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研究内容research

研究内容とテーマについて

 物性化学は、物質の物理的・化学的性質を調べ、なぜそのようなことが起こるのかを考える分野 です。
 近年ではさまざまな機能性物質が開発されていますが、特に物質の性質を決めるのに重要な役割を果たす“電子”の働きに注目して、さまざまな金属原子や有機配位子を用いて錯体などの分子集合体を構築し、集合体になることで単独のパーツでは現れない、磁性・伝導性・光物性・熱物性などが複雑に絡み合う、新たな物理的性質を持つ物質の開発を目指して研究を行っています。無機化学を基本に据えながら、有機化学的な配位子構築や、物理化学的な測定手段を使って、幅広く研究を行っていきたいと考えています。
研究設備等

[1] 化学種置換による磁性制御

活動報告写真

 本研究室では、主に1,2-dithiooxalato (dto) を用いた金属錯体に注目して研究を行っています。この配位子は分子構造より、2種の金属イオンを架橋することができます。また、配位する原子がOとS原子と異なることから、非対称な配位子場を提供することができます。具体的には、2価と3価の鉄イオンをdtoで架橋した鉄混合原子価金属錯体があります。この錯体は温度を引き金に特異的な磁気挙動 (電荷移動を伴うスピン転移) を示します (上図)。そのため、様々な物性測定が行われてきました。
 この磁性体に対して、層間分子、金属イオン、架橋配位子などの置換により生じる物性の変化を通して、磁性を中心とした物性発現機構の解明を目指しています。また、物性は固体の分子配列と密接な関連を持っていることから、同形置換体など類似構造を持つ化合物を利用して結晶構造を明らかにすることも目的として研究を行っています。

[2] 電場による磁性制御

活動報告写真

 架橋配位子dtoを用いた鉄混合原子価錯体はハニカム環構造と磁性の間に密接な相関がある。この磁性体に対して、分子分極を持った回転部位を持つローター分子や伝導性有機分子を挿入することで、電子の電気的な性質とスピンの性質が作用しあう物質の構築を目指します。その中で磁性の発現機構そのものに迫って行きます。

[3] 磁場による伝導性制御

活動報告写真

 有機ドナー分子は対アニオンとの組み合わせにより、様々な性質を示します。特にd電子系が構築する磁気ネットワークの磁場変化に応答して、ドナー層の伝導性が制御できる系の構築を目指します。


[4] 新奇配位環境の構築

 最近、単結晶化の過程で当初予想してなかった構造を持つ錯体がいくつか得られています。その 中から物性として興味深いものを取り上げ、化学種置換によるメカニズムの解明を通じて、新たな機能性の発現を目指します。中でも酸素−硫黄系の配位環境がもたらす効果を調べるため、新たな単核、複核錯体、一次元系や二次元系配位高分子といった、次元性が制御された錯体系の構築を試みます。


[5] 有機ラジカル磁性体

 複数の不対電子を有した有機ラジカル化合物は、分子構造に応じて、スピンの向きを制御すること ができます。時として、金属イオンと同等かそれ以上の磁化を示すことも知られています。この有機ラジカル化合物を応用して、金属を使用しない磁石などの開発を目指します。


東京理科大学 
理学部第一部 化学科 榎本研究室

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