性をより高めるために、エマルション調製時の温度に着目した。エマルション調製を高温で行い、疎水性高分子ゲルのゾル・ゲル転移を利用することにより、より効果的に疎水性高分子に保護された油滴を調製することを目的としている。
将来の方向性
グラジュメット型ドラッグ・キャリアーとしての応用。さらに優れた分散安定性を有する疎水性高分子保護サーファクタントフリーエマルションの調製。
キーワード
関連装置
界面活性剤無添加、O/W型エマルション
超音波照射器 →エマルションの調製
動的光散乱光度計 →エマルションの評価
(c) 新しい発想のエマルション>サーファクタントフリーエマルション>疎水性固体粒子による安定化
研究目的
互いに混ざり合わない2種類の液体のいずれかの一方が他方へ細粒状に分散した系をエマルションといい、分散安定性を向上させるために、通常は界面活性剤が用いられている。しかし、環境保全の観点から界面活性剤の使用量を低減させる傾向にある。一方で、粒径がナノオーダーの固体微粒子が乳化能を示すことが報告され、界面活性剤無添加で環境保全を考慮したエマルションの調製が期待される。しかし、固体微粒子を乳化剤として用いて調製したエマルションの分散安定性に寄与する諸因子は明らかにされていない。そこで、本研究では乳化剤として疎水性処理をした固体微粒子を用いてエマルションを調製し、分散状態に与える影響について検討している。
将来の方向性
疎水性処理をした固体微粒子を用いて調製したエマルションの分散状態に与える影響を固体微粒子のヌレ性の観点から検討した結果、2種類の液体に適度な親和性を持つ固体微粒子が分散状態に優れたエマルションを調製することが分かった。今後は、この結果を基に様々な固体微粒子に乳化能を持たせ、エマルションの形成メカニズムを探求する予定である。
キーワード
関連装置
エマルション、超音波、表面改質、顔料、ヌレ性
超音波照射器 →エマルションの調製
FT-IR →表面改質の評価確認
SEM →粒子の表面状態の観察
OM →エマルションの観察
(c) 新しい発想のエマルション>サーファクタントフリーエマルション>反応場とする貴金属ナノ粒子の調製
研究目的
金属ナノ粒子調製法の一つとして、W/O型エマルションの水滴を微小反応場として用いる方法が知られている。しかし、この方法で調製される微粒子には不純物として界面活性剤が混入するため、金属が本来もつ性質をそこなう恐れがある。一方、当研究室ではこれまでに、適切な条件で超音波処理を行うことにより、界面活性剤を添加することなく準安定なサーファクタントフリーO/W型エマルションが調製できることを報告している。同様の方法で新たにサーファクタントフリーW/O型エマルションを調製できれば、その水滴をクリアな微小反応場として利用することで、より高純度の金属微粒子の調製が期待できる。さらに、水に超音波を照射した際に発生する水素ラジカルを還元種とすることで、還元剤も含まない粒子の調製が期待される。そこで本研究では、安定なサーファクタントフリーW/O型エマルションを微小反応場とした超音波照射による金属ナノ粒子の調製を目的としている。
将来の方向性
現在までに、サーファクタントフリーW/O型エマルションを微小反応場として、金、銀ナノ粒子の調製に成功している。さらに、他の金属ナノ粒子の調製を試みる。調製される粒子の形状や大きさの制御。
キーワード
関連装置
界面活性剤無添加、W/O型エマルション、ナノ粒子
超音波照射器 →エマルションの調製、および金属前駆体の還元
透過型電子顕微鏡 →粒子の評価
紫外可視分光光度計 →粒子の評価
(c) 新しい発想のエマルション>高純度非イオン界面活性剤と液晶乳化
研究目的
液晶乳化法とは,水/界面活性剤系/油系で形成する液晶を水中または油中に分散させることでエマルションを調製する方法である。液晶乳化法の利点として,液晶形成において油/水界面張力が著しく低下していることから弱い撹拌力でも微細な乳化粒子を調製できること,また,乳化粒子は構造体を保持したまま分散することから界面膜の強度が増大し,合一に対して安定なエマルションが得られるということが挙げられる。本研究では,高純度非イオン界面活性剤を用いることにより,従来の低純度な界面活性剤では認められなかった広範囲な液晶相を利用した液晶乳化を行い、その幅広い分野への応用を目的とした物性評価を行っている。
将来の方向性
現在までに,ラメラ液晶,ヘキサゴナル液晶など異なる規則構造を持つ液晶相からそれぞれ液晶乳化を行い,乳化粒子の大きさが最小で300nm以下となるO/Wエマルションの調製に成功した。また,油相を変化させた系や,新たに多価アルコールを添加した系についても同様に乳化を行い分散安定性などの物性評価の比較することで,様々な系での応用を目指している。
キーワード
関連装置
液晶乳化法,高純度非イオン界面活性剤
動的光散乱 → 粒子径分布測定
光学顕微鏡 → 粒子の直接観察
(c) 新しい発想のエマルション>高純度非イオン界面活性剤と液晶乳化
研究目的
消泡剤には、オイル型・エマルション型・粉末型などさまざまな種類があるが、その中でもエマルション型消泡剤は、シリコーンオイルや疎水性シリカ微粒子などの消泡成分を水に分散しているため、水系発泡液に対し拡散性が高く、少量で高い消泡効果が得られるため現在汎用されている。しかし、エマルション型消泡剤は、分散安定性・拡散性を高めるため、界面活性剤を添加している。多量の界面活性剤の添加により、発泡を助長するといった場合も起こりうるため、低濃度界面活性剤でのエマルション型消泡剤の調製が望まれる。一方、消泡剤に添加されている疎水性シリカ微粒子は、それ自身が乳化剤として作用することが報告されている。そこで本研究では、疎水性シリカの乳化剤としての性質に着目し、界面活性剤濃度をより低下させたエマルション型消泡剤の調製を行い、その物性を検討することを目的とする。
将来の方向性
現在、低濃度界面活性剤において、疎水性シリカ濃度5 wt%の場合に分散安定性に優れたエマルション型消泡剤の調製に成功している。将来的には水系での発泡がトラブルとなる分野における実用化を目的とする。
キーワード
関連装置
エマルション型消泡剤、疎水性シリカ微粒子
ローター式ホモジナイザー(CLEARMIX)
→エマルションの調製
循環式消泡装置 →消泡性の試験
(c) 新しい発想のエマルション>環境に優しいワックスエマルションの開発
研究目的
パラフィンワックスとは、常温では固体であるが、加熱すると低粘度の液体となる飽和炭化水素であり、撥水性、可塑性、電気絶縁性など優れた性質を示すため、紙・繊維の加工、潤滑剤、蓄熱剤等に広く利用されている。ワックスを水中に分散させてエマルションにすると、表面コーティングが容易になるといったメリットがある。しかし、現在製造されているワックスエマルションには界面活性剤が多量に添加されているため、ワックスの特性が低下してしまうだけでなく環境や生体に対しての安全性に乏しいという問題点がある。一方、界面活性剤の一種であるポリグリセリン脂肪酸エステルは、食品添加物として許可されている安全性の高い非イオン界面活性剤である。そこで本研究では、少量のポリグリセリン脂肪酸エステルを用いて、ワックスの特性を維持した安全なエマルションを調製することを目的としている。
将来の方向性
現在までに、界面活性剤としてポリグリセリン脂肪酸エステルを添加して調製したところ、3ヶ月の分散
安定性を示すエマルションができた。食品用乳化剤を用いることで、例えば食品包装用の紙材に塗布し、
防水性を付与することが可能となる。さらに、ワックスは化粧品類の基材としても用いられているため、
人体に安全な化粧品開発にもつながる。
キーワード
関連装置
ワックスエマルション、ポリグリセリン脂肪酸エステル
超音波ホモジナイザー →エマルション調製
光散乱光度計 →粒子径測定
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