研究プロジェクト

国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)
新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業(新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する治療薬開発推進のための技術開発等)

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬開発促進を目指したマウスモデルの開発
研究代表者:岩倉 洋一郎
研究期間:2021年度-2022年度

 COVIDの病態形成には、サイトカインが重要な役割を果たしている。また、インターフェロンはCov2感染防御、病態形成に重要な役割を果たしていることが示唆されている。そこで、本研究ではIfngや、Ifnr1, Il1a/b, Il6, Il17a/f, Tnf, Il36a,Ctrp6などのサイトカイン・サイトカイン受容体欠損Cov2感受性マウスを作製し、個々のサイトカインの病態形成における役割を明らかにする。また、レポーターマウスを用いてサイトカイン産生細胞を同定する。これらの解析によりサイトカインネットワークを解明し、サイトカインストームで中心的な役割を果たすサイトカインを同定する。さらに、重症化には糖尿病や血管炎などの基礎疾患が重要な役割を果たしていることが示唆されていることから、糖尿病や血管炎を誘導し、COVID発症に及ぼす影響を検討する。これらの解析により、COVIDの重症化を防ぐ新たな治療法を開発する。

国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)
次世代治療・診断実現のための創薬基盤技術開発事業

糖鎖分子による自然免疫受容体制御を介した免疫・骨代謝異常治療法の開発
研究代表者:岩倉 洋一郎
研究期間:2016年度-2020年度

 炎症や代謝異常の場で糖鎖修飾の変化が起こり、免疫制御に影響を及ぼすことが近年注目されているが、医学的に有意なグライコフォームの定義や、そのグライコフォームを特異的にターゲット、制御するツールの入手が未だ困難であるため、治療法の開発に至った例は極めて少ない。我々は以前ある自然免疫受容体が樹状細胞や破骨細胞の恒常性維持能を有し、その欠損マウスが自己免疫、骨代謝疾患を自然発症することを明らかにした。また、後続研究によりこの分子が糖鎖リガンドを持つ可能性を見出しており、この自然免疫分子・糖鎖リガンドのシグナル軸は免疫・骨代謝疾患の新治療法開発につながる強力なシーズであると考えた。そこで本研究開発プロジェクトでは、自然免疫分子のナチュラル・リガンド糖蛋白質の同定や、リガンド糖タンパク質および自然免疫分子を特異的に制御する抗体を作製、また糖鎖修飾酵素の投与による体内リガンド糖鎖の人為的制御により、自然免疫分子の糖鎖認識を制御する治療法の開発を目的とする。

文部科学省科学研究費補助金 新学術領域研究(研究領域提案型)

自然免疫受容体を介した腸管免疫の制御と全身免疫への影響の解析
研究代表者:岩倉洋一郎
研究期間:2018年度-2019年度

 我が国は、世界でも類を見ない長寿国となる一方、今後予想される高齢化社会への急速な移行は、加齢に伴う諸疾患の増加と医療経済の逼迫・破綻を加速させることは明白であり、大きな社会問題となっている。それ故、加齢によって発症頻度が急激に増加する、がん、心疾患、肺炎、脳血管疾患はもとより、免疫系の関与する炎症性疾患やアレルギー、感染症の予防・治療法の開発は喫緊の課題である。本研究は、これらの疾病の新たな治療法、あるいは発症以前の状態(未病状態)に留め置くための方策を開発することにより、「健康寿命」の延伸、および医療経済の改善に寄与することを目指すものである。我々は、C型レクチンの一つのDectin−1が腸管で発現しており、これが食物中のβグルカンを認識することにより抗菌蛋白質の発現を誘導し、腸内の特定の乳酸菌の増殖を制御していること(Tang et al., Cell Host & Microbe, 2015)、さらにこの乳酸菌は腸管の樹状細胞(DC)に作用して強力に制御性T細胞(Treg)の分化を誘導させることができ、低分子βグルカンを投与してDectin−1を阻害すると、大腸炎を抑制できることを示した。(Kamiya et al., Mucosal Immunol., 2018)(Tang et al., Nat. Immunol., 2018)。本研究では、常在微生物や食品成分によるC型レクチンを介した腸管微生物叢の制御や、これらの微生物による腸管免疫の制御機構を明らかにする。さらに、腸管免疫は炎症性腸疾患の発症や大腸がんなどの発症に深く関与するだけでなく、腎炎や実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)など、他の臓器の炎症にも関与していることが示唆されていることから、腸管免疫が全身免疫に及ぼす影響や抗腫瘍免疫に及ぼす影響などを解析し、機能性食品や治療薬の開発につなげることを目的とする。


文部科学省科学研究費補助金 基盤研究(B)

研究課題:C型レクチン受容体の生理機能の解析と疾病制御への応用
研究代表者:岩倉 洋一郎
研究期間:2018年度-2020年度

 我々はこれまで関節リウマチモデルを用いた発症機構の解析から、IL-1やIL-17などのサイトカイン、DCIRやDECTIN-1、−2などのC型レクチン、CTRP6などのCTRPファミリーなど多くの分子が病態形成や生体の恒常性維持に重要な役割を果たすことを明らかにしてきた。本研究は分子の重要性にも拘らずこれまで研究に遅れがみられるC型レクチンファミリー分子に焦点を当て、Dectin1、Dcir、Dcar1、Clec1a、Clec12bなどの遺伝子改変マウスを用いて機能を解析する。これまでの研究により、これらの分子は感染症や自己免疫、アレルギー、発がん、骨代謝異常などに関与していることが示唆されており、本研究ではそのメカニズムを明らかにし、創薬に繋げることを目的とする。とりわけこれらの分子が腸内フローラに及ぼす影響に注目した解析を行う。また、リガンドが同定されていないものについてはリガンドを同定する。本研究により作製された遺伝子改変マウスや疾患モデルは、広く研究者に配布し、当該分野の研究促進をはかる。


 なお、これらのプロジェクトを遂行するため、現在ポスドク、技術職員を募集しております。興味のある方は、是非ご応募下さい。